快晴だ。

 ストラテジーペイジの2019-8-17記事。
   すでにイスラエル空軍、米海兵隊、米空軍、英空軍の4団体が、中東でF-35A/B型を実戦飛行させた。
 すべてのF-35パイロットが認識したこと。この飛行機の最大の利点はステルスではない。
 作戦飛行がとても楽にできること。そして、シチュエーショナル・アウェアネス把握の容易さ。なにしろ、じぶんがどこにいるのか、自機周辺で何が起きているかをマシンがパイロットに分かりやすく示してくれる。
 アドバンテージは、これに尽きるのだ。
 増槽と爆弾をやたらに吊下してステルス性を捨てた「ビースト」姿態でも、F-35の環境承知サポートソフトがパイロットを助け、卓絶したパフォーマンスを易々と可能にしてくれるのだ。
 これが各国のパイロット仲間に知れ渡ったからこそ、次々と、F-35を追加発注するお客さんも増えている次第だ。
 F-35パイロットの訓練教程に入った外国人は一様に、この飛行機を絶賛する。ステルスだからではなく、とにかく楽に戦争できるゴキゲンマシンだから。
 パイロットが意思決定するしかない問題というものが軍用機には最後まで残される。すなわち、ステルス性のマネジメントと、脅威のマネジメント。このふたつだけにパイロットが集中することを、F-35のマンマシンインターフェイスは可能にしてくれる。
 ステルス性のマネジメントとは、ひらたくいうと、敵レーダーに見つかりにくい飛行コース、高度、速度の選択である。敵レーダーがどこにあるのかは、マシンが教えてくれる。
 脅威のマネジメントとは、敵機のパイロットに気づかれることなく、敵機の後方や側面に占位してしまうための、最適の飛行コース、高度、速度の選択である。敵戦闘機は後ろ向きのレーダーを積んでいないので、必ず、このようなうまい機動の方法が、こちらにはある。
 F-35のシチュエーション・アウェアネス能力はF-22を凌ぐ。F-22よりもステルス性で劣る点は、これでカバーされてしまう。同等の技倆のパイロットが搭乗した場合、マシンに助けてもらえるF-35の方が、マシンに助けてもらえないF-22よりも、効率的に戦闘ができる。
 実戦になったら、F-35が常に空中で敵機を先に見つけ、先にAAMを発射することになるだろう。敵機の速力や機動力は、紙の上でしか意味がないだろう。
 過去、実戦で撃墜されたパイロットの8割以上が、その瞬間まで、自分が狙われていたことに気づいていなかった。
 これが現実なのである。
 米軍は、ドイツと日本の生き残りパイロットからの聞き取り調査で、この統計学的真実をいちはやく掴んだ。
 だから、どこの空軍でも、実戦飛行時間の短いパイロットがよく戦死し、老兵は死なずに生き残っていたのだ。新人たちは、後方や周囲の警戒が甘いのである。
 この、後方や周囲の警戒を、人間ではなく、マシンが「センサー・フュージョン」でやってやれというのが、F-35のコンセプトなのだ。
 1980年代から米軍は、E-3の得たデータを味方戦闘機にデータリンクによって与え、シチュエーション・アウェアネスを共有する試行を始めた。
 これをJTIDSと呼ぶが、これを実装した戦闘機は、これを実装していない同じ機種の戦闘機に対して、空戦訓練で、4対1のキル・レシオを示す。
 WWIいらい、空軍関係者には尽きない興味があった。なぜ全戦闘機パイロットの5%だけが「エース」となり、他の95%はダメなのか?
 さいきん仮説が立てられており、おそらく「エース」たちは脳の働きが違っていたのではないかと。ユニークな脳の使い方ができる者たちだったのではないかと。
 だが残念なことに、その仮説を証明することができない。今現役のエースはおらず、その脳をじっさいにモニターできないからだ。
 ※これが解明されれば、航空学生になる前から、否、小学生の段階から、将来の撃墜王の候補者を選定できるわけである。
 これまで分かっていることもある。WWIのエースたちは、とにかく「正確無比な狙撃者」であった。敵パイロットを正確に射殺している。無駄撃ちはしない。反面、機体操縦の腕前については、周辺からはむしろお粗末であると評価されていたということが。
 ※機体操縦が下手なのにタマがよく当たるということは、要するに敵に気付かれずに後ろを取っていたということ。なぜそれが可能になるのか。それはシチュエーション・アウェアネスの判断が他人よりも速くできたから。つまりセンサー・フュージョンする脳の構造もしくは機能に差があった。
 さらにWWII後の調査で、眼球の動静を調べれば、そいつがシチュエーション・アウェアネス/情況判断の速くできる奴かどうか、だいたい見当がつくことも分かってきた。
 シチュエーション・アウェアネスを早く把握できる奴が、名人と呼ばれる。これは、戦車でも歩兵でも艦長でも、サッカー選手でも、同じなのだ。