眼底にナノ分子を注射して近赤外線を可視化させ、暗視装置を不要にするという鼠実験を某国はやっているそうだ。

Joseph V. Micallef 記者による2019-9-3記事「Russian Harassment of NATO Personnel, Families: The Next Chapter in Information Warfare?」。
    NATOからバルト三国へ派遣されている人々の留守家族のところにロシア語訛のイヤガラセ電話が頻々とかかってくる。王立国際問題協会のジャイルズは、ロシアは末端軍人の留守家族の情報を収集して、ピンポイントの偽情報攻撃や脅迫を展開しているのだと警告している。
 2017年にオランダ空軍はF-16をバルト三国へ進出させて領空侵犯機(=露軍機)のパトロールを手伝わせた。そのさい、派遣パイロットたちがオランダに残した家族のところへは、ロシアからのイヤガラセ電話攻撃が続いた。
 2017年にデンマーク陸軍が歩兵をバルト三国へ派遣するときには、派遣の前から、家族に対するロシアからの脅迫電話が相次いだ。
 ジャイルズは2015年からロシアによるこのタイプの脅迫工作の事例を集め、これは小さな話ではなく、ロシア政府が「情報戦争」を仕掛けているのだと判断した。
 ポーランド軍将校の家庭にもロシア国内からのイヤガラセ電話がひっきりなしにかかってくるという。
 NATOはロシア発のこうしたイヤガラセについて表立っての抗議をしていない。
 ロシアが推進する広義の情報戦争には、心理戦も含まれる。敵軍、住民、国際世論の心理を変えようとする。
 ジョージ・ケナンは1946から警告している。ロシアと対決するときにロシア人の真似はするなよ、と。われわれがロシア人の真似をするということは、ロシアの腐れ文化が勝ってしまったということなのだ。だからわれわれはシリアに派兵されている露軍将兵の留守家族に脅迫電話をかけたりはせぬ。
 ※元SASのテレビタレント、ベア・グリルズ(Bear Grylls)氏が、太平洋の島でロケ中に、蜂に二度刺されたことによるアナフィラクティック・ショックで死にかけ、「エピペン」(携帯式緊急注射薬)を打って病院に搬送されて助かったという報道を数日前に見かけた。これを知った露軍はさっそく、蜂毒を《暗殺には見えない暗殺》に利用する方法を研究し始めることだろう。
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 Jeff Goodson 記者による2019-9-3記事「What Mattis gets wrong: Alliances also need rebuilding at home」。
      記者が米軍に入ったのは1983だったが、そのときいちばん驚いたのは、アパラチア山脈の西へは一度も行ったことがないという将兵がふつうに存在したこと。平均年齢30歳だぞ。
 つまり米軍という組織はじつは人的なキャラクターとしては、世間しらずどもの集まりなのだ。生まれた町や村の中だけでずっと生きてきた連中が多い。だから、海外に無知であるという前に、そもそも米国がどういう国なのかもよく知らない。米国の内部において、アパルトヘイトの現実があるのだ。
 マティス元長官は最新の回顧録の中で、中共と対決するためには同盟国が大事だと言う。しかし記者いわく。その前に米国内のポリティカル・アパルトヘイトをなんとかせよ。
 ※ボブ・ウッドワード著、伏見威蕃tr.『FEAR 恐怖の男』(原2018“Trump in the White House”、邦訳2018-11)は、米政府の朝鮮無知についてのおそろしい実態を明かしている。どうやら半島のプロは(側近にも制服にも)一人もおらず、元KATUSAグループの情報工作にホワイトハウス全体が操られているのだ。そんな中で、大統領トランプの《直感》だけがきわだって冴えている。半島に関して彼は正しい。ウッドワード等の方が真相を把握できていない。
 スティーブ・バノンはマティスに言った。「きみたちは太平洋のことをまったく考えてこなかった。中国のことを考えなかった。詳細な研究がない。きみたちは中央軍〔CENTCOM=イラクとアフガン担当〕にばかりこだわっている」。さらにマティスに提案した。中国封じ込めをそちらが支援すれば、アフガニスタンからの撤兵を求める圧力を弱める、と。これにマティスは反対した。世界貿易〔対支友好〕を重視したいから、と。
 上院軍事委員長ジョン・マケインはトランプに言った。「北朝鮮は通常の大砲やロケット砲で、ソウル市民一〇〇万人を殺すことができます。だからやりにくいのです」。
 スティーブ・バノンが政権から追い出される直前の半島認識。「われわれは彼ら〔北鮮〕に急所をつかまれている。“ソウル市民一〇〇〇万人が通常兵器によって開戦から三〇分以内に死なずにすむ方法を示せ”という方程式の解をだれかが私に示せるならべつだが、そんな馬鹿な話はないだろう」。
 上院議員リンゼー・グラムは、在韓米軍将兵の家族を韓国内に住まわせていることがそもそも気違い沙汰だと認識していた。しかし誰かが、家族エバキュエーションを実行すると韓国の株式市場と日本経済が激動するからと脅かして、その考えを翻させた。トランプはツイッターを使って、とっとと米軍家族を韓国から外に出してやりたかったのに。グラムは他方で、中共に三代目を除去させよう、とケリーとマクマスターに提案もしている。
 「特別アクセスプログラム」=SAPが米韓間に存在することによって、北鮮のミサイル発射を米国は7秒後に探知できるが、それがないとアラスカの施設で15分後に探知することになる、とマティスとダンフォードが大統領に説明している。マクマスターもトランプに言った。現状では北朝鮮のICBM発射を〔在韓米軍が〕七秒で探知できるが、〔年35億ドルかかっている米軍の韓国駐留をやめれば〕アラスカからの探知に一五分かかると。
 国家経済会議NEC委員長ゲーリー・コーンの認識。在韓米軍を撤退させたら、地域不安を鎮めるために、配置する海軍の空母打撃群を増やさなければならず、そのほうがコストが10倍かかる。最高機密に関する情報をSAPによって得られているのは、韓国の承諾があるからだとも。
 なぜ七秒で探知できるのかについて、ウッドワードは政府高官複数から聞かされたが、同時に、その詳細を公表しないようにも頼まれているので、書けない(p.147)。
 兵頭が註釈をつけよう。DMZに沿って米空軍のISR機が高度18000mを遊弋すると、朝満国境の向こう側まで、ラインオブサイトで見渡せるのである。つまりICBM発射に特徴的な赤外線のフラッシュがあれば、1秒で探知可能だ。「韓国の承諾」とは、その飛行許可に他ならない。ところが近年韓国はDMZ近くを米軍機が飛ぶことを禁じてしまった。SAPは文左衛門によって骨抜きにされたのである。ところで、ISR機によらずに北鮮から北米東部に向けたICBMを早期に探知できるレーダーサイトの屈強のポイントがある。それが鬱陵島で、次等の拠点は竹島だ。どちらかの島にXバンド・レーダーを置けば、アラスカ方向に向かうICBMは即座に探知ができる。とうぜん北鮮は韓国に対し、絶対にそれをさせるなよと要求中であろう。WWII直後に竹島を韓国防空識別圏に所属させてしまった米軍の失策のツケを、今、アメリカは支払っているのだ。
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 Patrick Tucker 記者による2019-9-3記事「How AI Will Predict Chinese and Russian Moves in the Pacific」。
    すべての中共軍航空機の動きを仔細に長期間観測して、その軌跡のパターン等をビッグデータ化しておけば、実戦で開戦奇襲をたくらんでいるときには平時の訓練パターンから大きく外れるので、AIによる開戦予測&警報が可能になり、奇襲を食らわずに済むだろうという研究が進んでいる。
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 Karen Hao 記者による記事「An AI app that turns you into a movie star has risked the privacy of millions」。
   中共内のアップルストアでは8-30に発売された「ZAO」というフェイス・スワップ・アプリが、ダウンロードの大人気。
 映画の1シーンの静止画の中の任意の役者の顔に、自分の顔写真を全自動で融合させることができる。その操作は数秒で完了する。
 問題は、このアプリを開発したMOMO社が、アップロードされたユーザーの顔データの使用権を永遠に取得するという約定になっていたこと。
 以後はユーザーの許可なしで、その顔データが、サードパーティに売り渡されることもあるのだ。これは中共の国内法に違反しているため、たちまち騒ぎとなり、MOMO社は利用規定を削除した。「ウィーチャット」は、「ZAO」からの写真や動画をシェアすることを禁止した。
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 長谷川慶太郎氏の訃報に接し、氏から昔頂戴したハガキを捜索した。が、見つからなかった。しょうがないので記憶を頼りに話そう。
 そのハガキで教えて貰ったことは「礬素銅」〔あるいは礬素鋼?〕の意味だった。
 あとで承知したが、先生は、阪大の冶金科の卒業生だったのだ。
 「礬素銅」の語は、大正9年の陸軍省刊『兵器沿革史(野砲・山砲) 第二輯』の中の、明治25年の試作野戦火砲(のちに「三一式野砲/山砲」となるもの)の「試製第一號」砲(有坂成章大佐設計)と「試製第三號」砲(栗山少佐設計)についての説明として、出てくるものだ。
 そこから推量して、おそらくハードカバーの『有坂銃』を刊行した直後に、版元の四谷ラウンド宛てに送られたハガキだったのだろう。その初版の中では私は、《礬素●の意味は分からない》と正直に書いておいたのだ。
 長谷川先生はそこをお読みになり、一面識も無い駆け出しの著者にハガキで知らせねばという気になった。その心理を想像すると面白い。立場が逆なら私も同じことをしたに違いない。当時はインターネット検索には頼れなかった。漢和辞典で「礬」の字をいくら調べても冶金の奥義には辿り着けない。
 じつは昔、熔鉱中の不純物を除去する方法として、アルミのインゴットを投入して不純物を吸着させる方法があった。そうやって得られた素材を「礬素●」と称したのである。私の疑問は長谷川先生のおかげで氷解した。たぶん、『FN文庫』版ではそこを直していると思う。
 ミッドウェー海戦の敗因のひとつとして、米海軍は日本近海の海底電信線を開戦直後にすべて切断したのに、日本海軍はぼんやりしていて、ミッドウェー島に通ずる海底ケーブルなどもほとんどそのままに放置しておいたから、敵は有線を使って自在に秘密裡に日本軍をひっかける打ち合わせができたんだという指摘を、戦後のわが国で最初にしたのも、長谷川氏監修のシリーズ企画本じゃなかったか? 俺の記憶ではそうなっている。
 とうとう面晤の栄に浴することもなかったのだが、長谷川先生と拙稿が同じ『Voice』に載ったときなどは、さすがに感慨があった。忘れられぬ老大家也。R.I.P.……。