そろそろ秋がくる。

 Joel I. Holwitt 記者による2019-10記事「Sub vs. Sub: ASW Lessons from the Cold War」。
  記者は現役米海軍中佐。
 ロシアのSSGN『セヴェロドゥヴィンスク』は、欧州方面勤務の米海軍の中佐にいわせると、とても静かだそうだ。
 戦後、米海軍はドイツのソナーを参考にした。
 米海軍の潜水艦用の最初の魚雷はMk27で、16ノットだった。これはWWII終末に完成した。
 次が1956年完成のMk37で26ノットで駛走する。
 それを有線誘導にした改良が1960年。
 当時、相手として考えていたシュノーケル深度の敵潜水艦は、8~12ノットしか出さないものとみなされていた。
 しかしソ連も原潜をこしらえると、30ノットの水中標的も考えねばならなくなった。魚雷より速い。
 そこで1960に技術要求が出された。
 さんざん苦労してMk48魚雷ができた。1972に米艦隊はこの新魚雷を受領した。
 驚くべし。米海軍は14年間、ソ連潜水艦の速度に追いすがれる通常爆薬魚雷を、持たずにいたのである。
 穴埋めとして、Mk45核魚雷と、UUM-44サブロック〔潜水艦から発射する対潜水艦用の核ロケット爆雷。飛翔は空中〕が、米艦隊にはあてがわれていた。
 また米潜はMk37魚雷を至近距離から気づかれずに発射するので、魚雷そのものが低速でも、ソ連潜は逃走する余裕など無いと考えていた。ASWの技術格差が大きく、ソ連潜はこっちの接近にも、魚雷発射音にも、気づけないはずだった。
 やがてソ連はノルウェーと日本から最新技術を調達して『ヴィクターIII』級のSSNを就役させた。それは静粛さが格段に向上していた。※東芝機械は、いつの間にか社名を変えましたな。やはり過去の名前は続けられないだろう。
 さらにソ連は、西側のSOSUS聴音線の上で旧型の騒々しい潜水艦を走らせてマイクの感度を飽和させておき、その隙に、静かな最新鋭潜水艦をすりぬけさせるというテクニックを覚えてしまった。
 こうしたことが判明したのは1985にジョン・ウォーカーを秘密の売り渡し容疑で逮捕した後である。ウォーカーは1967年からソ連スパイに海軍情報を洩らしていた。
 80年代前半にソ連は『シエラ』級の全チタニウムSSNを就役させている。この静粛化技術はウォーカーが渡した資料が参考にされたかもしれない。
 同時にスチール船殻として建造された『アクラ』級SSNは、もっと静かであった
 1987に展開開始した『ヴィクターIII』はどのくらい静かだったか?
 英軍の対潜哨戒機ニムロッドは、このソ連潜を追跡するために、従来1年で消費する量のソノブイを、数週間にして使い切ってしまったという。
 米英両海軍は、6隻のヴィクターのうち5隻は常続的に追跡できたが、最後の1隻にはいつもまかれてしまっていた。艦長が優れていたようだった。
 1989にソ連は349隻もの潜水艦隊を擁していたが、静粛なSSNまたはSSGNとしてNATO相手に使い物になったのは、計35隻のみ。うち23隻が『ヴィクターIII』で、文字通り主力SSNだった。
 ソ連潜の弱点は、乗員が徴兵で、練度が低いことだった。マイク級SSNの『コムソモレツ』が沈没した事故について、1989年に、マイク級の設計副主任が書き残している。乗員はシステムをほとんど理解していなかったと。救命装具の扱い方も教育されていなかったと。
 レーガン政権が1986から、米海軍をよりソ連本土近くに展開させるようにし、英海軍もそれに合力したことから、ソ連は自軍のSSBNを防禦するために、遠くへ出していたSSNを自国領海近くまで引き退げるシフトを強いられた。
 米海軍は手をゆるめず、対潜哨戒機と他のAWS手段を緊密に連繋させてソ連潜を常続的に追いかける態勢を1980年代に構築した。
 いま、ロシアは27隻のSSN/SSGNを有する。中共は6隻である。米海軍のSSNは51隻あり、英海軍は7隻だ。
 ロシアと中共の原潜に乗り組んでいる水兵は、今日でも、徴兵である。米英は水兵に至るまですべて志願兵。
 1980年代のピーク時にソ連は、6週間ごとに1隻の潜水艦を建造していた。当時、英海軍では真剣に、じぶんたちの手持ちの魚雷の本数よりも、ソ連の潜水艦の数の方が多くなってしまう、と心配したものだった。
 今の中共は、1年に2隻のペースでSSNを量産できるだろう。
 次。
 ストラテジーペイジの2019-10-2記事。
    英国でヘルファイアを改造したブリムストーン。2005に完成したが、ジェット機から高速で射出できるために射程が20kmにも延びる。
 筒体もやや長く、そのぶん、固体燃料が多く詰まっている。総重量は55kg。
 2008にメーカーのMDBAは、弾頭のセンサーを、ミリ波レーダーとレーザー〔セミアクティヴ?〕のデュアルにした。
 そしてリビアに投入されて実戦評価を得た。
 2016年には「ブリムストン2」が出来、新型モーターにより、レンジは40kmに伸びた(高空の固定翼ジェット機から発射した場合)。
 低空の低速機から発射すれば、レンジは20kmである。
 ブリムストンを対舟艇用にしたのが「シー・スピア」。弾頭重量は、ブリムストンが6kgなのに比して16kgもある。
 誘導システムには工夫が凝らされている。スウォーム襲来する敵ボートに一斉発射しても、同じ標的を二発で襲うような重複の無駄は起らないのだ。
 シースピアの実戦配備は来年以降だろう。
 ブリムストン3も開発中。20km離れた敵のAFV群に対して12発以上を地上から一斉発射し、そのそれぞれが、別個の標的を破壊する。決して重複攻撃の無駄は起らないように、機械の方で面倒をみてくれる。
 ブリムストンは敵戦車の薄い天板を攻撃する。APSも真上から落ちてくるミサイルに対してはあまり効果はない。
 ポーランドのPZG社は、地対地ミサイルとしてブリムストンをライセンス生産中である。
 ポーランド陸軍は、大量にもっているBMPの砲塔を撤去してボックスランチャーをとりつけ、そこにブリムストンを20発、収容させる。
 重機関銃のリモコン銃塔は別に残すので、このミサイルBMPは近接自衛もできる。
 シースピアーにターボジェットエンジンをとりつけた「スピアー3」も開発中だ。重さは100kgになるが、レンジも100kmに伸びる。