暖冬がもどって怪談あらわる。

 寒い土地にはひとつだけメリットがあって、それは、成虫でも幼虫でも卵でも越冬できない生物とは、住民が濃厚接触する機会が少なくなる。よって寄生虫病に罹るリスクも概して暖地より低いことである。

 ところで広東住血線虫のような危険な寄生虫は、暖地のナメクジやカタツムリを中間宿主にしている。それを捕食しているカエルなどの体内にも潜んでいる危険は無視できない。

 とすれば、旦那を早く殺したい事情のある奥さんは、庭のカタツムリをすりつぶして旦那の食い物にすこしずつ根気よく混入すれば、いつかは奇病を発症させて目的を達成してしまうことができるはずだ。

 山野に落ちているアライグマやキツネの糞からも、広東住血線虫ほど致命的ではないにしろ、人の健康を著しく損ねる寄生虫の卵などが得られるはずであろう。

 そう思って「旦那デスノート」を、えんえんと閲覧してみたのだが、この種の《生物兵器》混入テロにかかわる言及が、ものの見事にゼロであることに気づいた。

 えっ……こんなことって、あり得ますかい? 誰もこの手に気づいてないなんてことが? 日本に1億人以上人がいたら、数十万人はとっくにそれを考えていてもおかしくない。そして数千人は、すでに「実践」を了えたかもしれないでしょうに……。

 これで思い出したのは、拙著『日本転覆テロの怖すぎる手口』(PHP新書)の中でも紹介した、『球根栽培法』という、戦後復興期に地下で流布したらしい、謎のテロ指南テキストだ。『球根栽培法』の通りに武器を作ると、それはぜったいに、人殺しの役には立たないという。その謎解きは、木村哲人氏著『テロ爆弾の系譜』がしてくれているので略すが、要するに、わざと目的の役に立たないテロを勧めるという高等な戦術に、需要があったのだ。

 化学兵器についてはチェックしてないが、薬剤師たちが知っている、入手容易な材料に関する言及も、おそらくゼロなのじゃないかな? 知っている人たちは、黙って実践するのだろう。

 でもどうやって、子供や自分には巻き添え被害が生じないように、旦那だけに選別的に給餌し続けられるのか。ルーチン化するうちに管理がずぼらになって、ついあちこちへ混入してしまうというデザスターは起きないのか? 加熱で死滅しないような一工夫は? ……そんな具体的なディテールを考えると、ホントに怪談だね。

 次。
 Ben Freeman 記者による記事「Foreign Funding of Think Tanks in America」。
    米国内のシンクタンクが外国からどのくらいカネを貰っているか、米国の法律はその公開を強制していない。しかし、シンクタンクはそれを公表するべきだ。

 これまで米国のシンクタンクは、米国の外交方針に影響を与えてきた。レーガン政権に関してはヘリテージ財団が。オバマ政権に関しては「センター・フォー・アメリカン・プログレス」が。

 シンクタンクの研究員たちが、大新聞の論説ページに寄稿し、テレビのニュース番組でコメントする。連邦議員たちとも頻繁に討論する。米国の国策に対するその影響力は、大きい。

 シンクタンクから政府の要職に引き抜かれたり、また政府の要職を辞した人物がシンクタンクに迎えられることは、普通である。これがいわゆる「回転ドア」だ。

 ペンシルベニア大学の調べによれば、全米にシンクタンクは1872個ある。1980年にはその2倍以上もあったそうだ。

 外国からカネを貰えば、その外国に遠慮が生ずるのはあたりまえである。だからほとんどのシンクタンクは、どの国からどれほどの寄付をもらったか、公表していない。
 ただ2つのシンクタンクだけが、寄付の全明細を天下にあきらかに示している。「センター・フォー・グローバル・デベロップメント」と、「シカゴ・カウンシル・オン・グローバル・アフェアズ」だ。

 2014年から2018年まで、全米の上位50のインクタンクについて、海外からの寄付の総額を調べた団体があり、それによれば、80ヵ国以上から、1億7400万ドル以上が流入していると分かった。

 アメリカのシンクタンクに多額の寄付をしている外国トップ3は、ノルウェーが2760万ドル、英国が2710万ドル、UAEが1510万ドルである。

 UAEのカネはどこに注入されているのだろうか? 「アスペン・インスティテュート」「アトランティック・カウンシル」「ブルッキングズ・インスティテュート」はそれぞれ少なくも400万ドルをUAEから得ている。

 5000ドル以上を寄付している寄付者の名前は、すべて公表されるべきだろう。なぜならシンクタンクへの寄付とは、世論工作への資金注入とほぼ同義なのだから。