「ビッグレスキューあづま2017」演習における米陸軍「LCU-2007」号の雄姿

(2017年7月15日に旧兵頭二十八ファンサイト『資料庫』で公開されたものです)

(兵頭二十八先生 より)

 南海トラフ地震で陸路救援がむずかしくなったときには、関東以北から物資を海路搬入する。
 しかし陸上自衛隊は汎用揚陸艇(ランディングクラフトユーティリティ=LCU)を持っていない。それを日本に常時置いている米陸軍輸送科(輸送重舟艇中隊)に頼んで、まわしてもらわねばならん。
 それを訓練してみたのが今回の演習だ。

 まず6月25日に横浜ノースドックで、「LCU-2000」級の「07」号に陸自車両複数を積載。車両はほぼ「空荷」だ。いちばん軽い状態だ。
 LCU「07」号は、14時間から16時間かけて、ノースドックから沼津沖まで移動。
 26日朝に、海兵隊が使っている沼津海浜訓練場(地元の人は今沢と言うそうだ。最寄駅はJR片浜)に達着して卸下。
 わたしは26日の取材に出掛けた。以下、その模様を写真でご紹介しよう。

沼津海岸

 ビッグレスキューには静岡県や電話会社の人たちも参加する。さいきんは陸自さしまわしのマイクロバス(白色)が自衛隊っぽくないので、とまどってしまう。しかし街中では、これがステルスだよね。

LCUがやってくる(1)
LCUがやってくる(2)

 施設科の架柱橋の関係部隊がビーチにあらかじめ特殊マットを敷いていたようだったが、その作業はわたしが到着する前にほぼ終わっていたので詳細不明。
 地元ご出身の「武道通信」の杉山さんによると、昔は海水浴シーズンが終ったころに「千本浜」に御殿場の陸自が水泳訓練によく来ていたそうだ。

LCUがやってきた(1)
LCUがやってきた(2)
LCUがやってきた(3)
LCUがやってきた(4)
LCUがやってきた(5)
LCUがやってきた(6)
LCUがやってきた(7)

 LCUにもいろいろタイプがある。東北震災のとき「気仙沼大島」への物資補給を分担してくれたのは、米海軍が強襲揚陸艦に内蔵して運用する「LCU-1651」「LCU-1634」だった。
 わたしはそのタイプがここにも来るのだろうと予期をしていたところ、遣唐使船みたいなデカいやつが沖に現れた。ラニーミード級汎用揚陸艇といい、米陸軍の所属である。ビーチングする前からもう船首のランプドアを半分倒していた。

 急いでスペックも紹介しよう。
 長さ174フィート、幅42フィート、吃水は軽荷で8フィート、満載で9フィート。艦首に4フィートの水深があるところまで接近できる。
 艦の排水量はロングトンで575トン。満載時には1087トンになる。
 デッキにはM1戦車×5両か、20フィート・コンテナを二段積みで24個(無理すれば30個)、積載できる。無理すれば40フィート・コンテナ×20個でも行ける。
 ペイロードは350トンで、これはC-17戦略輸送機の8機分に匹敵する。
 空荷なら巡航12ノットで1万海里、満載時なら10ノットで6500海里動ける。
 乗員は13名。うち2名が下士官。自動操縦システムあり。※将校は不要らしい。
 米軍で、これより1サイズ大きな揚陸艇となるとLCMだ。Mはメカナイズド。

おれたちゃドローン担当さ(1)
おれたちゃドローン担当さ(2)

 ビーチにくつろいだ姿勢で作業を見物している2人組がいたので、デジカメの倍率を上げてみたら、1人がリモコンを操っているではないか。クォッドコプター型のドローンで達着と卸下の模様を空撮していたのだ。一枚目の写真を拡大すると、ドローンが飛んでいるのがわかるはず。たしかにこれでは鳥よりも見つけ難い。ピントもドローンには自動では合わせ得なかった。

LCUがやってきた(8)
LCUがやってきた(9)
LCUがやってきた(10)
LCUがやってきた(11)
LCUがやってきた(12)
LCUがやってきた(13)
LCUがやってきた(14)
LCUがやってきた(15)

 このLCUは、行き脚をつけるために機関を吹かしたときには黒煙が出るので、この訓練ではビーチングをごく慎重にそーっとやっていることがよくわかった。船体寿命をむやみに縮めないための当然の配意だと思うが、おかげで接岸は実戦よりも甘くなり、最初にゆっくりと出ようとしたパジェロが汀にスタック。10人がとりついても脱出させられず、けっきょく陸側から高機動車でワイヤー牽引した。海軍いわゆる「ゲタ船」、旧陸軍いわゆる「大発」を使った上陸作戦では、何らかのウインチ設備の事前の用意は必須なのだとわたしは想像致しましただよ。なお2両目以降は、勢いをつけて降るようにし、スタックを回避していた。同じ失敗は繰り返さないのだ。

グッバイLCU(1)
グッバイLCU(2)
グッバイLCU(3)
グッバイLCU(4)
グッバイLCU(5)
グッバイLCU(6)
グッバイLCU(7)
グッバイLCU(8)
グッバイLCU(9)

 船尾を読めば「ブロードラン」号と書いてあった。
 わが陸上自衛隊にもこういう船舶装備が必要だというのが近年のわたしの持論だ。だから多数の写真でご紹介した。
 参考までに。海自の人によると、輸送用の小型の平底船は呉軍港にたくさんあるのだが、瀬戸内海であっても、波を上からかぶってたいへんだということだ。つまり、尖閣用を考えるならば「大発」サイズでは不都合。

3トン半の排気管(1)
3トン半の排気管(2)

 陸自の6×6トラック(通称3トン半)の排気管は、高さ80cmのところにあり、水害救助でも、ある程度までは頼りにできることがわかる。

軽装甲機動車(1)
軽装甲機動車(2)

 軽装甲機動車の燃料キャップがこんなところについていたとは知りませんでした。その上のボルトは、中東などへ派遣されたときに予備のジェリ缶などを増設できるようにしたもの。初期型車体にはついていない。この車体はいうならば「バージョン2.0」のようだった。
 半透明のチューブは、燃料タンクの上部空間と通じている、ガス抜きドレーン。熱地では膨張するでしょうからなあ。
 背後ドアの取っ手の上の方には、蓋付きの「鍵穴」があり、ドアを外から施錠することができる。

陸自のゴムボート

 水害の救助に出動するときなどに重宝するこのボート、エアーコンプレッサーが使えないときには、足踏み式ポンプで数十分かけて膨らませることもできる。空気袋は内部で細分化されていて、ひとつに穴が開いても浮力を保つ。船外機も取り付けが可能。

ガス栓まわし器具

 おおざっぱな釘抜きのように見える金具部分は、ガス栓を回せるようにできているのだという。災害出動用の工具キットのひとつ。

考えさせられるパジェロ

 米軍のトラック類は、排気管を高々と屋根付近まで直立させて、てっぺんにはシュノーケルのようなものまで取り付けている。気候の温暖化により、これから水害が毎年のようにあるだろうと予想しなければならぬわが国で、民間バージョンそのものの、こうした排気管レイアウトでいいだろうか? もちろん排気管から水が逆流しなくとも、エンジンルームの配線が水浸しとなれば車両は立ち往生するしかないだろう。日本の軍用車のエンジンまわりはぜんぶ、水密化するべきなのでは?


(管理人 より)

 海岸に座る兵隊は渋い。私は先日、世界で有数のゴキゲンなビーチ『パタヤ』の近郊ラン島に行った。
 ラン島のビーチで1人、朝から夕方まで寝ていた。禁酒日なのに朝からビールが呑めた。炒飯も美味しいしサイコー。そんな頃、こんな渋い事をしていた人々がいたのである。さて、3連休が明けたら一心不乱に働こう。

 ホテルの近所のビアバーに、昼夜いつ見ても座っている白人がいた。
『ベトナム戦争をはじめパナマ・グレナダ侵攻にも従軍しました』という面構えの老人だ。

 もとよりリタイアした白人が多いパタヤだが、毎日ビアバーで特に何をするでもなく呑んでいる。余裕があるからできるのだろうが──これが意識高いヒトが云う『理想のリタイア生活』なら、私にはとても真似できそうにない。

 何度かタイに一人で旅行している。
 色々あるんだろうがタイの人は東京の人よりquality of lifeが高そうに見えた。単なる旅行者の目線だが。もちろん、タイも広いし、その全てなんて私は知らないけど。
 パタヤかフィリピンのスービックあたりにいつか住みたいなあ。