松前港における掃海艇『いずしま』の公開・2018-5-12

(2018年5月20日に旧兵頭二十八ファンサイト『資料庫』で公開されたものです)

(兵頭二十八先生 より)

 2010年末に函館基地で『ゆげしま』(艦番679)を見学した折にはVIP待遇で送迎されてしまい、「写真小僧」となって全体撮影をすることが不可能であった(ガンルームで出されたカレーしか撮影できんかった)。今回、掃海艇としてより改善されている型の『いずしま』を、一無名人として外側からこころゆくまで撮影するチャンスをようやくに得た。
 じつは松前港では何度かこういう一般開放があったようなのだが、カーナビ付きの自動車をもっていなかった以前の私には、国道228号からどうやって下の漁港まで降りられるのか、その分岐点がさっぱり分からず、ついつい通り過ぎてしまっては、しかたなく諦めていたのだ。
 今回は、白神岬から江差方面へ走行中に、掃海艇の雄姿が見えたので、大磯橋を渡ってやや行き過ぎたぐらいのところからカーナビ地図を睨み、右後方へ折れ曲がる細道をぬかりなく下って、大磯橋の下をくぐり抜け、脳内INSを駆使してまんまと辿り着くことができた(ちなみに「松前港」と行き先を入力しようとしても、なぜか、できない)。
 果たして駐車場はあるのか――が、もうひとつの不安事項であったが、なんとそのあたりのどこに停めといても構いませんよと教えてもらい、ズッコケ拍子抜け。田舎はこれだからイイよね。

2018-5-12いずしま於松前港(1)

 (1)は、帰り際に、道の駅の「北前船松前」の駐車場から望遠した一枚。この道の駅のレストランがいろいろと最高なのである。他所から来た人には松前城周辺の料理屋もどきなどではなくて、是非にこっちを勧める。ただし11時前には営業しておらず、この日の利用は断念せざるをえなかった。

2018-5-12いずしま於松前港 (2)

2018-5-12いずしま於松前港  (3)

 (2)と(3)の背景に写っている小山上の建物は「松前灯台」ではなく、手元の地図帳によると「松前ディファレンシャルGPS局」らしい。

2018-5-12いずしま於松前港 (4)

 (4)を見ると、木造船体であることがよく分かる。掃海艇に使用できる金属はアルミのような軽合金以外は基本的にダメなのかと思っていたが、ステンレススチールも非磁性ゆえ、少量ならばOKなような話だった。クルーは出動時には磁性の持ち物をすべて陸揚げする。スマホの充電器もひっかかるそうである。

2018-5-12いずしま於松前港 (5)

 (5)この艇にはPAPという機雷処分具からリモコンで投下できる小型爆雷を除くと、20mmガトリング銃ぐらいしか武装がない。ところでもし敵のフロッグマンが不意に乗り込んできてこの火器でブリッヂを撃とうとしたらどうなるのか? ……ご安心。ハイアングルにしなければ、真後ろへは旋回できないように、巧妙なロックがかかっているのだ。艦橋を外せば、360度、どの方位へも銃撃は可能である。発射の震動やブラストはそれなりに大きく、グレーに塗った甲板のペンキも剥げてしまうそうだ。

2018-5-12いずしま於松前港 (6)

 『いずしま』の掃海訓練は陸奥湾で実施するという。艇尾から見た(6)の写真を見よ。黄色いのがPAPだが、その上方に赤白のブイが寝せてある。これで訓練海域を区切って、漁船が接近しないようにする。演習前に漁協の幹部に同乗してもらって、周知を図るそうである。
 以前の『ゆげしま』の潜水士さんは、〈水中ロボットなんてダメだ〉という評価だったようにお見受けしたものだが、今回の『いずしま』の潜水士さんはPAPに相当の信頼を置いているように私には印象された。そうか……時代は進歩しているのじゃな。

 艇内のあちこちも接写したかったのだけれども、朝一番の見物客だったため、無名人は無名人なりにマンツーマンで足早に案内をされてしまい、オチオチ撮影している暇もなかった。海自の松前警備所の近くでしか訊けそうにない、SOSUS関連の質問をすることも、すっかり忘れてもうたわい。
 なお、函館市街から松前港までの片道所要時間は、ちょうど2時間であった。