生鮮品の玄関置き去り配達システムでうまい発明をできる人にはチャンスがあるだろう。

 Ian Bogost 記者による2020-4-17記事「The Supermarket After the Pandemic」。
     げんざい全米の45の州+DCに於いて、「自宅蟄居ロックダウン」が発令されている。

 米国最大のオンライン八百屋サービス(既存のスーパーマーケットに、その地元客への戸前配達サービスを依頼する、注文取り次ぎサービス)である「インスタカート」社は、新コロ流行前の研究で、米国の一般家庭の20%がオンラインで日用食品雑貨スーパーの買い物注文をするようになるのに、あと5年かかるだろう、と予測を立てていた。

 ところが、過去1ヶ月で、注文量は150%に。
 注文に必要なスマホアプリの新規ダウンロードは7倍に。

 インスタカート社は、新需要を見込んで、全米で新たに30万人の「パーソナルショッパー」〔個人買い物代理人。たぶん同社固有の職名で、客からの注文を整理し、それに適合する商品をじっさいに配達してもらう最寄のスーパーを割り当て、依頼をするオペレーター役の店員かと思われる〕を雇う準備をすすめている。

 失業者がこの急募に殺到しているという。

 「ホール・フーズ」社を所有しているアマゾン社も、需要急増に追いつけない。ロックダウン発令前とくらべて食品雑貨の注文量が50倍に増えてしまったのだ。

 注文を受ける方の実店舗の側では、この急変への対応が大変。
 たとえば、オンライングロサリーの商品仕分け作業のための新規スペースを、すでに手狭な店内では確保ができないというところもあるからだ。

 商品ピックアップ作業や配送作業のために、閉店時刻を遅らせたところもある。

 チェーンストアの中には、地域でどれか1店舗を決めて、そこはもうオンライン受注&配送を専ら取扱う拠点だということにしてしまって、実店舗ながら一般客の立ち入りを断る、との選択をしたところもある。

 シリコンバレー、我において何かあらんや――とスーパーマーケット業界では半ば自嘲し誇ってきたものだが、事態は、永久に変わった。

 ところで、何で「スーパー」マーケットと呼ばれたのか、知ってます?
 20世紀の初め、肉屋、魚屋、八百屋の店舗がおのおの独立していたのを、買収して一箇所にまとめた事業家がいたのだ。

 最初の店舗は「ピグリー・ウィグリー」。1916年に創業した。フロア内で見渡しの利く島状の商品台とショッピング・カート(店員から手渡されるのではなく客が選んで拾う仕組み)、値札表示、レジ行列。こんなシステムを発明したのが、このチェーン店。

 1950年代、米国の郊外の地域に君臨して、人々の消費生活を支配したのは、じつに、スーパーマーケットであった。
 自動車が大衆に普及したので、人々は、週に1回だけ、そのスーパーマーケットに往復して、食品雑貨を買い溜める、という米国式の生活スタイルが仕上がった。

 1970年代にはさらに巨大化した「スーパーストア」が登場した。ウォルマートやコストコなど。
 それは中産階級婦人の指定取引所のようだったが、中産階級じたいは没落した。

 初のオンライン食品雑貨屋は1990年代後半に登場する。ウェブヴァンとか、ホームグローサー。
 しかし証券市場の「ドットコム」クラッシュを生き残れなかった。

 今日、米国では、書籍と音楽商品のおよそ5割が、オンラインで買われている。家電品は4割、アパレルは3割、家具でも2割がそうだ。
 ところが、日用食品雑貨だけは、たったの3%がオンラインで買われている。

 昔の米国では、毎日もしくは定期的に、牛乳、パン、卵が、戸別に配達されていたものだったが……。
 野菜や果物を手に取って感触で確認できない、という利用者の不満が、残るわけだ。

 スーパーマーケットの実店舗内は、じっさいに来店した客の目線や心理を考えて商品を配列してあり、これをそのままオンラインで画像化しても、スマホで閲覧したときに、買う気をそそらない。

 また生鮮食品のサプライチェーンは、家電品のように広範囲ではない。

 生鮮品は、返品が難しいだろう。すぐに腐敗するものが配達された時刻に家に発注者が不在だったら?
  ※この問題を解決した人は、富豪になる資格があろう。

 デジタルショッピングのプロモーション会社の社長は予言する。オンラインでの食品雑貨ショッピングは、パンデミックの結果として2桁成長するだろうと。

 「ダーク・ストアー」が増えるだろう。たとえばレストランは「ゴースト・キッチン」になる。デリバリー専門のレストランだ。同じように生鮮食料品店には「ゴースト・グローサリー」が増える。

 ※既存の飲食店がバタバタ潰れるということは、悪いことばかりじゃない。生き残った店舗が、その店舗の正面に広がる土地も買収して再開発することで、ブランドイメージを強化できる。もちろん、人々が3密にならないで済むような、新時代のパブリックスペース設計だ。

 次。
 DIANNE SOLIS AND MARIA MENDEZ 記者による2020-4-18記事「Millions of US citizens won’t get stimulus checks because their spouses or parents are unauthorized immigrants」。
    米国では、ソーシャルセキュリティナンバーを持っていない不法移民(ほとんどヒスパニック)は、1200ドルの小切手を政府から貰うことができない。
 不法移民と婚姻していて納税申告をひとまとめにしている米国市民も、貰えない。

 違法に労働している者が、その労働ができなくなったからといって、どうして政府が補償する必要があろうか。

 次。
 Tsai Ing-wen 記者による2020-4-16記事「President of Taiwan: How My Country Prevented a Major Outbreak of COVID-19」。
    ※記者は台湾総統。

 4月14日時点で台湾には400人未満の新コロ陽性者しか確認されていない。
 これは2003年のSARSで数十人が病死した教訓を活かせているからである。

 武漢市から台湾へ入国しようとする者をモニターし始めたのは、2019-12からであった。
 2020-1には、感染病対策指揮センターを立ち上げ、旅行制限を課し、高リスク旅行者に対する検疫隔離手続きを導入した。

 台湾国内で最初の新コロ陽性者が発見されたのは、1月21日だった。ただちにこの人物の過去の行程が調べられた。

 政府はパニック買い騒動を予防するために初期段階から市場をモニターさせ、医療用マスクについては生産と流通を統制した。
 製造機械メーカーや医療機器サプライ会社とは、政府の経済問題省が提携して、医師用の高性能マスクを増産させた。

 またドラッグストアやコンビニチェーンの助けを得て、市民用のマスクについては「配給制」を実現した。
 おかげで現在台湾では、病院スタッフ用のマスクも、一般市民用のマスクも、まったく足りているのである。

 政府と民間部門のこの協働作業をわれわれは「チーム台湾」と呼ぶ。
 在庫に余裕のあるマスクは、すでに外国に寄贈もできるほどである。