驚かれざる者

 Chris Isidore 記者による2020-5-10記事「Airlines say massive job cuts are inevitable after bailout money dries up」。
    米国には、民航機パイロット、客室乗務員、手荷物係、地上整備員などのエアライン勤務者が75万人いる。
 9月30日までは彼らはレイオフされない。というのは連邦の支援法で、救済資金(低利ローンも含めて250億ドル)が会社に渡されている、その条件だから。

 しかし10月1日以降は、米四大エアライン会社(アメリカン、ユナイテド、デルタ、サウスウェスト)だけでも10万人が、無給化もしくは離職の道を選ぶだろう。

 米航空業界は過去3ヵ月で20億ドルの赤字を出している。次の3ヵ月はもっと赤字が増えるだろう。
 一アナリストいわく、民航業界の2割から3割の人の仕事がなくなるだろう。

 サウスウェスト航空のCEOいわく、当社は4月の1ヶ月間だけでも10億ドル近くを燃やしている。政府からの支援額だけでは足りないことは暗算できるだろう。

 民航利用客が新コロ前の水準に戻るには、何年もかかるはず。となるとこの秋から民航会社はスリム化に努めるしかない。
 別の民航アナリストいわく。米国の航空会社は、9万5000人から10万人を整理することになるのではないか。
 乗客ゼロでも航空路線は維持せねばならず、各社は、ほとんど空気を運ぶために機材を廻して人材を維持している状態である。

 ユナイテド航空には、ユニオンに入っていない管理職が1万1500人いるが、会社は10月1日になったら、その少なくも3割を解雇する計画である。
 ノンユニオンの管理職に、9月末までに24日間の無給休暇をとるように指示した、ジェットブルー社のような民航もある。こういう措置は、連邦の民航支援法で認められている。

 しかし早くも訴訟が起きている。ユナイテドの地上勤務者(手荷物係、カスタマーサービスも含む)が加盟する「マシニスツ・ユニオン」は、今週、連邦裁判所に、ユナイテド社がその労働者の1週間の労働時間を10時間削減するのをやめろという訴えを起こした。
 会社は、この時短が自主的でなく社命であるとしても合法で、労使協定にも適っていると反論している。

 次。
 McKay Coppins 記者による2020-5-8記事「I Just Flew. It Was Worse Than I Thought It Would Be」。
    4月後半、ウィークデイの午後に旅客機に乗った。
 じぶん以外誰も乗らないんだろうと予期をしていたが、乗客が他に数十人もいたので驚いた。
 座席は、フライトアテンダントによって変更され、すべての乗客が、2列席に2人ずつ詰め込まれ、強制的に並んで座らされた。
 そしてスピーカーからアナウンス。「警戒を要する人数の乗客がこの便に搭乗されていることをお詫びします」だと。

 その前に、乗客がほぼいない旅客機に乗ったときは、機長が「離陸の加速が非常に速いので、お気をつけください」とアナウンスしてくれた。
 たしかにすごいGだった。

 空港でも情けない風景をたくさん見た。人々は互いに疑って警戒し、排除し合っていた。
 確信した。経済が「リオープン」して「ステイアットホーム」措置が終わっても、米国社会は「ノーマルシー」には絶対に戻らないであろう。

 ※航空会社だけじゃない。「社会の風景」が不可逆的に変わるのだ。今起きていることは、現代社会史の画期とされるにちがいない。