今年10回目。米駆逐艦『マスティン』が台湾海峡を通過。

 T.S. Allen 記者による2020-8-18記事「War Books: A Bookshelf for Competition with China」。
     サルマン・ワシフ・カーン著『カオスの呪い――毛から習までの中共大戦略』(2017)。
 中共政府のパラノイアがよくわかる。

 フランソワ・ブゴン著『習近平の頭の中味』(2018)。
 習近平は終身独裁者になるつもりで計画を立てている。習が依拠している哲学は道教である。「アメリカンドリーム」の対抗世界として「チャイナドリーム」の実現を標榜する。

 張暁明・著『トウ小平と長期戦』(2015)。
 これは1979~1991のベトナムとの泥仕合に焦点を当てた研究書。

 1979の中越戦争は「一撃離脱」で終了したかのように見えたが、じつは国境を超えた侵略は冷戦末期まで続いていたのである。焦点はカンボジアだった。その知られざる消耗戦史について解説してくれている、稀有な資料だ。
 1983年まで中共軍は、ベトナムの国境線内の要地を次々に占領し続けた。
 1984にはラオシャン高地を占領するためのかなり本格的な作戦を実施。この占領地に1989年まで総計18万人の解放軍将兵をローテーション派遣することによって、中共軍は、将兵たちに「実戦体験」を積ませた。
 同高地ではベトナム人3万3500人が死傷。中共軍は4300人死傷と公表されている。
 1993までベトナム領土を侵略し続けていながら、みごとに中共はその報道を封殺した。だから世界はほとんどそれを承知していない。
 中共軍を評して「1979いらい戦争していない」と言う者は、すでに中共政府との情報戦の敗者なのかもしれない。

 ※日本の新聞は、国境を挟んだ「砲撃」の応酬については時々報道していた。じっさいはそんなもんじゃなかったようだ。

 ジョナサン・D・T・ウォード著『中共の世界支配構想』(2019)。
 中共が発するスローガンは、外国人にはどれも退屈なプロパガンダにしか思えない。だが、通が分析すると、それも、面白くなる。
 ウォードは注目する。2049年の中共結党百周年までに「大支那民族の大回春」を果たすというのが、いまの連中の大目標だと。

 クライヴ・ハミルトン著『沈黙の侵略――豪州に広まった中共の力』(2018)。
 メディア戦略、投資戦略、スパイ工作……。これらを綜合調整することで中共は豪州の重要機関を次々に籠絡し、最終的には米国との同盟関係を終了させんと図っている。

 豪州国籍に帰化済みの元シナ人の多くは、想像とは逆に、アンチ中共の警鐘を鳴らす役割を果たしている。彼らは中共の手口をよく知っているが故に、おめでたいオーストラリア人たちの目を醒まさせたいのだ。

 この本は豪州ではすぐにベストセラーになった。しかし出版される前に、2社の版元から断られたという。その2社は、中共政府からの報復厭がらせを怖れたのである。豪州の情況はもうそこまで来てしまっていたのだ。

 著者ハミルトンは今、第二弾を執筆しており、今年じゅうに、出版されるだろう。

 馬健・著『シナの夢』(2018)。
 中共を脱出して英国に帰化した小説家が、SFミステリー小説の形でなければ伝えられない中共支配の恐怖について教えてくれる。
 新開発のデバイスにより、インターネットを使って世界人民の頭の中に直接に「チャイナ・ドリーム」を植えつけてしまうというプロット。これにより北京は、世界人民が何を希望すべきかを、設定できるようになるのだ。
 腐敗している中共の党内でいろいろな事業がどのように実行されるのか、その内部手順がよくわかる。

 ※この小説は2年前の刊行なのに、まだ邦訳が無いようだ。ということは、日本のSF系の出版社も、中共筋からの報復を恐れているということだな? なさけない業界だぜ。

 次。
 CHAD GARLAND 記者による2020-8-19記事「Bomb-sniffing ‘cyborg locusts’ advance under Navy-funded research」。
    英語ではバッタを二種類に分ける。スウォームとなって蝗害を為す傾きがある種類は「ロカスト」。それ以外は「グラスホッパー」だ。
 バッタの触角1本の中には、50の異なった役割に分かれた5万個のニューロンがある。

 米海軍研究所からの出資を受け、ワシントン大学にて「人工の嗅覚」を創りあげようとしているバラニ・ラマン教授のチーム。

 バッタの自然の生活と、TNT爆薬やDNT爆薬等の匂いとは、ほんらい何の関係もないはずだが、ラマン教授によれば、バッタの嗅覚は、それらのかすかな兆候を探知できる。たった1秒で、爆薬の種類の違いも分かるし、その匂いがどこからしているのかも、彼らのセンサーは、見当がついてしまうのだ。

 北米に在来のスウォーム・バッタで実験したところ、彼らは群生の状態だと、さらに効率よく爆薬を探知できる。
 すなわち、7匹が集まっているときは探知正答率80%だったのに対して、単独のときは60%であったと。