もし前路大気のプラズマ化がハイパーソニック飛翔体のコースをずらしてしまえるのなら、その機序をそのままABM(アンチバリスティックミサイル)兵器に転換できるはず。

 つまり東京都心に向かって落ちてくるBMやハイパーソニック弾の最終着弾点を大きくずらしてしまうことが、地対空レーザー砲によって、可能になるはずである。
 してみると、やはり、日本国が総力を挙げて研究すべきなのは、地対空レーザー・システムじゃないか。

 空気のプラズマ化による飛翔体空気摩擦の軽減は、既成のカノン砲にも応用され得るだろう。
 すなわちカノン砲の砲口周りに簀巻きのように多数のレーザー銃を同軸装載し、発射直前にビームを照射してやれば、砲弾はその弾道の前半部分(上昇過程)においてほとんど空気抵抗を受けないことになるだろう。

 これは、既存の古い155ミリ加農砲を、ABM任務の「高射砲」にコンバートできる可能性にも道を拓く。「PAC-3」よりも安価で、残弾を気にしないで防空戦闘を継続できる、融通の利くシステムに、既存のSPや牽引砲が、変身してくれるかもしれないのだ。

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 Przemyslaw Juraszek 記者による2020-9-26記事。
    ハンガリーがNASAMS=ノルウェー製先進SAMシステム を発注した。
 これが2018年に輸入された防空システムと結合されることによって、冷戦時代からひきつがれているSA-6系列のロシア製SAMは、ハンガリーにはなくなる。

 NASAMが地上から発射するのは、もともと空対空の長射程ミサイルである「AMRAAM-ER」(AIM-120C-7)。そのミサイルは米国から輸入される。

 ノルウェーのコングスベルグ社と米国レイセオン社は1990年代にAMRAAMをSAM化する研究に着手。1998には実用化し、ノルウェー国軍で採用してしまった。げんざい、ノルウェー国軍は6個のNASAMS高射大隊を擁している。
 そしてこのシステムは、スペイン、オランダ、チリ、米国、フィンランド、リトアニアによっても、採用された。とくに2007にできた「NASAMS 2」は、コスパがすぐれている。

 組み合わせるレーダーを択ばないのもNASAMSのすごいところで、そこはオープンアーキテクチュアーとなっており、げんざいユーザー諸国軍は、これを25種類の異なるレーダーで運用中。

 また、発射するミサイルも、AMRAAMには限らず、NATOが現用しているAAMならば、なんでもOKという。

 すでにサイドワインダー(9X)と「IRIS-T」(F-16用に開発したが、サイズの関係でF-35には搭載できないもの)は、組み合わされている。

 次。
 Loren Thompson 記者による2020-9-24記事「Five Ways GAO Fails To Understand Defense Industry Independent R&D」。
 GAOは連邦議会に雇われているので、議会向けに「仕事をしてます」アピールをするためには、限られた情報だけを元に、週刊誌の見出し的な掴みのある会計支出批判をプロデュースしなければならない。そこには同情する。

 GAOはこのたびは国防総省が民間に委嘱した研究開発について叩いた。
 しかしその予算、そもそも米国の全軍事予算のうち1%未満だということは知っておきたい。

 納税者はまた次のことも知るべきである。
 研究委嘱がスタートしたときには存在しないプライオリティが途中から入ってくるのが、あの世界では普通なのである。
 さいきんでもバイオだとか5Gだとかが突然に加えられている。突然に優先順位を上げられても、誰も突然にそれに応えられるもんじゃない。

 逆もある。
 たとえば2020の夏には、「ハイパーソニック技術」は、ペンタゴンの開発プライオリティの第三レベルに引き下げられた。それまでは、第一のレベルだったのに。
 ようするにペンタゴンはひんばんに技術開発のプライオリティを変えてくる。研究委嘱される企業がどこであれ、特定の時点ではストレートにそれに応えられないのはむしろあたりまえだ。

 もうひとつの常識。すごい技術は1年や2年で完成するもんじゃない。
 たとえばビーム兵器は過去数十年、常にペンタゴンの研究開発対象のトップ10内に位置づけられてきた。巨大企業も軒並み、これに関与している。それでも、飛躍的な成果など出てはいない。漸進的に努力し続けるしかないのである。もしここにカネを使うのを止めれば、他国がリードしてしまうだけ。それじゃいかんから、続けろ、というコンセンサスが議会内にあるのが幸いだ。