フェルミのパラドックスは、ディープフェイク技術が、その答えだったのかも。

 Sam Roggeveen 記者による2020-10-12記事「North Korea’s New Missile」。
      「火星15」は胴径が2m以下だった。こんどのICBMはそれより太い。
 ペイロードは謎だが、多数の囮弾頭(デコイ)を混載する余地があるだろう。とすると理論上、米本土のMDは瞞着されてしまう。

 ただし11軸の運搬発射台車はいただけない。こんなものが走り回れる道路が北鮮にはほとんど無いだろう。しかもこのミサイル、液燃である。
 強力なロケット用の液体燃料は化学的に不安定にして腐食性も強いため、注入しっ放しで長時間放置できない。それは発射の直前に注入しなければならない。その注入作業用の車両か施設は、別に必要となるわけだ。

 注入作業は半日かかる。燃料供給トラックは10台弱も必要だ。

 記者は2018年にこういう提案をしている。北鮮が長距離ミサイルをスクラップにすれば米軍は韓国から出て行こう――という交渉をすればいいと。
 酷い取引かもしれない。しかし、あらゆるオプションのなかで、いちばんマシではなかろうか?

 次。
Karen Hao 記者による2020-10-9記事「Inside the strange new world of being a deepfake actor」。
     ディープフェイク技術が発達すると、プロ役者の仕事のあり方も変わる。
 プロ役者は、1人で数役を演ずることになる。本人のオリジナルの顔は決して使われない。彼/彼女は、ただ、ディープフェイクの「ベース」を提供するだけである。

 ただし、演技力は一流でなくてはならない。ニクソンの演説を合成するのに、ニクソンとそっくりの顔や上半身の動きをしてみせねばならないからだ。

 旧来、役者は、自分の演技が「最終商品」になると知っており、それを自分でモニターして確認できた。
 ところが、ディープフェイク時代のプロ役者は、自分の演技が加工されて最終的にどんな商品になるのかを、知ることはできない。
 すなわち、性別、皮膚の色、見た目年齢も含めて、顔のつくりと、身体のつくり・衣装などを、自在にPC上でリクリエイトされてしまうからである。
 声色も、まったく簡単に変えられてしまう。

 ニクソンのリアル声色サンプルは、ごく短いものを、数百サンプル収集して、AIに覚えこませておく必要がある。

 沈鬱なテーマで話を創るときは、辞任演説の声の調子が軸とされる。

 この声の調子をそれらしくととのえる作業に、最も、手間隙が必要である。いまの技術の段階では。

 北鮮指導者のディープフェイクをつくる過程で面白い発見があった。金正恩にいちばん似ていないプロ役者が、金正恩の「ベース」として最も巧みな、ホンモノそっくりの顔演技ができたのである。この役者が、採用された。
 つまりこれからのプロ役者は、「地顔」はどうでもよくなり、真に物まね芸に達しているかどうかが問われる時代なのだ。

 無名人がSNS上で顔を晒しつつ安全に政治活動しようと思ったら、これからは、ディープフェイクが「顔シールド」として役立てられる。つまり、じぶんの顔を加工して別な民族性になりすましてしまえば、生活圏内にて、身バレしないので、直接の迫害を蒙ることもないだろうからである。

 ディープフェイク時代には、諧謔と偽情報との区別をつけにくくなるだろう。

 ※「本人の確認」が、誰にもできなくなる時代が到来したら、社会は成り立つだろうか? 社会どころか、家族すらも、成り立たなくなるかもしれない。このディープフェイク技術が発達して誰でも手軽に日常的に駆使するようになれば、その時点で、人類はおしまいかもしれない。先行した宇宙人文明も、結句、そのようにして、自滅したのではあるまいか?



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