旧資料備忘摘録 2020-10-13 Up

▼『短歌』S56-11月号
 米田利昭「ミッドウェーの歌」。
 土屋文明という人がS17-10に紹介した、海軍機関大尉・佐藤完一の作:「二昼夜の後に迫りしその夜更け魚雷調整室に鎖[チェン]繰る音」。これはハワイ作戦時に作られたという。
 また同じく「全機無事帰還の報あり通風孔に耳をすませば爆音聞ゆ」というのも。
 電気分隊長だった佐藤の戦闘部署は『蒼龍』の配電室だった。水線下2.8m。そこから、飛行甲板上のできごとを音でモニターできたわけ。

 土屋いわく。事変短歌では、戦線と銃後とに、覚悟の隔たりがあった。が、大東亜戦以後、それはなくなった、と。

 佐藤の歌は11首が『アララギ』S17-2月号に載っている。
 佐藤が『水交社記事』S17-3月号に出した歌には、「攻撃は二十時間の後となり総員入浴の令かかりたり」「一次攻撃の総試運転初まりて微かなる振動はここに伝はる」なども。

 同号には「攻撃機還りたるらし通風筒に耳あてて聞く遠き爆音」もあり。こちらは脚色なしの事実に近いのだろう。

 佐藤はS12-8には水上機母艦の『神威』に乗組んでいる。兵からタタキ上げの機関将校。学科は全部、海軍の機関学校仕込み。

 『アララギ』S17-6月号に載った佐藤のインド洋での詠歌。「兵装成りて甲板に竝ぶ攻撃機十七夜の月に静かなるかも」。
 佐藤は艦上機に便乗したこともある。機種はとうぜん、分かっている。
 「一斉に風に立ちたる○○〔空母?〕群発艦指揮所に赤き旗見ゆ」
 「魚雷抱き艦橋下を過ぐるとき手を挙ぐる人と挙げぬ人とあり」
 「二次攻撃隊発艦用意の急令に整備兵の鋭[と]声は艦橋まで聞ゆ」
 「あわただしき雷撃用意に水雷兵の大かたはパンツ一つとなりぬ」

 佐藤はMIで『蒼龍』に在って戦死。だから、4月22日に柱島に戻って、5月27日にMIへ出撃する間に投稿したのではないか。

 山岸米吉は、『蒼龍』艦橋上のいわゆる「メガネ配置」――測距手だった。その山岸によると、山口多聞はMI攻撃に先立って十三試艦爆で索敵してはいかがと上申したが、南雲はそれを無視して第一次を出した。
 第一次攻撃隊を収容して、被弾するまでに、1時間あったが、山岸らは昼飯を食っていたという。

 山岸いわく。「直上急降下」というので上を見た。測距儀を上に向けて。傍らの射手の兵曹は味方機の増槽だと思っていた。被弾後、天蓋を開けて手と顔を出したら、爆風で火傷した。
 下の発令所=射撃盤にいた15人の兵士にむけて、非常を伝えるブザーを三度「ブブブ」と押したところ、下からも「ブブブ」(大丈夫)との応えあり。

 気がつくと、4人、塔の中にいたのが、皆、逃げてしまった。すでに降りる階段は赤熱。飛び降りて「旗[はた]甲板」に立つと、艦長はジャイロコンパスに腕をついて、燃えさかる飛行甲板を見下ろしていた。

 汽罐がやられ、蒸気を作れず、発電機が回らず、停電になった。
 吃水線より低いところにある配電盤の下には、ディーゼルエンジン室があった。
 一等兵曹長・清水武久によると、格納庫には二酸化炭素の瓶が積んであり、火災のときは鎧戸を閉めてそのガスを充満させることになっていた。
 待機所からは階段を4つ昇らないと外へは出られない。しかし長年乗っていたので、暗闇の中を脱出できた。
 甲板に出たら、操舵室からは「苦しい」という声が聞こえてきていた。
 配電盤=メイン管制盤は、最後まで抛棄できぬ部署。だから佐藤は、そこに残っていたのだろう。

▼『軍事史学』118号
 久保田正志「戦国期における日本での大砲使用」 
 馬の調教技術が低く、2頭曳き以上は不可能だった。それで牛にした。朝鮮でも17世紀以降、牛車輸送が発達した。

▼現代評論社『現代の眼』S56-9月号
 小島清文(元海軍中尉)「ミッドウェー・レイテ海戦と恥意識の思想」
 『赤城』ガンルームでは、和食2回、洋食1回のパターンが、沈没の日まで続いた。
 『赤城』配乗(ガンルーム前の中央応急指揮所にいた)の中学同期のS中尉に聞いたところでは、陸用爆弾から対艦用への兵装転換中、搭乗員の士官たちが「攻撃は飯を食ってからだ」と話しながらガンルームに入って行った。一刻をあらそうような切迫した空気は微塵もなかったと。

 青木大佐の処遇。商船運行監督にされた。※エリート艦長だったのに、終戦の日まで大佐なのだからおそろしい。

 北号作戦は、台風とともに北上するかたちになったので、成功した。

▼田中舘愛橘『航空機講話』大4
 空気の抵抗は速度の2乗に正比例す。

 先尾翼で、双発エンジンを胴の左右脇にとりつけ、主翼はエンジンとは無関係に、エンジン位置よりさらに後ろに高翼式配置。44馬力で109km/時を出したという、Letllier-Bruneau 飛行機。

 10年前にできたイタリアの「瓦斯タービン」エンジンの写真。

▼『東京土木建築工業組合沿革史 後篇』S18-8
 S12-10-11に、商工省令。工事に鉄筋や鉄骨を使うことを極度に制限。許可制に。

▼『物資動員』S14-4
 バルカナイズドファイバーで、機械のベルトまでつくっていた。
 石綿は朝・満から輸入。
 アルミの元の明礬石は朝鮮で採掘。
 魚の皮は、鯨と鮫のみが、使い物になる。

 英国の『マシナリー』誌の昨年7月号によると、ブレンの制式を決めてから2ヵ年にして、大量生産を確立したと。
 専用機械はすくなく、一般汎用機械に、各分業ごとの「取付具」を設備することで、単能&精密化を実現した。
 この方式なら、モデルチェンジにもマイナーチェンジにも対応できる。

 米はWWI中、スパニッシュモーゼルを、8時間で200梃製造。そのためには工作機械が499台、必要であったと。
 欧米では工員は三交代制である。
 世界の工作機械製造の三雄は、英米独。

▼松村剛『アルジェリア戦線従軍記』S37
 産経の臨時特派員として1962-2月から3月にかけて、アフリカ北岸から西岸を取材した。
 OAS(Organisation d’Armee Secrete)はウルトラ右翼からなり、アルジェリアではテロを実行。仏本国内にシンパ多し。
 仏政府は、OAS狩りにベトナム人を使った。「バルブーズ」という特務機関。
 ここをOASはバズーカで攻撃した。

 プラスティック爆弾の音は毎晩聞こえる。
 旅客機に20kgのプラスチック時限爆弾が仕掛けられるなど日常的。
 OASとFLNは殺しあっている。

 仏陸軍はOASと通じるおそれがあるため、海兵隊が警戒している。
 ヨーロッパ系住民の9割は、OASを支持。

 OASは数千人。元将軍が率いる。
 ドゴールはアルジェリアの右翼に推されて大統領になったが、初めからアルジェリアは独立させる肚であった。そこでOASが立った。
 彼らいわく、これは内戦ではない。半月旗クロワッサンに対する、十字旗クロワの、文明の戦いなのである。
 飛行場名のメゾンブランシュは直訳すると「白家」。
 1945-5-8にアルジェリア人がデモしていたところ、旗手が射殺されると、「ジハドだ」とばかり、セティフ市長以下180名の欧系住民が回教徒に殺された。その報復でアルジェリア人も1500人殺された。

 本格ゲリラ戦は1954-11以降。アバスが率いる。
 9時までに117発の爆弾が炸裂した。ケル・マチネー(なんという朝だったことか)。

 マンデス・フランスはユダヤ系政治家。
 腸チフス菌は摂氏60度のお茶で死ぬ(p.89)。

 日本の敗戦は「第二の開国」といわれた。

▼中原・佐川 共著『世界の奇病・感染症マップ』1996
 日本脳炎は、蚊→豚→蚊 のサイクル。
 1976-7にフィラデルフィアのホテルで200人が、肺炎症状。34人死亡。これがレジオネラ菌で、在郷軍人病と言われた。空調用の冷却塔内で繁殖し、飛沫が人の肺に入る。河川、湖にもいる。
 水温36度だと好適。
 二次感染は起きない。70度で死ぬ。

▼山内一也『エマージングウイルスの世紀』1997
 著者は1931生まれ。
 綱吉の時代に狂犬病の犬は観察されておらず。
 1700年代に長崎から入ってきたようだ。

 近代では明治39年の東京の7頭が最初(p.138)。※これは疑わしい。警察官がもっと早く死んでいたはず。

 コウモリも狂犬病をうつす。

▼21世紀感染症研究会『殺人病ファイル』1995
 コクシジオイデスは、吸い込んだ人のうち0.5%が重症となり、1年で死ぬ。
 峡谷熱、砂漠リウマチとも。
 砂漠のネズミの巣で増えているらしい。それが強風で飛ばされてくる。
 皮膚に付いても、なんでもない。
 肺に入ると、発疹が表れる。
 流行地は南米。
 牛、犬、猫、馬、羊、豚、鼠も罹る。白人は罹り難いともいう。

▼田口・長谷川 共著『細菌汚染』H11
 外科医たちのように、ブラシを使って洗うのでない限り、手は、洗わないほうがむしろきれいな状態。

 原虫のクリプトスポリジウムは、1993にミルウォーキーで。1996に埼玉県の越生町で。1998にロンドンで。コップ半分の水道水で下痢となる。
 水源に入ると、取り除けない。
 塩素に対しては、大腸菌の60万倍強い。
 上水の塩素濃度ぐらいではひとつも死なない。
 原虫1匹でも下痢が起きる。
 砂濾過や、凝集沈殿でもダメ。サイズが小さいから。
 5度の水中に100日間いても、10%の原虫は感染性を失わない。

 米国の自然界にハシカ(ウィルス)なし。ワクチン普及のおかげで。
 日本では接種が義務ではないので、誰も打たぬ。
 よって日本人旅行者が米人に麻疹をうつす。

 渡り鳥の鴨→アヒル→豚(アヒルと水を共有しているので)→人 ……という感染ルートあり。
 鳥の密集がよくない。
 そして、豚とヒトは内臓が近似しているから。

 ホタテは貝柱だけだから、ウイルス下痢なし。
 生牡蠣は、内臓ごと なので、危ない。
 筋肉にはインフルエンザ・ウィルスはかくれていないから、豚肉はOK。

 毒素から血清ができる。
 マムシ馬血清を打った者が、破傷風馬血清を打つと、抗体でショック死する。

 スクレイピー=かゆいかゆい病。羊が柵にすりつける。それで全身から出血。

 ニワトリに炭疽菌を注射しても死なないが、水で冷やしたニワトリは炭疽菌で死ぬ。
 光学顕微鏡は、0.1μまで見える。

 1ミクロンの万分の1=1オングストローム=0.1ナノメートル。
 細菌は0.1μ~20μ。

 霊菌。死体に付く。抗生物質が利かない。院内感染する。

 カテキンはツバキ科植物の葉にあり。ポリフェノール。タンニン。これはインフルエンザウイルスを失活させる。

▼(社)日本アイソトープ協会『放射性滅菌の現状と展望』1998
 放射線はDNAの生物活性を消失させる。
 電子の衝突より二重螺旋が破壊分断される。

 ただしフリーラジカルも生ずるので、食い物に使っていいのかは、疑問が残されている。

 ガンマ線や電子加速よりも、X線が自由に使えると、すばらしい。
 他に、過酸化水素を気体状態でプラズマ(100%電離イオン)にした、ガスプラズマによる殺菌術もある。

 漢方薬すらカビに汚染されている。

▼『消毒剤ハンドブック』H3
 炭疽菌やウェルシュ菌の芽胞は摂氏100度×10分間の煮沸で死滅する。
 破傷風菌の芽胞は、100度×60分。ボツリヌスの芽胞も。

 加熱滅菌の指標菌である B.stearothermophilus の芽胞は、100度で数時間煮沸されないと死なない。
 カメラはエタノールで消毒している。

▼古橋正吉『滅菌・消毒マニュアル』1999
 dry heat 法は、摂氏170度×4時間。
 油、粉末、ガラスなどを滅菌したくば、この方法。
 一種のオーブンで行なう。

 真菌胞子は、細菌芽胞(spore)よりは抵抗性は弱い(p.239)。

 D値。菌数90%を殺す時間。たとえば121度の蒸気のD値は2.5(分)……というように。
 2D値は、99%殺すのに要する時間。
 3D値は、99.9%殺すのに要する時間。
 6D値だと、99.9999%殺すのに要する時間。たとえば15(分)……とかになる。

▼『誰でもわかる抗菌の基礎知識』1999
 カビのほとんどは生育に酸素を必要とする。
 水分は、少ししか必要としない。細菌よりは。

 胞子は、培地のない乾燥状態でも生きる。
 培地なくして、細菌も真菌も生育はしない。

 レンズにつくカビは、コーティングの薄膜を運河状に溶かしてしまう。代謝のリンゴ酸による。それが曇りとなる。

▼『真核微生物の環境応答と遺伝子発現』1993
 カドミウムで「馴養」すると、耐性株が得られる。
 紫外線照射で得ようとしても、上記法より弱いものしかできぬ。

 イモチ病菌はミョウガにも寄生す。
 イモチ病菌は市販の醤油を培地にできる。

▼某百科事典のヘビの項目
 北極にはいる。南極にはいない。トカゲの足が退化したもの。
 振動に敏感。
 立体視力はないが、マムシ科のピットは、〔IRを?〕立体視する。
 舌が嗅覚器官で、舌でIRも感じる。
 ウミヘビは肺が尻尾まである。

▼David Malloch著、宇田川らtr.『カビの分離・培養と同定』S58、原1982
 同定は学生には難しい。
 子のう菌類と担子菌類(キノコ)が、胞子を空気中へ出す。
 子嚢は水鉄砲の仕組み。先端から数センチも射出する。105mm榴弾砲に等しいワザ。

 霧の水滴表面に付着して拡散する胞子もある。
 細いニクロム線の先をアルコールランプで赤熱させ、15秒冷やすと、火炎滅菌となる。
 試験管の口も炎で焼く。その蓋は決して机上に触れさせてはならぬ。

 寒天表面は、市販塩素漂白液に60分漬ければクリーンに。
 ダニが1匹入ったら、すべてパーにされる。パラジクロルベンゼンで予防的に殺せ。

▼『感染症学雑誌』1995-6月号
 山本善裕・他「長崎県における環境(鳩の糞)からの Cryptococcus neoformans の検出」。
 深在性真菌症である。
 土壌中に広く生息。鳥の糞で増殖し、大気中に飛散して、ヒトに経気道感染する。
 健康人も罹る。
 クリプトコックス髄膜脳炎で死ぬ例あり。

▼佐野弘毅『趣味と実益の食用鳩概要』S3
 ニワトリより75%安く肉を得られる?
 農林省は東京と大阪で飼育試験済み。全国普及を図っている。

 1800年頃、欧州(ベルギー)で食用として改良され、米国に普及した。
 1年に11つがいの産卵数。常に2卵を産むので「番[つがい]」とカウントする。

 米は1920年代に欧州からあらゆるハトを輸入して改良研究した。それが日本にもたらされている。
 鳩は原則、一夫一婦。
 好んで水浴し、水は多量に飲む。ニワトリの3倍必要。オスもメスも体内で離乳食をつくりだすため。
 寿命15年だが、よく生むのは5ヶ月から8年まで。

 オスは歩いて輪を描く。メスはけっして、一周しない。
 短い濁音はメスの声。長い単音はオスの声。

 大麦や小麦の柔らかい餌は、絶対不可。カラカラに乾燥したものに限る。
 病鳩の糞は軟便で悪臭を放つ。
 カビ穀物や汚水で、口内炎となる。雛鳩はジフテリアになる。眼病にもなる。すべて伝染するので、隔離する。

 鳩は肉食はしない。
 ヒナバトの肉の商品名を米国ではスクウォップという。

▼中村八郎『食用鳩の飼ひ方』S3-5
 伝書鳩のうち、途中で道草する個体があり、そういう役立たずをよりわけて、食用に転用したという。
 鳩舎へは、いつも同じ服装で入れ。
 つかまえるときは必ず脚を持つ。

 おどかされた鳩は、家禽から野生鳩への逆進化をたどり、あらあらしくなり、少産となる。
 放し飼いすると、野生化につながる。ニワトリと違って、飛ぶので。

 鳩がじぶんで巣をつくることを巣引という。