極秘ブリーフィングが次期政権の側に共有されないことの危うさとは

 中共が「対艦弾道弾」の実験に成功してなどいないことは、写真情報、レーダー情報、NSAの通信盗聴等から確実です……という報告が、関係官衙から直接に、あるいは大統領側近を経て、大統領には提示される。国務長官その他の枢要な役人もその報告のまとめについては共有する。

 ただし、すべての真相を知った上で、そのことについて黙っているのは政権の勝手だ。中共のフカシ宣伝を放置していた方が、対中共用名義の対抗予算は議会で通りやすくなるからだ。

 しかし今回のようなケースでは、バイデン側がその真実の報告に接することができないために、次期政権の側近や中枢要人の中に、シナ側の宣伝を真に受けて、「開戦」についてビビる者が出てくる可能性は高い。
 それが「超限戦」の宣伝工作の勝利ということなのである。

 これから来年の1月下旬まで、中共の無責任ポジションに居る者たちの口から、数々の脅迫と法螺話が発信されて、愚かな俄か軍事オタクがその拡声器になってくれるであろう。

 次。
 Joseph Trevithick 記者による2020-11-14記事「The Army Tried To Turn Nerf Footballs Into Hand Grenades」。
    第二次大戦中にOSS(CIAの前身)は、野球のボールと重さも形も等しくした着発破片手榴弾を開発しようとした。それなら新兵たちの投擲訓練が省略できるだろうと思ったわけだ。
 しかし手榴弾と着発信管の組み合わせがいかに危いものかを、彼らはわかっていなかった。この「T-13」(別名、ビーノ)の開発中に2人が死亡し、44人が重軽傷を負っている。
 ※時限信管にすれば成功したと思われる。

 欧州正面でのソ連軍戦車の数的優越が著しくなっていた1974年に、米陸軍の開発部門が、歩兵が手で投げられ対戦車擲弾を、競技用のアメフトボールの寸法にあわせてはどうかと考えた。

 競技用のアメフトのボールは、重さが14オンスと定まっている。※28.35グラム計算ならば396.9グラム。

 フォームラバー素材の Nerf を使い、アメフトのボールの外形をつくり、芯部に、成形炸薬弾頭を仕込み、全体重量をアメフトボールと同一にしておけばいいではないかと。

 アメフトをたしなんだ米兵なら、35mのパスは出せる。もちろん立姿での投擲となる。ポジションがクォーターバックだったなら、もっと長いパスを正確に出せる。

 ※旋転を与える投げ方により、ボールの長軸を一定させたまま、遠くへパスすることができるので、空力安定板を附加しなくていいという発想。

 しかしもくろみは挫折した。
 アメフトボール形状の対戦車擲弾の問題は、内部の密度分布がリアルのボールとは逆に、表皮部分ではなく芯部に集中しているため、アメフトと同じように投げるだけでは同じような回転は与えられず、同じような軸安定特性も示されないことだった。

 また、敵戦車の表面に対して、垂直の角度でノーズが当たって起爆してくれる確率は低かった。
 むしろ、距離10mで確実に戦車の天板に下向きに当たる、ソ連式の対戦車手榴弾の方が現実的であった。
 ついに、アイディアだけで終わった次第である。

 ※使わぬときに嵩張り、貯蔵や運搬の場所をとりすぎ、普段の携行にも不便だというデメリットも認められたはずだ。これはむしろ、石器時代の狩猟民が使っていた「アトゥラトル」=尖頭器投擲加速棒 と対戦車手榴弾を組み合わせることを考えた方がよかったのではないか。普通の破片手榴弾の安全装置である「フライオフレバー」の変形進化と考えればいいのだ。



超限戦 21世紀の「新しい戦争」 (角川新書)


武器が語る日本史