来月の地政学講話は12月16日を予定します。

 ネット中継は今回、都合によりできなかった模様。
 来月も、どうなるかはわかりませぬ。

 次。
 Abhishek De 記者による2020-11-18記事「Explained: India has dismissed as ‘fake’ a report about China’s use of ‘microwave weapons’. What are they?」
   英国の日刊紙『ザ・タイムズ』が中共の教授の主張を引用し、中共軍がラダク東部でマイクロウェーヴ・ウェポンを使ってインド兵を追い立てたとする記事について、インド陸軍は、《根拠のないフェイク》である、とツイッター上にて斥けた。

 ロンドンにある『The Times』が「China turns Ladakh battleground with India into a microwave oven」という題の記事を、ウェブ版で公表したのが、11-17であった。引用されている中国人民大学(北京)の教授は Jin Canrong 〔ウィキペティアによれば1962生まれ。金【火へんに山】【栄のツがくさかんむり】。米支関係の専門家で米留学もしている。〕

 金によれば電波攻撃は8月後半に実施されて成功したという。

 同じ記事を豪州の日刊紙の『The Australian』も掲載した。その記事タイトルは「China’s microwave pulse weapon defeats Indian troops at Himalayan border」。

 『ザ・タイムズ』も『ズィ・オーストラリアン』も、どちらも、ルパート・マードックの「ニューズ・コープ」が株式を支配している。

 8月29日にインド兵たちはパンゴンツォ南岸の瞰制高地を確保している。

 金は大学の教室で、学生相手にこうフカシた。中共軍はインド軍が占領するふたつの緊要地形の丘をマイクロ波で攻撃し、インド兵を追い払ったと。通常の銃火は1発も飛び交わなかったと。電波兵器が配置について15分にしてインド兵たちは全員嘔吐しはじめ、立っていられなくなり、逃げたと。中共もインドもこの事実を敢えて報道していないのである、と。

 『デイリー・メール』紙によれば、中共は2014年の航空兵器ショーで「Poly WB-1」なる4輪トラック車載のショボそうな《電波兵器》を展示したことがある。 ※米国の「アクティヴ・ディナイヤル・システム」のパクリをめざしたものだろうが、一見してパラボラの面積が小さすぎる。

 過去に米軍はアクティヴディナイヤルシステムをアフガンに持ち込んだことがあるが、人に向かって使う前に、上層の判断で撤去させられた。 ※反米勢力の宣伝に利用されるだけだからである。

 2017年後半、ハヴァナ市にある米国大使館が、謎の音響兵器によってイヤガラセ攻撃を受けているという報道があった。同じ症状が、2018年、広州の米国領事館員の身に起きた。

 これら領事館の関係者、合計30人以上が、ホテルや住宅の内部で「マイクロ波兵器」による攻撃を受けた疑いが持たれた。
 耳障りな音、突然の室内気圧の変化や微動なども体感されているという。

 結果として眩暈、頭痛、睡眠障害、聴覚障害が生じた。一括して「ハヴァナ症候群」と名づけられている。ただし国務省もFBIも、その原因が「マイクロ波兵器」だとは指摘していない。

 国防総省は「アクティヴディナイヤルシステム」について、これには発癌性はないし、人を不妊にさせる作用もない、とFAQで説明に努めている。

 次。
 Didi Tang 記者による2020-11-17記事「China’s microwave pulse weapon defeats Indian troops at Himalayan border」。
   ※これが『ザ・タイムズ』と『ズィ・オーストラリアン』に最初に載った記事だと思われる。これを誰がそのまんま拡散しているかを調べれば、中共のマスコミ工作網も、浮かび上がるだろう。

 金教授によると、中共軍は丘の麓に電子レンジ兵器を据えて、丘の頂上を電子レンジ化したのであると。

 ※アクティヴディナイヤルシステムのミリ波(周波数95ギガヘルツ)はもちろん、電子レンジのマイクロ波(2.45ギガヘルツ=波長12センチ)ですら、直進しかしない波長なので、低地から高所に向けて照射した場合、地形そのものが大障壁となる。稜線陣地内の監視兵は、単に姿勢を低くするだけでもその電波が上半身に当たらないようにできる。まして胸壁裏や反対斜面に位置していれば何の影響もありはしないのだから、命令によって守備についている緊要地形を放棄する理由がない。その前に、米軍のアクティヴディナイヤルシステムですら威力はせいぜい1kmまでしか及ぼせられないのに、どうしてインド軍の警備兵はその中共軍車両の至近距離までの肉薄と15分もの「攻撃」に対して銃弾を応射しないことがあろうか? ヒマラヤで1km以内といったらほとんど指呼の間にすぎぬ。そもそもミリ波とマイクロ波とを混同し、95GHz波は触覚神経を強く刺激するものの人肉を沸騰させる作用は無視できるレベルであることを知らぬことに加えて、この《国際関係論教授》に軍隊の素養がないことは明らかである。フェイク宣伝要員として、上層から命じられるままにマスコミ工作に挺身しているのだろう。

 金教授いわく、丘の上のインド兵たちは15分のうちに全員、嘔吐し始めたと。
 マイクロ波兵器は8月29日に使われたそうである。
 金教授の話が本当なら、これは軍事史上初めて、敵部隊に対して実際に使われた殺傷性の電波兵器ということになる。

 金教授が学生相手に語ったところでは、2つの丘を占領したのはチベット人傭兵であったという。
 これに対して中央軍事委員会が怒り、丘を奪い返すことと、そのさいに1発も銃弾を発射してはならないことを命じたという。

 現地の海抜は5600mである。
 ※高地順応していない兵隊がそんなところに行かされたら、頭痛や吐き気はすぐに起きます。この点、インド兵の方が低地から昇らされているので不利。フェイクの背景には、そういう事情がある。ひとつまみの「真実」が針小棒大に膨らまされる。

 広州の音波兵器攻撃は2018のこと。
 キューバでの音波兵器攻撃は2016で、カナダの外交官もやられた。

 ※ついでなので、国産のあきれたミスリーディング見出しがあったのでご紹介しよう。「三菱重工、1000キロ先のドローン操作 防衛技術を転用」というものだ。どこが載せている記事かは各自でチェックできるだろう。
 このタイトルを見ると、UAVに興味のある者ならギョッとする。無人機を、たとい高度2万mで飛ばしたとしても、水平距離200kmを超えて地上とのマイクロ波の双方向無線データ通信がつながるとは信じられないからだ。地球は丸いのだ。それが1000km? まさか軍用の短波利用の「リンク16」でも民需機に使ったのか? ……と一瞬、想像してしまう。だが2019年の関連記事を見ると謎は氷解する。この1000kmというのは有線回線の話なのだ。ふざけるなよ!



日韓戦争を自衛隊はどう戦うか


日本有事―憲法(マックKEMPOH)を棄て、核武装せよ! (PHP Paperbacks)