こんどのアゼルバイジャンの圧勝でパニックになっているのはロシア軍部

 Tom Payne 記者による2020-11-20記事「One in three motorists cannot afford even the cheapest electric car, warn experts in blow to Government plans to ban petrol and diesel cars by 2030」。
   英国で自動車に乗る人の三人に一人は、最も安価な電動自動車すら、買うことができなくなるだろう。

 英国で手に入る一番安い電動自動車は、スコダ社製の「シティゴ」であるが、これには毎月170ポンド【=2万3662円】の経常費がかかる。

 CEBR(経済ビジネス研究センター)の分析。最低でも毎年2100ポンド【29万2375円】を支出し続けないと、電動自動車を個人は維持できない。

 毎月1800ポンド【25万539円】を支出している世帯は、かろうじて電気自動車を維持できる。しかし、月々1400ポンド【19万5000円】でやりくりしている家庭なら、電気自動車はもてない。

 つまり英国の全世帯の三分の一にとって、電気自動車は、実現不可能な夢でしかない。

 英政府は2030年には石油燃料自動車の販売を禁ずるとした。そのために120億ポンド【1兆6700億円】の予算をつけるというのだが、現状、英国内の自動車の0.3%だけが電気自動車なので、それは不可能に近いだろう。

 初級レベルの電動自動車の購入価格は、だいたいガソリンエンジン自動車よりも5000ポンド【70万円】高い。

 ただし、廃車にするまでのライフタイムランニングコスト(購入費含む)の平均で比較すると、電気自動車が52100ポンド【725万円】なのに対してガソリン自動車は53600ポンド【746万円】となる。

 全英で給電所が280万箇所必要になるが、市町村の6つに1つは、住んでいる町の道路では給電所を見つけられないことになるだろう。

 貧乏人と、かつかつの零細企業にとって、現政府が唱える「グリーン・リボリューション」は、破産宣告に等しいのである。

 次。
 Robyn Dixon 記者による2020-11-12記事「Azerbaijan’s drones owned the battlefield in Nagorno-Karabakh ? and showed future of warfare」。
     停戦まで44日続いた、今次のナゴルノカラバフ紛争。6週間戦争と言えよう。
 休戦は火曜日=2020-11-10だった。開始が9-27。

 アゼル側は毎日、ビデオを公表した。国防省がウェブ発信した。バクーの街中の大画面でも放映された。
 シュシャ市は、アルメニア人の発音では「シュシ」市となる。
 塹壕の中のアルメニア兵がUAV攻撃で吹き飛ぶフッテージもあり。

 シリア傭兵はナゴルノカラバフには投入していないとトルコ政府。
 カーネギーの国際平和基金の職員でコーカサスの専門家であるトム・デウァール氏いわく、アルメニア軍の戦車の三分の一がUAVにやられてしまったと。

 アゼルは緒戦で11機の改造「アントノフ2」を無人で飛ばした。これでアルメニアのAA陣地を把握した。

 トルコは、リビアでヒフター軍閥軍の所有する「パンツィールS1」自走SAMをUAVでやっつける方法を会得していた。それを夏のうちにアゼル軍に教えた。
 ※ゲイディ氏の別記事によると、パンツィールは超低空目標には対処できないのだそうだ。これを打ち消すのに露人の回し者が躍起である。

 アゼル側公表の画像を調べた人によると、アルメニア軍の185両のT-72戦車、90両の歩兵用装甲車、182門の砲熕兵器、73両の多連装ロケット台車、26両の自走SAM(1両のTorと、5両のS-300を含む)、14基の防空レーダーもしくは電波妨害アンテナ車、飛行場に駐機していた1機の「スホイ25」攻撃機、451両のトラックが破壊された模様だという。

 それに対してアゼル軍は、戦車22両、41両の歩兵戦闘車、1機の有人ヘリ、25機のドローン、トラック24両をやられた。

 以上は確定値ではないが、確かなのは、アゼル側が圧勝であった。

 ※ゲイディ氏の別記事によると、アゼル軍は徹底的にISRを準備して開戦した。かたやアルメニア側は永久築城はおろか、野戦築城も甘すぎ、そのため塹壕内でむざむざやられている。AFVも蝟集させすぎていた。散開して移動し続けろという原則が分っていなかった。それと、これからはSAM車じしんが対UAV防空しなければならんというのが一教訓だと。この戦争については次の兵頭の1冊の中で戦訓をまとめてみるので、お楽しみに。



戦争の正しい始め方、終わり方


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