DJIもつらいよ。

 MARCUS KLOECKNER AND IMMANUEL JOHNSON 記者による2021-2-22記事「 US soldier loses appeal to have $1,500 drone returned after taking photos of 2019 Oktoberfest」。
   「フェン」という姓の〔したがって支那系であることが読者には推定されるところの〕米陸軍軍人(衛生系という)が2019年9月にミュンヘンのビールまつり「オクトーバーフェスト」をドローンで空撮したのが地元バイエルンの法律を破る行為であったため、この米兵はドローンとスマホを没収され、その上に500ユーロの罰金を課されていた。

 このドローンの返還を求めてバイエルンの裁判所に訴えていたのだが、ドイツの法令により、ドローンは返却されないことに決まった。

 まず、2019-8-1施行の法令により、オクトーバーフェストは「ノーフライゾーン」となっていた。
 「フェン」いわく、飛行禁止を明示する標識はどこにもなかったじゃないかと。

 まつりの開催期間は9-21から10-6で、630万人もの人出があったという。
 ドローンは「DJI マヴィック」である。1500ドル相当。

 それを操縦するのに使用されたスマホも、ドイツ警察が没収した。飛行高度は群集上150フィートであり、時刻は夜間であった。

 「フェン」は素直に罰金を支払っている。しかし、ドローンとスマホを取り戻すには裁判にしなければならないといわれた。

 このたび、ミュンヘンの裁判所は、スマホの返却については認めたが、ドローンは再犯に直結する懸念があるとして返却要求をしりぞけた次第である。

 じつは、ドイツの法律では、犯行に用いられるなどして没収された品物を警察が犯人に返却できるのは、それが類似の法令違反(軽罪を含む)にふたたび用いられるおそれが無い場合に限られているのである。

 「フェン」が腹を立てているのは、現場上空には6~7機のドローンが飛んでいたのに、その操縦者全員が逮捕されたわけではなかったことだ。

 なお2020のビールまつりは、武漢肺炎のせいで、開催されなかった。これはWWII後では初の事態だ。

 「フェン」も検察側も控訴はしなかった。よって判決は確定した。
 没収したままの1500ドル相当のドローンを、今後、当局がどうするのかは、まったく不明である。

 ※DJIのホビー級のクォッドが、ペイロードとして何グラムの物を吊るせるのかを調べると、新製品になるほど、軽くなっていることがわかる。これは、「手榴弾」(hand grenade)を吊るせなくするように必死の努力をしているからだと、わたしは思っている。西側世界で広く販売したいオモチャなのであるから、決してテロには使わせません、というポリシーを示さねばならないのだ。ところが、機体の全重と最大離陸重量の差(すなわちペイロード値)が小さくなるほどに、その機体には余裕の上昇力もなくなり、したがって飛行管制条件もとてもシビアになってしまうはずである。もちろん余分の電池も積めなくなる。このジレンマを克服するのはDJIの開発陣としてはたいへんなチャレンジだろうと想像する。さらに難問がある。軍用の最小の手榴弾は炸薬が200グラム弱しかない。この炸薬だけを軽量素材のケーシングに詰めなおすことが、テロリストにはできる。ホビー用のクォッドコプターでペイロード値が180グラムを切ったら、それは安全に操縦可能だろうか? 努力も限界に逢着しているのだ。そしてもうひとつの根本の悩み。DJI社はホビー用とは別に業務用のマルチコプターを市販している。このラインナップについては、ペイロードを1kg以下にするなんてことは最初から無意味であり不可能だ。だがペイロードが1kgほどあれば、対戦車用のRPG弾頭から推薬を除いたモノを吊るすことができるのだ。つまり、数十万円で反復使用可能な対戦車ミサイルができてしまうのだ。いま、小荷物配達をドローンにさせようと言っている人たちには、ドローンが爆弾も配達してくれるようになる未来について、いまから悩んでおくことを要求する。DJIの連中は、ずっとその悩みと取り組んで来ているのだ。