スポーツも商売も、相互主義が通用する相手とだけすればよい。「フィルタリング鎖国」。

 Wudan Yan 記者による2021-3-29記事「Keeping covid vaccines cold isn’t easy. These ideas could help.」。
   新コロ用の「mRNA」系ワクチンを世界の隅々に届けるためには「コールド・チェーン」がネックになる。
 ファイザーだと摂氏マイナス80度、モデルナならマイナス20度での保管が必要だ。
 家庭用のふつうの冷蔵庫だとせいぜいマイナス4度しか維持できない。
 メッセンジャーRNAを用いない、ジョンソン&ジョンソンのワクチンや、アストラゼネカのワクチンなら、それでもいいのだが。

 今後、変異株への対策を考えると、やはり頼れるワクチンは、「mRNA」系である。再設計がすぐにできるワクチンなので。だから、各国政府は、それ用の高性能の冷凍庫/冷凍車等の準備を、真剣に考えねばならない。

 なにしろ、いったん規定の低温よりもあたたかくなれば、そのmRNAは、3時間しか保たれない。mRNAはバラけてしまいやすいのだ。
 ワクチンの内部では、mRNAは、脂質のバブルで保護されている。この脂質のバブルを維持するために、冷凍が必要なのである。
 脂質を凍らせるためには、かなりの冷却が必要だ。それで、たとえば水を凍らせるのとは、必要設備の次元がちがってくる次第である。

 とうぜん、安定した電力を確実に得ることが難しい僻地では、接種のための大きなネックにもなってしまう。強力な冷凍庫を稼動させ続けられる保証がないのでは、貴重なワクチンが現地でパーになってしまいかねない。
 米国FDAは、ファイザーのワクチン、および、ビオンテックのワクチンも、2週間までであれば、摂氏零下20度で保管してもmRNAを保護する脂質バブルは壊れない、とお墨付きを与えた。

 保護バブルをさらに糖質で被覆したらどうかという研究が、進められている。成功すれば、保護バブルはいっそう壊れにくくなり、かつまた、隣のバブルと粘着してしまうまずい現象も起き難くなる。よって、従来よりも高温でmRNA系のワクチンを保管または輸送しても、よくなるかもしれない。

 さらに、mRNAワクチンを室温でも保管できるようにしようというチャレンジが、シアトルのHDTバイオ社によって進められている。この研究者たちは、脂質バブルのかわりに、イオン化された無機ナノ分子を使うことを考えている。たとえば酸化鉄なら、プラスの電荷を持っている。それによって包まれるmRNAの電荷はマイナスだから、微粒子の構造ががっちりとかたまり、壊されにくくなる、と期待する。

 地球保健機構PATHは、輸送されているワクチンが途中でさらされた温度(蓄積)を色の変化で示して警告してくれるステッカーを開発した。
 長時間の保管&運送途中で冷凍庫への給電が一時的に停まり、そのさいにmRNAが壊れてしまっているのに、現地の医療スタッフはそれを知らず、有効なワクチンだと思って無効なワクチンを人々に接種する――という諸資源のムダを、これで回避することができる。

 ビルゲイツ財団の一部門では2009年から、ふつうの電力が得られない場所でも冷凍機能を発揮する冷凍庫を開発している。
 これはドライアイスやエタノールを用いる「樽」で、たとえば450個のワクチン瓶を3週間以上、摂氏マイナス20度に保持できるという。じっさいに2015年にアフリカのエボラ流行地へこれが持ち込まれて8000人にワクチン接種できたという。
 そしていまでも3000個の「冷凍樽」がアフリカ各地に置かれているのだ。

 またファイザー社では、ワクチンを乾燥保存する方法に挑んでいる。かなりの難事業だが、2022年にはモノになるかもしれないという。



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