敷島のやまと心をうし問はば 花杯にキャプティヴボルト /モトーレン宣長(ぶろろんろん)

 The Maritime Executive の2021-4-14記事「New Zealand to Phase Out Live Export by 2023」。
   ニュージーランドは2023年までに、生きた家畜家禽を船便で輸出することを全面的に禁止する。先進国としては、さきがけとなる。
 これは、「動物の福祉」について高い基準を設けるということ。
 NZの輸出による稼ぎに占めている家畜家禽の割合は、0.2%であるから、経済的な大影響は、生じない。

 同国内の独立機関、国立動物福祉助言委員会NAWACが、以前からこの主張をしてきた。NZから北半球の消費国まで低速の貨物船で生きた動物を延々と輸送するのは、その動物にとって過酷だ、として。

 NZでは、「ショート・ターム・スローター」のための海送輸出も2008年から禁じてきた。

  ※わたしも知らなかったが、動物を屠畜場まで輸送する、その行程を、畜産・食肉業界で「ショート・ターム」と呼ぶらしい。その道行き中に特に、動物たちに過酷なストレスが与えられることが多い。どうせ死ぬんだからお客さん扱いする必要はねえ、というわけか。それを、NZのような動物福祉先進国では、大問題とするわけである。たとえば、シナ人が生きたアヒルを駕籠にぎゅう詰めにしてオートバイで運搬している姿、ああいうのを牛や豚にあてはめて想起すればわかりやすいだろう。その、短時間だが手荒で過酷な輸送は、食肉処理工場へ直行するものであったとしても、ダメだ、とするわけだ。海送の場合の「ショート・ターム」とは、荷揚げされた国で即日または数日中に屠殺されるとしても、いけないとするのか。

 動物福祉運動家たちの目するところ、中共とスリランカは、動物福祉の「低スタンダード」の見本市である。
 NZからそれらの国までの輸送の流儀は、NZの法律で規制できても、荷揚げしてしまってから先の動物たちの取り扱いは、向こうの国の法律が「低スタンダード」なので、まずい。そこも、NZ人は問題とする。

 ※いずれ家畜も安楽死させねばならん時代が来そうだ。食肉工場行きの前夜の最後の晩餐にクスリが入っていて、二度と目覚めぬ、といった形式が好まれるのではないか? キャプティヴボルトを日本では何と呼んでいるのか、そもそも日本で使われているのかどうか、知っている業界人がいらしたら、教えてください。小説で使いたい。

 2020-9月に家畜輸送船の『ガルフ・ライブストック・1』号が日本沖で沈没した。クルー41名と、家畜5800頭が水死した。それをうけて10月にNZは、生きた家畜の船舶積載制限を強化していた。

 ※日本語のニュースを検索したら、2020年の9月2日に奄美沖で牛を積んだ船が沈没している。台風9号にやられた。乗組員は43人でそのうち39人はフィリピン人、4人がアンザック。英文記事が正しいとすれば41人も死んだのかよ! ぜんぜん知らなかったが、大事件じゃん。

 英国も、2020-12に、北アイルランドおよびスコットランドからの生きた家禽の部分的な輸出禁止を定めている。

 次。
 Abigail Abrams 記者による2021-4-13記事「Why Abortion Pills Are the Next Frontier in the Battle Over Reproductive Rights」。
   米FDAは、遠隔医療で「堕胎飲み薬」を患者が取得できるように臨時に規則を緩和した。
 これは「堕胎は女性の権利である」とするバイデン政権の方針にも沿う。トランプ政権は禁じていた。

 「ミフェプリストン」(欧米では80年代からあり、日本では未承認)は、米国に2種類ある妊娠初期用の中絶薬のひとつ。従来はそれを服用する患者みずからが薬局に取りに行かないとダメだったが、今後は、郵送で自宅まで届けられるようになる。
 これにより、薬局に往復するあいだにその患者が新コロに罹ってしまうリスクを、なくすことができる。

 FDAは、この措置をパンデミック終了後も継続するかどうかをあきらかにしていない。
 米国では、保守派を中心に、堕胎そのものへの反対派が根強い。

 具体的には、このパンデミックが続く間、中絶を望む妊娠初期段階の妊婦は、テレビ電話もしくは映像なしの音声だけの電話で医師のリモート診療を受ければ、ミフェプリストーンの錠剤を郵送で受け取れるわけである。
 錠剤は、ミフェプリストーンと、ミソプロストールの2種からなる。※後者は中絶胎児の排出を助ける薬剤のようだ。そのためFDAによる規制はミフェプリストーンほど厳しくない。

 ひとつ大事なこと。ミフェプリストーンが効くのは、妊娠10週間までなのである。多くの人は、10週間以内では、まだ妊娠には気づかない。
 また19の州では、堕胎の遠隔医療そのものをすでに州法によって禁じている。

 英国でもパンデミック中、同様の規制緩和がなされている。52000件の中絶について調べたが、遠隔診療&錠剤郵送の方式だと、患者が待つ時間を4日短縮できることが分った。
 ※その4日の違いで、10週間のリミットを超えてしまうかどうかの、わかれめとなり得る。



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