昼間に星が見える話。

 David Hambling 記者による2021-4-25記事「The U.S. Navy’s New Unhackable GPS Alternative: The Stars」。
   1995に完整したGPS。しかし電波の性質上、どうしても妨害工作に弱い。
 そこで、最新ハイテクを使った、光学的な「天測」航法が復活した。

 WWII中には電波航法システムが発達していたが、「B-17G」には天測用窓がちゃんと設けられていた。
 「アストロドーム」はコクピットの前にあった。星座をめぼしにした。

 1950年代の戦略核巡航ミサイル「スナーク」は、初めて自動天測航法システムを載せられた。その装置だけで1トン近くもあった。

 小型望遠鏡が三軸ジンバル台座に据えられていた。「星のカタログ」のメモリーデータと照合して自己位置を確認するのである。
 理論上、これで着弾誤差は3km以内になるはずだった。が、うまく働かなかった。
 その不正確さは、3.8メガトンの水爆出力で補うしなかった。

 六分儀は、天体(恒星、惑星、月、太陽)と、水平線の角度を計る道具である。これとクロノメーター(帆船時代からある精密時計)と海図を用いれば、船舶の現在位置を推定できる。

 六分儀の構成は、ミニ望遠鏡、半透過ミラー(それを通して望遠鏡を覗く)、動く腕に取り付けられた水平線参照ミラー、である。
 特定の星を望遠鏡で捉えつつ、参照ミラーを水平線に合致させるのだ。
 そして腕の角度を読んで、記録する。

 たとえば、太陽の角度を計って、それが35度と出たとする。すると、君のフネは、直径3000マイルの輪(海図上ではほぼ一直線)のどこかに在ると知られる。

 これを2回以上実行し、海図上で線が交叉するところが現在位置だ。
 昔は観測誤差があるのが普通だったから、航海士たちはこの六分儀天測を3回以上も実施して、現在位置を絞り込むようにした。

 今日、「B-2」爆撃機や、トライデントSLBMには、電子レンジ大の天測装置が搭載されている。これとINSが組み合わされる。

 オハイオ州にあるボーイング社の誘導修正センターでは、数日おきに、北極星の見え方の最新データを更新している。

 米海軍には「自動天測航法システム」があり、六分儀操作は自動化されている。

 しかし米特殊部隊の隊員は、昔ながらの六分儀の操作方法に習熟しなければならない。ロシアや中共が相手の場合、GPSが全く狂わされてしまう戦場が待ち受けているからだ。

 最もうまくいった場合、天測だけで誤差数mで自己座標を承知できるという。

 新しいシステムは、星の位置を見定めるのに、可視光波長ではなくて、赤外線波長を用いている。こうすることにより、昼間でも星を頼りにできるのだ。敵は宇宙の星を消してしまったり、星の位置をごまかすことなどできない。天測に関しては、スプーフィングは、あり得ないのだ。

 日中の空は太陽から来る青色系の強力な可視光線が大気で散乱しているため、肉眼だと、星の光はかき消され、地上にいては、まるで星は見えない。しかし、もし青色系をフィルターで除去したなら、たちまち、昼間でも星座がありありと見えるのである。

 20年前は赤外線センサーの値段が馬鹿高かった。今は値下がりしている。そして感光素子ピクセルの密度はどんどん増している。

 フェイズド・オプティカル・レンズというものができている。焦点のあるレンズではない。微少なメタ物質のアンテナが光を捉えてくれる。そのアンテナがおびただしく、整然と密集した行列を形成しているのだ。
 それら多数の素子列から得られた信号を統合的にコンピュータ処理することによって、素子群がレンズのように機能してくれるのである。

 水平線を赤外線で自動検知する回路をつくるのはチャレンジングであった。かげろうが立ったりするからだ。しかし克服されつつある。