五輪期間中は「ジェット気流予報」を充実させるべきである。というのはこれが熱波気団の滞留と関係があるので。

 Minnie Chan 記者による記事「Changing Taiwan ocean conditions could affect PLA’s submarines」。
   中共の研究者が「南シナ海の波」という匿名軍事分析ブログに寄稿しているところによると、台湾東沖を流れる黒潮が以前よりコースが変わっているので、台湾侵攻作戦は影響を受けるという。

 もともと台湾の東海岸は崖地である上、海軍の基地も多く、普通の上陸作戦は難しい。

 黒潮はルソン島沖で発生して日本列島をかすめている。ちょうど大西洋のメキシコ湾流(ガルフストリーム)のようなもの。

 この投稿者によると、沖縄近くの大陸棚で火山活動が増えており、このために台湾東沖の海水温が上昇。それが黒潮の挙動を変えているという。

 具体的には、主流に逆らう渦が生じている。

 このため中共軍の潜水艦が台湾本島へ向かうのは容易になるが、シナ大陸の海岸まで戻ろうとするときは潮流にさからうことになり、苦労するだろうという。

 シンガポールの研究者、コリン・コーによると、中共海軍は10年以上、その潜水艦作戦に役立てるために、黒潮を調査し続けているという。

 台湾の海軍士官学校は南西海岸の高雄にある。
 台湾北東海岸の蘇澳には、第168艦隊の基地がある。ノックス級の対潜フリゲートが所属し、毎年そこで演習している。

 台湾海峡は浅い。しかし台湾東沖は水深1000mである。

 台湾海軍の重要基地は1970年代から、東海岸へ移された。西海岸では攻撃されやすいというので。

 同じ理由で台東県の「Chi Hang」基地内に空軍の総司令部が置かれた。格納庫は山地のトンネルに直結している。

 マカオ居住のアナリスト氏によると、米軍には台湾海峡の中間部で中共海軍を全滅させる能力があるので、中共は台湾西海岸への上陸は諦め、094A型SSN、075型強襲揚陸艦、055型駆逐艦の組み合わせで、東海岸に上陸できるぞと、宣伝するつもりらしい。毎年台湾東沖で示威的な演習をすることにより。
 大型の強襲揚陸艦はそもそも台湾の西海岸沖では水深が浅すぎて、運用が不自由である。東海岸に廻りこまないと威力を発揮できないのだ。

 次。
 Sam Carana 記者による2021-6-28記事「Heatwaves and the danger of the Arctic Ocean heating up」。
    地球が温暖化したのに伴い、ジェット気流のルートも影響を受けている。
 カナダなど高緯度地域に熱波が襲来するようになった原因である。

 ジェットストリームの強いところは風速273km/時にもなる。

 気温48度の空気の塊が、5日間以上も、高緯度の同じ地域の上空にとどまったりする。これはジェット気流の蛇行が、気団の移動をブロックするためだ。

 北極圏の気温が上がると、赤道と北極のあいだの気温差が縮まる。それにより、ジェット気流は、より蛇行が著しくなる。

 地球温暖化は北極圏に最も影響を与える。というのはアルベド(白い地表が太陽熱を跳ね返す)の減少は加速度的変化だからだ。溶けた水は、氷と違って太陽熱を吸収する。それが氷結面に穴やクレバスをつくり、そこから大きな氷塊が分離し、さらに溶けた水の面積が増える。するとますます北極圏の気温は上がり、ジェット気流は蛇行し、熱波が高緯度に滞留しがちとなる。

 北極海に注いでいる、ロシアのレナ河。2021-6-23に、表面水温22.3度(摂氏でまちがいなし)を記録した。

 北極海に浮かぶ分厚い氷は、北極海の海水の垂直対流を邪魔してきた。もしこの氷が薄っぺらくなると、深海部まで垂直対流が助長され、それによって、従来海底にとどまっていた水和物からメタンガスが飛び出してくるようになる。そのメタンガスは、強力な温室効果ガスである。

 ※げんざい北海道が涼しいのは、たまたまジェット気流の蛇行の影響が及んでいないからにすぎないのだろう。