「脱炭素」を本気で実行するなら、もはや「自転車化」しか、ありませんぜ。

 Tom Bell 記者による2021-7-28記事「5 tech talking points from the Olympic cross-country races」。
    伊豆MTBコースで、男女のマウンテンバイクレースが終わった。

 最新のMTB機材は、サスペンションが普及。今回の五輪MTBレースでは、ほとんどの選手が、フルサスペンション、もしくは、すくなくともリアにはサスがある自転車で参加していた。

 このトレンドは男子で先行し、女子選手もそれに倣いつつある。

 たとえば、ウクライナのヤナ・ベロモイナ選手は、2016リオ五輪と、東京大会のテストイベントでは、米国製のイーグル・ハードテイルの自転車で参加。しかし今回の本番では、フルサスペンションに切り替えてきた。

 男子で優勝したピドコック選手は、サスの沈み巾が100ミリある「BMC フォーストローク」に乗車。フルサス仕様である。

 女子で優勝したヨランダ・ネフ選手は、カスタム塗装した「トレック・サーパーキャリバー」を使った。このメーカによると、「構造サスペンション」により、60ミリの沈み込みがあるという。フルサスとハードテイルの中間的なもの。

 前回優勝のニノ・シュルター選手は、メーカーのスコット社がスポンサーについている。今回は新設計の「2022 スコット・スパーク」に乗った。フレーム内に隠れているが、リアは100ミリ、沈み込む。

 次の目だった新機軸は「ドロッパー・(シート)ポスト」/「ドロップ」だ。これは、目の前の地面が急坂かそうでないかによって、選手は自転車を降りることなく、即時に座面の高さを随意に変更できるメカである。ハンドルにあるボタンを左手親指で押すと体重によりサドルは思い切り沈み込む。次にハンドルのボタンを押せば、スプリングにより、サドルは高い位置に戻ってくれる。

 2016年リオ五輪のMTB競技では、こんなメカを搭載した自転車は未だ見られなかった。

 コース途中の大ドロップ難所や、「ロック・ガーデン」区間に、こいつが重宝する。
 草地で滑りやすい平地で高速急カーブをしなければならないときも、座面ドロップによって重心を最低にすれば転倒しない。

 ネフ選手の自転車のドロップ制御は、ワイヤレスの電気管制。「ロックショックス・リヴァーブ AXS」という製品を組み込んである。

 マテュー・ファン・ダー・ポール選手は、このドロッパー・ポストを拒んでいる稀有な選手だ。
   ※だから散り桜でひとりだけ自爆したのか。とすれば、自分の選択の愚を認めるのは、厭なことだろうな……。

 今回は、各選手とも、大きなスプロケット・ギヤと、目の詰まったチェーン・リングの組み合わせを選んだ。
 伊豆のコースは、距離的には短いが、急坂に満ちている。となれば、大きなギヤ・リングを選択するのが当然だ。

 ピドコック選手は、ドライブ・トレインに「シマノ XTR M9100」を選んだ。銀メダルのマティアス・フリュキガー選手も同様。
 ネフ選手はSRAM社の「イーグルXX1」である。

 各選手は、チェーンの目も、普通より細かいものにしていた。ローギヤを重視するなら、それが正解である。
 MTBはふつう12段変速だからチェーンが外れる危険もつきまとう。その対策として、特殊なパターンのチェーンが工夫されてはいるのだが、最新の技術をもってしても、バンピーなテラインでチェーン脱落を100%防止することはできない。今回、女子のロアナ・ルコント選手(仏)の自転車でそれが起こり、彼女は6位に甘んじた。

 今回のクロカン自転車レース、男子のときは地面が乾燥して土埃がすごかった。が、次の女子のときは、雨後であったので、俄然、泥だらけで滑りやすいコンディションに……。

 そこで何人かの女子選手は、自転車の中心フレームのダウンチューブ下面に、特殊な「泥落としアタッチメント」を貼り付けていた。
 これは、表面が黒いダクトテープで、それに波状の蛇腹皺を寄せて、ドミノ板が荒く並んだような形状をつくっただけの簡単な工夫ながら、すこぶる有効。
 これによって、前輪が跳ね上げた泥がフレームに当たっても、付着・堆積することはなく、すぐ剥がれ落ちてくれるのである。

 この工夫は、前回のワールドカップでも、試していたチームがあった。

 タイヤ選択も大事だ。空気圧、ケーシング、巾、溝パターンが、レースの成果を著しく左右する。
 これはレース当日の路面状況に合わせなくてはならない。

 女子レースのときはダート路面だから、スリップを防止できるスパイキーなトレッド選択がベターだった。
 ただし、そうすると「転がり抵抗」は増えてしまう。痛し痒し。

 岩でビヨンビヨン跳ねるようなコースでは、タイヤの空気圧は少し高めにしとかないと、まずいだろう。

  ※この記事のような解説が本番実況ではまったく聞かれることはなかった。いかに日本で自転車文化が成熟とは程遠いかを痛感するのである。