低速だが長射程の対艦巡航ミサイルの外形だけをステルス化し、且つすべてのパーツをコスト削減して、有事に惜しみなく発射できるようにする「改善」研究には、依然、大きな期待がかけられる筈。

 Tara Copp 記者による2021-8-9記事「Hypersonic Missile Defense May Depend on Low Earth Orbit Satellites」。
 火曜日に「アンタレス」ロケットで軌道投入されるミサイル防衛庁の実験衛星。ノースロップグラマン社製の「PIRPL」は、低軌道周回する衛星から赤外線センサーでハイパーソニック弾を早期警戒できるかどうかを試す。

 低軌道といっても地表から1000kmである。これがどうして良いのかというと、地球背景の赤外線ノイズと、見張るべきハイパーソニック弾が発する赤外線信号を、区別しやすくなるのである。
もし高度35000kmの静止軌道から地球表面を見張ることにしたら、ノイズが多すぎ、且つ、標的の赤外線信号は微かすぎて、見張りなど不可能なのだ。

 滑空式のハイパーソニック弾の場合、コースのほとんどは、派手なロケット火炎ではなく、大気との摩擦熱の赤外線しか輻射してくれない。それは比較的に「明るい」ものではない。

 複数のLEO周回衛星で得た情報をどこかでまとめて、ノイズ除去処理をしなくては、マトは絞れない。したがってこの赤外線センサー衛星群だけでは仕事は完結できない。

 赤外線の中でも、短波長と中波長のイメージ・データを集める。フィルターにより、高速で移動しているイメージだけを抜き出す。

 ※これに対してわが防衛省が研究しようとしているのは、大気圏から宇宙を「見上げる」方式の監視か。それなら背景ノイズが比較的に少ないのでフィルター処理しやすいのかもしれない。ところでそのプラットフォームの無人機だが、将来はこんなスタイルになるのではないかと思う。アスペクト比が無限大ともいえる、横に長~い直線翼だけが飛翔する、全翼機。それが成層圏でゆっくりと定点旋回を続ける。センサーは、旋回軸側の翼端に搭載される。

 次。
 Lawrence Chung 記者による2021-8-10記事「Taiwan scraps US$1.1 billion mini missile assault boat project」。
   台湾海軍は、米ドルにして11億ドルかける予定であった、小型ミサイル艇隊(60隻)の建造計画を取りやめた。その予算は他の装備にまわす。

 新型ミサイル艇は、実物大模型が昨年できている。だが、悪天に弱く、プラットフォームとして安定感もないと批評されていた。

 どのくらい小型にする気であったか。なんと1隻が50トン弱。敵のレーダーには、漁船としか映らない。じっさい、有事には台湾西岸の無数の漁港、河の入り江などを、隠れ場所とする計画であった。

 その艇体に、国産の艦対艦ミサイルを2発、載せる。士官は2~3名だ。

 また、その50トン艇とは別に、『沱江』級と称する野心的な沿岸コルヴェットの量産計画がある。「シナ空母キラー」と位置づけているもので、こちらは完全なステルス設計。

 ただし、一専門家いわく。対艦ミサイルが当たるかどうかは、プラットフォームの安定性はじつは関係がなくて、敵艦を捜索探知識別してその未来位置も特定できるレーダーがこっちにあるのかどうかが、決める話。そのレーダー情報を得られるなら、発射するプラットフォームは何でもよい。波でグラグラと揺れてしまうような小舟から発射したって可。しかしそういうレーダー・システムが使えないなら、どんな巨大なプラットフォームにしたところで、投資は無駄。

 トランプ政権時代末期の2019-10に、台湾に向け、陸上のトラックから発射ができる射程の長い「ハープーン」を400発も売ってくれることが決まった。これで、「沿岸ミサイル艇」の意味はなくなってしまった。