なんでもサージ(大増派)で解決した気になっていたペトレイアスが、今になってもなおサージしろ、CASしろと言い続けるのはすごい。生きる『失敗の本質』先生じゃないか。

 Caitlin McFall 記者による記事「Former CIA Director David Petraeus calls Afghanistan situation ‘catastrophic’」。
  かつてイラクとアフガニスタン治安戦略を仕切って歴代大統領たちの「足抜き」の意向に真っ向からさからい、幾度も大増派して事態を救った気でいたペトレイアス元大将が、金曜日にラジオ局のインタビューに答えた。※いや~、すっかりご老人ですね。わたしも人のことは言えないが……。

 いわく。これはたいへんな国家安全保障上の後退だ。ただちにドーンと対策しなかったら、もっと悪い状況に突き落とされる。
 ※こいつは百年一日なのか?

 大将いわく。アフガニスタン政府軍の士気は数ヶ月前に崩壊した。これまでのような立体的な手厚い支援をNATO軍からはもう受けられないと知ったので。
 ※マクリスタルは空爆反対論者だった。対するペトレイアスはCAS主義者。

 過去数週間で、アフガンに421ある行政区のうち240がタリバンの支配下に入った。

 大将いわく。シリアが内戦でムチャクチャになったことによってそこから世界中へ難民とテロリストが拡散した。ほとんど地政学的なチェルノブイリだった。
 その第二弾が、こんどはアフガンから波及しそうだ。

 大将いわく。まだ崩壊点は過ぎてはいない。いまから大規模な梃入れをすれば敵の攻勢を押しとどめられる。

 ※8.15になると参照される『失敗の本質』。どの1章でも読み出せばすぐに「なんだよこのレベルかよ」という慨嘆が出てきます。たとえばガ島の拙戦は兵力の逐次投入が悪い、と最初に世間に教えたのは田中隆吉なのですが、そのことは同書では華麗にスルー。そこはともかく、サージ論は結果論・現実無視の机上理想論ではないかという自問がなぜ湧かない? 向こうだって最初は逐次投入なんですよ。互いに本土からいちばん遠い、補給が細るところで探りあいをしていたんだからとうぜんそうなりましょう? そこを考えさせる深みが『失敗の本質』には無かったのです。ではそんなかいなで式で非常に浅くまとめた同書が一般人にうけて大ベストセラーとなった現象をどう評論するかですが、これは、わからない。わからないことは評論できない。しかしマスコミ出版界としてはこの現象の分析を怠るのは損でしょう。たとえば池上彰氏はテレビの解説に『失敗の本質』式《割り切り》を持ち込むことで大成功したと思う。