現代映画の最後の矛盾点は、エキストラの体脂肪率。

 ヨナップニュースが例によって、三代目が今年はじめの体重140kgから、げんざい20kg減量することに成功したなどという与太話を垂れ流している(身長は170センチだとも伝えている)。
 現代人がそうかんたんに減量ができたら、世話はないはずだ。ちなみに小生、昨日計量したら60kgを切っていた。身長も徐々に縮んでいるから、このぐらいでいいのだろう。

 『長津湖』の宣伝フッテージを見たら、今世紀に入ってからハリウッドで製作されてきた数々の過去史劇に感ずるのと同じ違和感が全開だった。
 すなわち、役者の体脂肪がどいつもこいつも過剰で、少しも「昔の人」らしく見えないのである。エキストラからして血色が良すぎる。誰もが栄養不良で、餓死者がふつうにいた時代だぞ。フラフラしながら戦っていたのだぞ。
 どうしてみんな、それが再現されていないことが「おかしい」とは思えないのか?

 「時代の精神」というものがある。それは苦難の時代には、兵隊エキストラの体脂肪率にあらわれていなければ、ぜったいに伝わりっこない。

 南北戦争当時のガラス板の写真は何千枚もあるのだから、西部モノ映画のオーディションにやってきた役者の体つき・顔つきをちょっと見ただけでも、こいつにはぜんぜん資格がないと即座に判定できるはずなのである。

 「らしい」エキストラが、もはや集まらないのか。だったら、CG役者を起用するしかないよね。あるいは生身の役者をあとからデジタル処理して体脂肪率を減らしてしまうAIプロセッサーが導入されることになるだろう。

 次。
 Tyler Rogoway 記者による2021-10-16記事「China Tested A Fractional Orbital Bombardment System That Uses A Hypersonic Glide Vehicle: Report」。
    8月FOBS実験のブースターに使われたロケットは「長征2C」だった。

 ※「長征二号丙」は旧式液燃の「東風5」ICBMを改造したものである。近年はフェアリング径を4m以上にしているのでHGV用として向いていたのか。「東風5」にはサイロ収納式もあるので、将来は全部をサイロにおさめられるかもしれない。車載式や列車式にはできない。

 空軍長官のフランク・ケンドールが先月、中共のFOBSについて米国納税者に警鐘を鳴らしていた。中共軍が、宇宙から「グローバル・ストライク」する新兵器の開発を大きく前進させ、米国は旧来のICBM迎撃方法では対応ができないだろうと彼は述べていたのである。

 ※FOBSについて英文ウィキに書いてあることを略すと以下の如し。
  ICBMが最高高度12000kmになるのに対し、FOBSは最高150kmにしかならない。このためブースターには強力なものが必要で、且つ、命中精度については最初から諦めるしかないのだが、敵ICBMサイロを狙うのでなければ、FOBSと水爆の組み合わせでも十分である。
 ソ連のFOBSの開発は1960年にスタートしたと考えられる。技師のコロレフの試算では、着弾の2分前でないと米レーダーにはかからないだろう、と。1962にフルシチョフは、もうじきソ連は南極回りで北米を攻撃できるミサイルを持つので、米国の早期警戒レーダーは無効になると演説した。米国のマクナマラ長官は67年11月に、ソ連のFOBSは来年実戦配備されるだろうと言った。
 ソ連FOBSの試射は1965から始まり、生産は1971まで続いた。周回コースから落下コースに変移させるための逆噴射モーターが、開発に苦労したところだった。着弾精度はさいごまで非常に悪かった。1971時点でカザフに18基のFOBSがサイロ配備されている。核弾頭は1972に装填された。ソ連がFOBSで狙う場所は、米空軍がABMを配備する計画を進めていたグランドフォークス空軍基地らしかった。
 1967の米ソ宇宙条約はこう規定する。周回軌道に大量破壊兵器を乗せてはならない、と。FOBSは地球を1周しないので、この埒外であると米政府も看做した。
 しかし1979の「SALT II」条約は、FOBSを明確に禁止した。配備だけでなく、開発もテストも許されないとした。米上院はこの条約を批准しなかったのだが、ソ連はこの精神を遵守して、1982からFOBSを退役させはじめた。1983-2に、18基ぜんぶが退役。1984-5以降、そのサイロや管制施設も破壊した。
 ソ連がFOBSを放棄したのは、同じブースターで運べる水爆の重さが、ICBMの三分の一しかないから。それなら多MIRVの重ICBMを多数配備した方が得である。しかもFOBSはどうやっても命中精度を高めることができず、対ICBM用に使えない。そしてFOBSがターゲットにするつもりであった米本土の大規模ABM基地はけっきょく、建設されなかった。さらにソ連もSLBM+SSBNを発達させたので、北米を奇襲するのにFOBSに頼る必要はなくなったのである。

 ※中共はSSBNが太平洋に出られる可能性がゼロなので、「巨浪」のレンジが伸びたところで、発射海域が渤海湾では、米国の既存の早期警戒システムで早々に探知されてしまう。したがってSLBMによる対米奇襲は望めない。となれば、ソ連とは逆に、FOBSに大いに頼るしかないだろう。それを条約などで縛られたくはないから、ますます、米国との核軍備管理には、応じようとはしないはずだ。