高速道路の高架下を、トラックのシャシ交換基地化したならば、ドライバー不足は解消する。全員が、その日のうちに帰宅ができるので。

 NYTの2021-11-9記事「The Biggest Kink in America’s Supply Chain: Not Enough Truckers」。
   ワシントン州ヴァンクーヴァーに住所があるM氏は、学生ローン5万ドル以上の債務を抱えて、大学を中退。2012年にトラック運転手になった。

 しかしこの稼業は過酷であった。とにかく、自宅に帰れないのだ。連続して数週間も。
 それゆえ、じぶんのための数日先のプライベートな予定が組めない。眼鏡を新調するための検眼を眼科医に予約することもできない。その予約日の前に仕事が入ってしまい、その日にはヴァンクーヴァー市内には居ないからだ。予約をいつもキャンセルするしかない。

 というわけでM氏は今年10月にトラックの仕事を辞めた。58歳で、限界だった。ローンは返し終えている。

 米本土では、もう何年も前から、トラックドライバーが慢性不足である。高齢退職に加えて、この仕事のストレスに耐えられずに転職してしまう若年~中年の運転者が多い。その結果、サプライチェーンが回らない。

 週末だけ買い物する消費者は、そこに商品が無いためパニックになる。港町では、大渋滞混雑。
 全米の物流倉庫が、滞貨であふれかえっている。

 先月、全米トラック輸送協会が、報告書を公表した。現況、不足しているドライバーの数は、8万人だという。そしてこの不足人数は、2030年には2倍になるという。

 このネックが解消されない限りは、バイデン政権が約束したような経済は実現しない。物価は上がる一方となり、経済成長は鈍ってしまう。
 にもかかわらず、バイデン政権には、トラック運転者不足の解決策は、何も無いようだ。

 先月バイデンは、主要港と主要運送業者に対して、24時間休まずに操業するように要請した。だがトラックの運転者不足がネックなのだから、現れているその効果も限定的である。

 ロサンゼルス港とロングビーチ港の港湾運営者いわく。時間を延長しても、やってくるドライバーがいない。だから、無駄であると。

 ロサンゼルス港の場合、7月において、人手さえ足りていれば捌ける荷物の3割が、捌けない状態であると。これはトラック運転者だけでなく、荷物届け先の倉庫においてトラックから荷物を下ろしてくれる作業員も足りてないせいである。さらに、トレーラーを牽引するトラクタートラック(「シャシ」と称される)も、不足なのであるという。

 連邦政府は、3年間の試験措置として、18歳のドライバーにも商用の巨大トラックを運転させてもよいとする規制緩和を試そうとしている。それによって運転者不足が解消されるかどうか、様子を見るのだ。

 現状、ほとんどの州では、21歳未満の者も、商用巨大トラックを運転できる。ところが、連邦法があって、州をまたぐ長距離輸送に関しては、21歳未満のドライバーには、それを認めていなかったのだ。
  ※軍隊の場合はこの制限はない。18歳でも大型軍用トラックを州間で転がせる。

 専門家は指摘する。労働者たちは、たんじゅんに、トラック運転の仕事を避けているのだ。だから規制緩和をしても、当面のネック解決にならぬ。

 バイデンは先月、州兵を、不足する民間長距離トラック運転者として動員しよう、という思いつきを口走った。だがホワイトハウス内で、拒否されているようである。

 連邦自動車運用業安全委員会の人いわく。パンデミックが落ち着いたら、運転免許証の発給プロセスを緩和しないと、トラックドライバーの供給逼迫状態をなくせないと。また、特定の職種に関しては、ドライバーが働ける時間の延長も認める必要があると。

 なぜ若い人はトラック運転者になりたがらないか。
 まず、その業態が「孤独」である。
 次に、多くの若い人が、4年制大学に通学しながらトラックのバイトをしたいと思っている。だが、トラック運送業はしばしば、何日も遠隔地に出っ放しとならねばならないので、大学通学と到底両立しない。

 ※ここに於いて、AM中波ラジオ放送/短波ラジオ放送と、インターネットダウンロード番組だけで完結する「新放送大学」の意義が浮上する。詳しくは次著で。

 トラック運送業会社は、とにかくドライバーがすぐ辞めてしまうので困っている。会社によっては、9割のドライバーが、常に「新人」というありさま。

 2020年の米国のトラック運転者の年収は、中間値が、4万7130ドルであった。これは2019年よりも21%高い。会社が、人を集めようと、給与を上げているのである。

 船も、トラックも、鉄道も、輸送コストが上がり続けている。これは必ず、物価に反映する。

 オマハ市で9500人のドライバーを働かせている大手運送会社の社長氏いわく。パンデミック前よりも、輸送コストは15%上がっている、と。賃金も、装備品コストも、上がっているので。

 この会社では、パンデミック後の需要に応えるために700人のドライバーを追加で雇いたいが、集まらなさ加減が、過去30年で最もタイトであるという。この会社は、大型免許をとらせてやるための教習コースまで持っているのだが。

 オクラホマのある運送会社では、ドライバーに平均して7万ドルの年俸を支払っている。しかし人が集まらない。誰も、自宅からきょくたんに離れた場所まで走りたくはないのだ。

 多くのドライバーは、走行距離に応じて報酬を受ける。ところが、「搭載」と「卸下」の作業時間が、このパンデミック中に、やたらに間延びするようになった。その待ち時間は、給料にならないわけである。これも、ドライバーという職種が嫌われている理由だ。

 ※察するに米国では、ドライバーが荷物の積み下ろし作業をタダ働きで手伝わされるという日本式の悪慣行だけは無いようだ。もしあれば、この記事に書かれているはずだから。ユニオンの手柄?

 慣行として、米国のトラックドライバーは、待たされる時間のうちの最初の2時間については、何の賃金補償も得られないものなのだという。

 長距離トラック運転者を長い間やっていると、60歳前後でさまざまな職業病を発症する。首や腰の神経。不規則な睡眠が原因の不具合。
 ある64歳のドライバーは、指先が痺れるようになり、医者から、もう50ポンド以上の物を持ち上げてはダメだと言われて、職を辞した。

 もし、年収8万5000ドルを得ているベテランドライバーが転職しようと思っても、そんなに稼げる業種などありはしない。だから高齢ドライバーは、比較的に、定着する。

 業界リーダーは言う。もっと女と黒人を雇えよ、と。
 2019統計によると、婦人トラックドライバーは7%である。また、黒人ドライバーは40%である。

 18歳で働きたいと思っている人材は、21歳まで待つわけがない。大型トラック運転者になる前に、レストランか建設業に就職してしまう。

 ※一足飛びのロボット化は無理である以上、半日で往復ができない長距離の輸送に関して「荷台のリレー」という考え方を普及させるしか、改善の見込みは立たないだろう。すなわち、トレーラートラックの披牽引トレーラー部分を、高速インター脇の「中間交換基地」で次々と、別なドライバーの牽引トラクタートラックに、引き継いで行く。これなら、コンテナに限らず、長大重量荷物でも、リレーして行ける。最終届け先の「半日内往復圏内」まで到達したところで、必要に応じて、さらに小口に分ける。そのハブ基地は、物流会社で整備するしかない。高速高架道の下のスペースを、もっと活用できるはずである。

 次。
 Kristin Huang 記者による2021-11-13記事「US nuclear sub ‘may have hit an oil rig’ in South China Sea」。
    かつて中共の潜水艦学校で教官をしていた人物いわく。南シナ海には、残骸となって放置されている「石油掘削リグ」の構造物が、水深100mくらいのところまで、いたるところに点在する。
 『コネチカット』はそのリグ鉄骨の突端にぶつかったのではないか、と。

 ただし、他の可能性ももちろんある。たとえば、捨てられている巨大な魚網も、潜水艦のソナーにとっての損傷原因たり得る。

 ※SSNの鼻先に、光ファイバーで有線連絡したUUVを数十m先行させて、磁探によって斜め下を常に探らせるぐらいしか、方法は無いのかも……?

 次。
 WP紙の2021-11-13記事「3G shutdowns could leave most vulnerable without a connection」。
   米国では多くのデジタル無線は4G化している。さらに5G化しつつあるのだが、その周波数を確保するために3Gをシャットダウンさせると、まずい。
 というのも、いまだに3Gが命綱になっている人々が、たくさんいるのである。特に低所得の弱者層。

 いま、3Gがサクッと切り捨てられると、これら老人と貧民の生命の安全は、脅かされるであろう。

 たとえば、その人たちは、「911」コール(警察と消防・救急要請)が、できなくなるかもしれない。

 古いデータしか得られないのだが、2018年において全米で20%の人が、3Gが頼みであった。
 そして今、「5Gのための周波数帯が足りない」という理由で、どんどん3Gは停波させられている。

 さらにここへ来て、チップ(集積回路)不足も、3Gのスムースな機種更新を難しくしつつある。

 AT&T社は、もうじゅうぶんに3年も前から周知勧告したとして、金曜日に、3Gネットワークを終わらせる。すべてを5Gにして行くのだ。

 また、Tモバイル社は2022-3-31に、ヴェリゾン社は2022-12-31に、それぞれ3Gネットワークを終わらせるとしている。

 ネックレス型のメディカルアラート装置というのがある。高齢病人と、病院を、3Gで常時つないでいるものだ。このシステムを3Gから5Gに切り換えるためには、病院や業者の誰かに自宅に来てもらわなくてはならない。あらためてのインストール作業が必要なのだ。しかし老人はそういう面倒を嫌うものである。新コロをうつされる危険がある今は、特に、他人に自宅に来てもらいたくない理由がある。

 また、プロバイダーの末端業者たちだって、病人のいる自宅になど、敢えて入りたがらない。そのため、5Gのインストールが、高齢病人の自宅に関しては、いつまでもできない。

 かつて4Gを普及させるときにも、2Gのシャットダウンという過渡期問題があった。
 しかし3G→5Gの切り替えは、当時のように簡単には済まされない。旧型の普及の次元が違っているのだ。
 ※わたしは予言する。日本の古いFaxは、必ず将来の非常事態時に、わたしたちの役に立つ。通信の冗長性を捨ててはならない。震災のとき、有線公衆電話がどれほど役に立ったか、もう忘れたのか? 旧来通信手段の早期廃棄を勧める者は、イコール、反日転覆工作者であろう。

 次。
 Scotty Hendricks 記者による2021-11-11記事「What were the most important inventions in American history?」。
    後から得られている特許が、先行して得られている特許に言及している頻度から、米国の過去200年において最も影響力が大きかった発明が何かが、判明した。それは、ニコラ・テスラの、電磁コイル・モーター(交流モーター)であった。

 次が、イライアス・ハウが考えた、ソーイングマシン(ミシン)。
 この特許にもとづいて、その後の10年間に、16の新考案が生まれている。

 フィルムを使う映画(動画)撮影カメラも、重要発明だった。
 ライト兄弟の飛行機械、エンリコ・フェルミの「原子炉」、ロベリー・ノイスのマイクロチップ、それから、ナイロンなどが、それに続いている。