バッド・ゴンズイ

 Christian Molinari 記者による2021-12-23記事「Argentina’s navy keeping watch on hundreds of Chinese vessels」。
   中共の延縄漁船や底引き網漁船、あわせて300隻以上が、マゼラン海峡を通って大西洋にやってきた。アルゼンチン海軍は軍艦を派遣して厳重に監視中である。

 EEZ内の中共漁船の違法操業のせいで、アルゼンチンは1年に255万ドルもの漁業被害を蒙っている。
 そこでフランスから多目的警備艇を輸入したりして、対策を強化中。

 ※1隻だけなら簡単に取り締まられてしまうが、300隻なら取り締まれめえ、というゴンズイ戦略。毒魚であるだけではダメで、さらに集団になることで、毒性をハッキリと認知してもらう。

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 Jon Brown 記者による2021-12-26記事「U.S. Navy warship remains in port after COVID-19 breaks out among ‘100% immunized’ crew」。
   米海軍のLCTである『ミルウォーキー』内でオミクロン発生。全乗員が新コロワクチンを接種しており、陽性者はつまみ出されていたにもかかわらず。
 しょうがないので同艦はグァンタナモ海軍基地に逼塞中。

 ※キューバの港を米国が半永久に租借しているのはひでえ話じゃないかと東洋人は思うかもしれないがさにあらず。もともとキューバ全島をスペインから切り離して独立させてやったのは米国政府。ついでに米国は島まるごと併呑してしまってもよかったのだが、敢えてそれはしないでおいた。つまりは島民たちに大恩恵を与えたつもりでいるわけなので、軍港の租借くらいで文句言うんじゃねえ、というのが米国人の本音だ。パナマ地峡を欧州の大国にはぜったいに支配させないというのが合衆国政府の19世紀からの大方針で、キューバはそのパナマ地峡の米国管理と常に一体のものとして考えられている。

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 ストラテジーペイジの2021-12-27記事。
   ジェネラル・アトミクス社の最新型の無人攻撃機は「Mojave」という。これはどこから注文されたものでもなくて、会社が自腹で完成して提案している新モデルだ。

 ベース機体は、米陸軍に納入しているグレイイーグル(MQ-1C)。
 グレイイーグルのエンジンが180馬力なのに比し、「Mojave」は450馬力もある。
 特に改善したのが、不整地で短距離離陸できるように考えていること。

 これは米軍の近未来の「航空基地」運用を念頭していると考えられる。すなわち、大きな航空基地に蝟集してしまってはこれからはただ敵のSSMの好餌となるだけなので、これからは、米軍の固定翼航空部隊は、C-130で陸上のレーダー管制チームごと前線近くの平坦な生地に進駐し、そこにミニ航空基地を急設して、そこからすぐに固定翼機を飛ばせるようにする。プレデター/リーパー級の無人機も、それについて来られなくては困るのだ。

 豪州はこのたび韓国設計の155ミリ自走砲を調達することに決めた。独自の小改良を施して「ハンツマンAS9」という名前で、国内組み立てする。まずは30両。それと、砲弾供給随伴車両の「AS10」を15両。こちらも豪州国内の工場で最終組み立てする。最初の製品は2024年に工場から出てくるであろう。

 「AS9」は、ノルウェー版の「K9 VIDAR」に準拠する。ノルウェーはハンワの設計にNATO仕様のサブシステムを付加した。ノルウェーからはVIDARについての助言が豪州へ与えられる。

 「K9」は韓国軍が1999年から使っていて、げんざい、累積の総受注数は2400両。

 トルコは「K9」をベースに「T-155」を国産して調達している。ポーランドも同様にして「AHS Krab」を調達中だ。

 K9には主エンジンの他に、小型の補助動力エンジンAPUが備わっていて、主エンジンを停止していても、問題なく砲撃を続行できる。これは省エネで静かでとても便利。

 砲弾は、ロケットアシスト弾を使えば、最大56kg飛ばすことが可能。

 古い米国製のM109は、自重28トンと軽量だったが、K9は46トンの重さにしてある。自走砲を重くするのは近年の各国の流行。
 K9の乗員定数は5人。2022年以降、さらに自動化して3人に減らす計画あり。なお、砲撃だけなら、リモコンでも可能である。

 主エンジンは1000馬力。内臓燃料だけで360km走れる。

 ※買われている理由は、工場移転にあるのだということがわかる。買ってくれる国に工場を建てる。そこまでしないと武器は売れなくなっている。粗利はずいぶん薄そうだ。

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 Matra Army News の2021-12-27記事「From Civil Container Truck, Iran Successfully Launches Kamikaze Drone Salvo」。
   イランは、一見すると貨物船やトラック荷台に載せた商業コンテナにしかみえない白塗装のキャニスターの中から、5機の「ハーピィ」もどきのロイタリング・ミュニションを放出できる奇襲システムを作ったようだ。

 この自爆型ドローンは「シャデド136」という。すでにフーシが対サウジでこのドローンを投入済みだとも。
 「シャデド136」の情報はほとんどないが、外見写真から判定して「ハーピィ」のコピーであることは瞭然としている。

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 Warren Denholm 記者による2021-12-21記事「How I Restored a Legendary Wooden WWII Fighter Plane」。
  WWII中のRAFの名機、デハビランド・モスキート。
 航空戦争時代の国家総動員で、ピアノ工場や家具工場のラインをいかにして戦力化できるかを考えたら「木製飛行機」という結論になった。

 これを数千時間かけてレストアした人の苦労話。
 リベットと鈑金の他の飛行機とちがう。材木を、接着剤とネジでまとめていくのだ。機体重量の4割が、木材と接着剤である。そしてオリジナルの接着剤は、何年も品質が保たれるようなものではなかった。それで、現存するものがあっても、それはボロボロ。戦争中は、数ヶ月、飛んでくれればいいという割り切り方をしていたのだ。

 特に工作が複雑になるのが、胴体。主翼はむしろ単純な工作で済む。

 モスキートの胴体は三層構造のモノコックで、しかも、全体が葉巻型の曲線構成なのだ。おそろしく手間隙をかけねばならぬ。

 内側層と表皮層は、白樺の合板で、厚さ16分の1インチ。
 この長材木は、スカーフジョイントによって接着剤で継ぎ足されている。すなわち、直角断面の長さの15倍に接着面が伸びるように斜めにカットし、さらに押し圧を受けても接合面がズレて断層剥離せぬようにミニ段差も付け加えてズレをストップする細工技法だ。

 それでもさすがに、モスキートは東南アジアでは大変だった。暑熱と水気・湿気で接着が崩れるので。
 しかし戦争中の軍用機は、製造して数ヶ月、もってくれれば、目的は達成された。

 平時にレストアするなら、海洋工作物に用いられるエポキシ樹脂を接着剤にしないといけない。

 胴体の中間層は、半インチ厚のバルサ材(およびトウヒ材)である。

 このような三重構造の胴体にすることによって、敵弾を受けたときに機体がバラけない。
 「モノコック」構造ゆえ、外殻が全応力を受け止めねばならない。ただし、胴体内部にはバルクヘッドが7枚ある。

 主翼の桁材は胡桃とトネリコ。両端へ行くほど細くする。
 翼の表皮は、白樺合板。これがエンジンと車輪と燃料槽の荷重を支え、7トンの機体を空に浮かせるのだから、すごいものだ。

 さいごに表面をラッカーで仕上げて、防水にする。



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