いや~、樺太からパイプラインなんてつなげてなくて、本当に良かったですね —という話。

 Conor Bernstein 記者による2022-1-31記事「Europe’s Self-Made Energy Crisis」。
    石炭火発と原発を終了させることによってヨーロッパは、2014年にロシアがクリミアを侵略する前よりももっとロシアにエネルギー(天然ガス)を依存する道をみずから選んだ。地政学的な愚行を一貫して推進しているのである。この対露依存病は今後さらに昂進し、愚行は終わらない。

 IEA統計によれば、いまや欧州の電力卸価格は、2015~2020の平均価格より、4倍も高くなっている。

 欧州人が、家庭で消費している光熱費は、2年前よりも54%も高くなっている。

 英国における「光熱貧乏」家庭。近年の光熱費高騰により、200万世帯増えて600万世帯に。過去25年で、今日ほどエネルギー貧困家庭が増えたことはない。

 いわゆるリニューアブルエネルギーの欠点。西欧が1年でいちばん寒い季節、そこには太陽光線はなく、風も弱まる。
 しかしドイツは昨年に原発の半分を停止し、今年、残りの半分も運転を止める。

 ドイツでは、11月と12月の発電総量が、昨年同期と比べて16%増えている。なのに原発は止めている。つまり電力は、石炭火発のおかげで、可能になっている。

 スペインは、3年前に石炭火発を1基、引退させたのだが、電力需要に応じ、且つ輸入天然ガスへの依存度を減らすためには、これを再稼動させるしかなくなった。

 次。
 America Hernandez 記者による2022-1-31記事「5 questions for the EU if Russia turns off the gas」。

  ロシアは外貨が必要なのでロシアの側から天然ガス送出を全量カットすることは考えにくいのだが、バイデンの制裁によってSWIFTから締め出されるとロシアのガスプロム社が外国からガス代金を受け取れなくなるので、事実上、禁輸状態が実現する。

 ウクライナ国内のパイプラインが閉じられても、ドイツへガスを直送している「ノルドストリーム1」海底パイプラインと、「ヤマル」パイプライン(ベラルーシを通る)によって西欧はロシア産のガスを受け取れる。
 またガスプロム社の「テュルクストリーム」パイプラインが、トルコ、ブルガリア、セルビア、ハンガリー、クロロアチアへの天然ガス供給を続けられる。

 LNGは長期貯蔵には向かないが、西欧諸国にはそれなりの貯蔵はある。そのためもし2月にロシアからのガス供給が全量ストップしたとしても、4月末まで貯蔵が涸渇することはない。

 ただし、もしも3月末までの欧州の気候が、例年より著しく寒冷になれば、ガス消費量は増えるので、安心していられなくなる。

 LNGの貯蔵量に余裕があるのはドイツとイタリアである。他のEU諸国がガス飢饉に陥ったときに、この2国は、国内のLNGを分けてやるだろうか? これは全く予測ができない。

 すでに2020年において、天然ガスの「三分の二」以上をロシアに依存している国家としては、フィンランド、ラトヴィア、エストニア、ブルガリア、スロヴァキア、クロアチア、チェコ共和国がある。これら諸国が、最もロシアの脅しに弱いだろう。

 それに続くのが、オーストリー、ギリシャ、ドイツ、イタリア、リトアニア、ポーランド、ハンガリー、スロヴェニアである。これら諸国は、天然ガスの「40%」を、ロシアからの供給に依存している。

 立場が強いのはノルウェーだ。自国のEEZ内で掘削しているガスで100%自給しており、しかも欧州に輸出までしている。

 スウェーデンやデンマークなどは、もしもロシア産のガスを輸入できないという危機がやってきた場合、自国内のガス消費量を7%抑制しないと、この冬は乗り切れない計算である。

 ※スウェーデンは100%水力発電で余裕なのかと思っていたら、ガス依存分もあったのか。

 英国やオランダ等も、ガス輸入努力を最大化しなくてはなるまい。
 ※北海油田とは何だったのか? あれだけ掘削しているのに、オランダのガス自給にも足りないのか?

 オランダはグロニンゲンの海底ガス田で天然ガスを生産しているが、あまり掘削すると地震のリスクがあるといわれており、地元民が反対するので、増産が難しい。ノルウェーとアゼルバイジャンも、短期で急にガス生産量を増やせるものではない。

 ※低地のオランダで地震が起きては、たしかに死活問題だ。

 スペインは、アルジェリアから「マグレブ-欧州」パイプラインによってガスを買い増せる立場にある。ただしこのパイプラインに関してはモロッコとの間に紛擾がある。