最新の ★《続・読書余論》は『四王天延孝回顧録』です。

 雑誌『諸君!』の2009-4月号に、四王天の長女と結婚した山口隆一が1951年に中共で処刑されていたという謎を追った三山喬氏の記事が寄稿されています。四王天の自伝は70歳頃までで終わっているので、その補足になるでしょう。

 《note》 https://note.com/187326mg/  をごらんください。

 次。
 Chris Cruden and Nicholas Krohley 記者による2022-2-22記事「Flunking the New York Times Test: Making Sense of Russian “Covert” Action」。
    NYT紙は2019-10-8に報じている。GRU内の暗殺部隊「29155」部隊による違法作戦の詳細を。
 現地に慣れている元スペツナヅの隊員が、ロシア周縁部諸国に入り込んで、反露スタンスの政治家、ロシアから出国した反モスクワのロシア人である活動家たちを次々に殺しているというものだった。

 じつは国家情報業界では、「裏工作の失敗基準」というものがあり、そのひとつは、《『ニューヨークタイムズ』の1面にとりあげられたら、それは失敗作戦だ》とする。

 この基準ではGRUは失敗したことになろう。記事では29155部隊の所属隊員の個人名や、司令部所在地まで報道されてしまっているのだ。

 だがロシア人はアメリカ人とは同じようには考えない。彼らは、違法暗殺作戦が大手メディアに報じられることで、それを次なる恐怖作戦の梃子として利用できると期待しているのである。

 ほんとうのプロが国家意思をうけて暗殺仕事をするのに、民間ジャーナリズムが何をつかめるというのか。NYTがスッパ抜きと信じた材料は、じつはすべてGRUが意図的にばら撒いたパン屑なのだ。

 違法だろうが何だろうがロシアは殺そうと思った個人は殺してしまえるし、それがバレてもぜんぜん平気だぞという「宣伝」くらい、クレムリンにとって都合が良いストーリーはない。なにより、国内から反対者や裏切り者や対敵投降者が続出するのを抑止できる。次の脅迫はいっそう容易になり、ロシアの対外影響力はますます大きくなるであろう。そうなれば、戦わずして勝利できるのである。


★《続・読書余論》四王天延孝著『四王天延孝回顧録』昭和39年刊