ミャンマーの反政府ゲリラが使っている「爆撃用改造ドローン」とその爆弾について。

 Robert Bociaga 記者による2022-2-26記事「Myanmar’s Drone Wars」。

 過去5ヵ月間〔この記事は今年2月であることに注意。つまり記事の事態は2021-10からだということ〕、ミャンマーの複数の武装反政府グループは、安価な市販のドローンを、戦闘用に活用している。

  ※ミャンマー政府軍の狙撃手によって撃墜されたクォッドコプターの写真あり。

 俺たちは、さいしょは「F11」というシンプルなドローンから使い始めたんだ。あまり遠くまでは飛ばせないものだった――。と語るのは、「KGZ-A(カレンZ世代軍)」のメンバーである。

 KGZ-Aは、多数ある反政府集団のひとつだ。2021-5-26にカヤ州(タイ国境)で結成されたという。
 メンバー構成は、15歳から30歳。テロに反対し、難民に食糧やシェルターを提供するNGOなのだという。

 KGZ-Aは、KNDF(カレン族防衛軍)の下部団体である。他のグループに、対面やオンラインで、ドローンの戦場での使い方を教えてやっている。ドローンばかり扱っているわけではなく、地上兵器も使うという。

 軍閥政府は不法に権力を握り、人民を勝手に殺している。だからそんな軍閥どもを殺すことは我々の欣快とするところなのである――とKGZ-Aの団員は話す。

 サガイン地区でタッマドー(ミャンマー軍)を殺人ドローンで攻撃している、別な反政府グループとしては、ASF(アウンサン軍)もある。

 3日ごとに1機、KGZ-A団は、ドローンの「DJI P4」モデルを改造した「無人爆撃機」を、増やしている。手作り改造なので、急速量産は無理なのだ。

 投下する爆弾にも個性がある。KGZ-A団の爆弾は、外殻が塩ビのパイプで、空力安定フィンが尾部に備わり、頭部にはU字状にベントされた舌状の薄い金属板。これが地面に当たると、屈撓して電池のプラス極に接し、それによって電気雷管に通電する回路が構成されて、炸裂する。かたやASF製の小型爆弾は、外殻構造はほぼ同じだが、電池を用いず、頭部から突き出した五寸釘が押されてプライマーを突くことで発火する、メカニカル着発信管だ。

 投下機となるドローンは、繰り返して使用したいので、あまり低空を飛ばすことはできない。起伏のある地形で樹木にひっかかったらおしまいだし、高度が十分でなければ無線リンクが切れるからだ。ところが、ほどほどの高度を飛ぶということは、ドローンが下から銃撃され得るということでもある。

 ミャンマー国軍は、このドローンからの爆撃を警戒して、部隊を休止させるときは、かならず樹冠が密に頭上をカバーしてくれている密林内を選好している。簡易爆弾は、この木の枝に当たれば、そこで過早に爆発してくれる。

 ミャンマーでは、クーデターで首都を逐われた前政権の集団も、抵抗活動を継続している。たとえば前の「国防大臣」は、今もその肩書きを名乗っているが、実質、ゲリラの幹部なのである。その「MoD」氏いわく。このサイズのドローンは有効ではあるが、ゲームチェンジャーと呼べるほどの威力はない、と。

 これら反政府抵抗集団が申し合わせていることは、無辜住民を巻き添えにしないことだ。
 KGZ-Aの者いわく、爆撃ドローンは住民が密集している場所へは飛ばさない。そのためにも、必ずまず偵察機で下界の様子を見極めてから、爆装ドローンを出撃させているのである、と。

 軍閥政府は以前から中共製の「CH-3A」無人機を少数民族相手に使っているが、さいきん、ロシアから「パンツィールS1」近距離SAMや、対空警戒レーダー、そして「オルラン10E」固定翼無人機を調達した。

 次。
 ベリングキャットによる2022-1-20記事「Myanmar’s Rebels Get Resourceful With Improvised Drones」。
   KGZが「DJIファントム」から手作り爆弾を投下している動画をSNS(フェイスブック)に初投稿したのは、2021-12のことである。
 これがミャンマーで最も早い、ホビー用クォッドコプターをリモコン爆撃機に改造して実戦使用したケースの証拠。

 ただし、爆発の瞬間が映っていない。これは、信管機能がうまくいってないことを示唆する。

 二番手は、アウンサン軍が2022-1-2にSNSに投稿したビデオで、そこには6回もの攻撃シーンが含まれていた。
 こちらは爆発シーンあり。※つまり「釘信管」の方が、実用的であったのか?

 ミャンマーで軍のクーデターが起きたのは2021-2である。この事態がなければ、反政府ゲリラも、ドローンの改造など思いつかなかった。

 ちなみにISが2016年にクォッドコプターから投下した爆弾は、40ミリ擲弾〔米軍規格か?〕の改造品だった。
 また、PKKがドローン投下爆弾として使っているのは、30ミリ擲弾〔ソ連規格〕である。

 ISが投下機に選んだのも、「DJI ファントム」であった。
 ISは2017年にはドローンを使った爆撃を数百回、実行した。

  ※1.5kgくらいある対戦車手榴弾を、それも複数個、投下できる、業務用のマルチコプターを使えるのが、今のウクライナ軍だ。だがその運用法はISによって予言されていた。また、その動画がゲリラ仲間の戦意を鼓舞し、海外からの声援を集めるという政治的利用法は、ミャンマー・ゲリラが一歩さきがけていた。その宣伝がなければ、世界の暇人は誰も同情はしないのである。