またしてもバンダルの所業。世界の植物の遺伝子が詰まった種をおびただしく収蔵していたウクライナの農業研究施設を、露兵が意図的に丸焼きにしてしまった。

 Vali Kaleji 記者による2022-5-16記事「Will Russia Complete Iran’s Rasht-Astara Railway?」。
  ※『Eurasia Daily Monitor』という機関誌の Volume: 19巻 Issue: 71号 寄稿記事である。

 今次ウクライナ戦争は、中共のBRI(ベルト&ロード・イニシアチブ)を破綻させた。計画では、「ニュー・ユーラシアン・ランド・ブリッヂ」は、露→宇→波(もしくはベラルシア)と鉄道でつなぐことで、西欧と支那を接続させる肚だった。その「北国ルート」は不可能になった。

 そこで浮上しているのが「中廊ルート」である。別名TITR=トランス・カスピアン・インターナショナル・トランスポート・ルート。
 このTITRは、ロシア領を避ける。まずカザフスタンからカスピ海へ。そこをフェリーで渡して対岸のアゼルバイジャンへ。そこからまた鉄道で西隣のジョージアへ。ジョージアの黒海の港から、西欧へ荷物が行くのだ。

 もうひとつのルートは、イランとトルコを通す。これは黒海を通航することなく荷物を西欧まで届けられるルートになる。中共からイランまでをどうするかは不確定で、キルギス、トルクメニスタン、ウズベキスタンを次々と縫い通すか、さもなくばアフガニスタン領土を利用することもオプションとして検討ができる。

 もっか、注目されるのが、アゼルバイジャンとイランの間に、鉄道がつながっていないこと。これがつながると、ロシア領から、カスピ海沿岸をぐるりと鉄道で一周するルートができるのである。
 すなわち時計回りに、露→カザフ→トルクメニスタン→イラン→アゼルバイジャン→ロシアと。

 イラン西北の国境の町は「Astara」という。そのアスタラから、カスピ南岸の「Rasht」市までの区間、164kmだけが、鉄道未敷設なのだ。

 アゼルは金持ちなので、この区間の建設資金をイランに融資できる。しかし米国がイランに経済制裁を加えているので、このような銀行間の契約は不可能である。イランに自己資金は無い。だからこの164kmは、いつまでも着工できずにいる。

 イランはアルメニアとも国境を接していて、アルメニアの鉄道とイランの鉄道を結ぶこともできるのだが、アルメニア南部山岳地での鉄道建設が2009年いらい頓挫している。

 アゼルとジョージアは、イラン鉄道との接合を熱望している。それができれば、輸出品を、黒海からではなく、イラン南岸のアラビア海に面したチャーバハール港から、アジア市場に向けて出荷できるようになるからだ。
 アゼルから借金ができないので、イランは、モスクワから建設資金を調達したがっている。

 今次ウクライナ戦争は、イランにとっては都合がよい。ロシアは今後、鉄道で西向きに物資を輸出するのは難しい。だから、これからは、アゼルバイジャン鉄道経由→イラン鉄道経由で、イランの南岸港から物資を(たとえばインドに対して)輸出したくなっているはずだ。だからモスクワは、イランに鉄道建設資金を融資する可能性がある。

 次。
 Andrew Eversden 記者による2022-5-16記事「SOCOM receives first Spike NLOS system integrated on a JLTV」。
   イスラエルのラファエル社が開発した「Spike NLOS」は、対戦車ミサイルとしては最長レンジの32kmも飛翔する化け物兵器。米軍は夙にこれに注目し、すでに「AH-64 アパッチ」から射てるようにしつつあるのだが、このたび、JLTV(HMMWV後継の汎用軽装甲トラック)からも発射できるように、ロッキードマーティン社が作業する。まずはSOCOMが使う。

 「スパイクNLOS」は、飛翔体がパレットの中に入っている。負傷者搬送用の担架をとりつけるレールがすでに備わっているジープ~トラックであれば、車種にかんけいなく、そこに取り付けられるように設計されているのだ。

 あとは、長射程をフルに活かすための、「シチュエーションアウェアネス」用システムとの結合。そこでロックマートの仕事となるわけ。

 ※ロックマートがこのSIR――この略語が米人にはあまり好まれないので最近ではシチュエーションアウェアネスと言い換えているような気がする――の詳細を語らないところから推察して、衛星情報か、さもなくば、戦場ESM情報との半自動結合を目指しているのではないかと思う。敵の戦車などが無線機を送信している気配のあるところへ、とりあえずミサイルを飛ばす。飛ばしたあとで、ミサイル弾頭のTVセンサーを使って、目標を上空から見定める。そんな仕組みにするのではないか? そうでなかったら、秘密にする必要がどこにあろうか?

 次。
 Emma Helfrich 記者による2022-5-17記事「Now There’s A Drum Magazine For Dropping Multiple Bombs From Commercial Drones」。
   先週から奇妙な動画がSNSに出回っている。
 名前が不明のオランダの企業が、商用のクォッドコプターにとりつけることのできる、ドラム弾倉を開発したというデモフィルムである。60ミリくらいの迫撃砲の砲弾を、次々と投下することができる構造のように見える。
 SNSでは、これがウクライナ軍に供給されているともいう。

 ※わたしも検索してみたが、そのようなものを製造しているオランダ企業にヒットしない。すくなくとも英文HPは存在しないようであった。この記者氏もつきとめられなかったようだから、この動画は「謀略フィルム」なのだと思っていいのだろう。ハイネケンのビール瓶自動販売機のように空から爆弾が降ってくるぞ、という脅かしだ。その嵩張るロータリーマガジン機構の重量で、もう1~2発分の迫撃砲弾が余計に運搬可能なのだから、まるで合理性などないだろう。

 ※ところで今次戦争の七不思議のひとつは、ロシア人がずっと前にSNSに投稿していた、「自動小銃に主翼を付けてラジコンで飛ばす、飛行機関銃」をどうして実戦に持ち出さないのかということ。やはり、呼び戻すときに面倒が発生するのだろうね。着陸場近くの味方の兵隊がパニックになるよ。