60粍迫撃砲弾には黄燐弾もまじっているようだ。古い黄燐弾はユーザーが危ないんじゃね?

 Sebastien Roblin 記者による2022-7-11記事「The Secrets of Russia’s Artillery War in Ukraine」。

   ある英国分析者の見立て。東部戦線ではげんざい、露宇の兵員損耗率は互角になっているのではないか。

 砲兵の火力比では3対1でウクライナが劣勢だろう。

 ある報告。露軍が1日2万発発射しているのに対して宇軍は6000発であると。これは砲熕火器のみ。
 ロケット砲およびSSMだと比率はもっと開く。

 BTGの実情もわかってきた。
 従来、BTGは、最優秀の砲兵が中核となり、それを戦車と歩兵で護衛しているのだと見られていた。つまりロシア軍は「地方分権」的な編成思想に転換したのだと。

 ぜんぜんそうではなかった。高性能の加農砲を露軍の師団長/旅団長は手放していない。師団長/旅団長の手元にぜんぶ控置している。

 BTGには、師団長/旅団長が手放しても惜しくない、少数の迫撃砲や、旧式榴弾砲が与えられている。
 結果、BTGはまったく露軍の主たる戦術単位として機能できていない。かんじんの砲兵のリーチが短かすぎて。

 中央集権の伝統が、勝ったのだ。

 ※BTGそのものが、師団主力の「後衛」(滞陣フェイズでは「前衛」)になっちまっているわけか。
 ※これは対砲レーダーの不足とも関係あるだろう。固有の対砲レーダーか、データ通信システムなしで、末端のBTGが優秀SPを抱えていても無駄だから。

 BTGにはデジタル通信機材がないらしい。秘話機能なしの携帯電話で砲撃諸元を得ている。これは軍隊として終わっている。

 総体として露軍の砲兵は、味方の歩兵や戦車をタイムリーに支援することができない。砲兵だけが単独で、味方の戦車や歩兵とはいっさいかかわりなしにバラバラに、じぶんの戦闘を続けているという感じ。

 露軍はウクライナ侵略の初盤では西側流の「偵察-砲撃」連携を実行しているように見えなかった。つまり無人機「オルラン-10」で偵知した目標を砲兵がすぐ叩き、その射弾を「オルラン-10」が観測して修正射を叩き込ませるという連携が。
 しかしだんだんと、それは、できるようになりつつある。戦争しながら進化している。

 このごろでは、ウ軍の移動車両に対する修正射が的確になってきた。これはリアルタイムで「オルラン-10」の観測を反映できていることを意味する。「偵察-砲撃」連携の腕が上がりつつあるのだ。

 ドローン連携が洗練されると、砲兵「バッテリー」を分解することができるようになる。すなわち6門を1単位とする必要はなくなり、1門か2門で仕事ができるようになる。

 露軍は無人機への予算配分を後回しにしてきたツケを払っている。「オルラン-10」にはレーザー・デジグネーターがないため、それを使ってレーザー誘導砲弾の「クラスノポリ」を誘導できないのだ。デジグネーターが付いているのは「オルラン-30」なのだが、それがまったく砲兵部隊に無い。結果、高額な「クラスノポリ」砲弾を、無誘導で発射するという、おそろしく無駄なことをやっている。

 ロシアは、点目標に対しては砲熕砲兵を指向する。多連装ロケット砲は、ウクライナ軍の攻撃前進の動きを止めようとするときに用いている。これは明確に使い分けている。

 対砲兵の砲撃任務は、「トチカ-U」(師団レベルでの最長射程SSM)、「2A65」「2A36」(牽引榴弾砲)、「2S19」「2S5」(自走砲)、「2S7M」(203ミリSP)が担当。これらの火力で、ウクライナ軍のドローン運用部隊を狙ってくることもある。

 ロシア軍の砲兵は、その火器の最大射程の「三分の一」の間合いだけ、最前線から退がったところに放列を布置する。それ以上前進して展開するのは、危険だと考えているのだ。

 迫撃砲の場合は、最前線から1.5km、退がったところに位置している。
 この「最前線」とは、味方地上部隊が最も前進している線。その1.5kmうしろに、迫撃砲が居る。

 旅団砲兵の榴弾砲の場合、最前線(所属旅団歩兵の最前縁)から8km後方に位置する。
 いちばん射程が長い加農砲や長射程ロケット砲は、最前線から10km~15km後方に占位している。

 露軍砲兵の、散開面積は、榴弾砲大隊ならば「100m×300m」の地積。各門の間隔は20m~40mである。

 ロケット砲兵は横一線に散開する。そのさいの車両間隔は最大で150mである。

 露軍は面白いことをやる。破壊された大砲は捨てないで、「ダミー大隊」として使う。そこに敵火を吸収しようというのだ。

 露軍陣地にこっちが砲撃すると、それに対する「撃ち返し」が来るまでの平均時間は、30分である。
 すなわち、こっちが牽引砲兵であっても、悠々と陣地撤収してしまえる。

 ただし、露軍砲兵がドローンで観測していた場合はこうはいかない。その場合、たった3分で撃ち返しが来ることがある。
 この撃ち返しから生き残るためには、西側製の最新の自走砲が必要だ。

 だからウクライナ軍砲兵は、かならずMANPADを帯同して「オルラン-10」の発見と駆逐に励んでいる。英国供与の「スターストリーク」を惜しげもなく使う価値がある。

 露軍は、「トチカ-U」×3発を、たった1両のこっちの「M109 パラディン」(155mm自走榴弾砲)に向けて発射してきたことがある。SSMの「トチカ-U」の精度はあまり高くないので、ほぼ、無駄撃ちになると知れきっているのだが、それでも敢えて発射してきた。

 露軍砲兵はいまだに「ファイア即逃げ」を実践していない。宇軍から撃ち返されるまでは、陣地から動こうとしない。

 ところが、いったん宇軍の砲弾が落下しはじめると、牽引砲であると自走砲であるとに関係無く、露軍砲兵は、砲側の持ち場を捨てて逃げ散ってしまう。

 英国の専門家の助言。露軍の砲兵を黙らせたくば、鉄道を寸断するしかないのである。露軍にはトラックが足りず、砲弾の推進はまったく鉄道に依存しているから。それを止めることで、露軍の物量の優勢は消滅する。すでに兵隊が足りない上に、砲弾も足りなくなるからだ。

 また、旅団の弾薬集積処、師団の弾薬集積所は、量が膨大であり、けっして上空から秘匿することはできない。また、おいそれと移転できるものでもない。そこを叩け。