「市街戦」神話の終わり。

 このごろ露軍が攻めあぐんでいるのは、宇軍がWWI式の本格的な、深くて長い塹壕線を平地に掘るようになったから。

 いままで宇兵は都市部のビル内で楽に抵抗できると甘く考えていた。
 しかし「Z侵略」では戦車砲/ロケット砲/巡航ミサイルでアパートやオフィスビルを遠慮会釈なく遠間からどんどん崩してしまう。市街地内に「特火点」はつくれない。

 かたや原野では、土嚢で囲んだだけの浅い手抜き築城しか準備をしていなければ全員戦死するだけという教訓がナゴルノカラバフで分かっているというのに、とかくアマチュアの兵隊は、厭というほど痛い目に合わないと、教訓を活かせない。ようやくウクライナ兵は、WWI中の兵隊と同じように、塹壕掘りをめんどうくさがってはならないと学習したのである。

 塹壕は、長く、電光状に掘れ。
 できれば瞬時に飛び込める横穴トンネル(退避棲息部)を、いたるところに準備すべし。

 孤立した伏射壕は弱い。ピンポイントでやられる。三人用くらいの独立壕がいちばんあぶない。ドローンから目立つので。

 地対地ミサイル神話、というか宣伝の嘘も、あばかれた。
 都市は、無制限に、敵の地対地ミサイルを吸収してしまえるのである。
 現代の不燃都市は、ピルボックスとしては役に立たないが、「ミサイル吸収材」としては包容力無双だった。

 北鮮が韓国に1000発ばかりSSMを撃ち込んでも、いまのウクライナの前線地方都市のようになるだけ。「火の海」はできない。したがってドレスデン型の大量死も発生しない。住民はじきに戻って来ようとする。
 まして首都クラスのひろがりになると、露軍の全ミサイルを消費しても破壊しつくせない。だからプーチンも着手できない。

 中共が台湾に3000発ばかりSSMを発射しても、同じことだろう。
 まして北鮮ごときが揃えられるオーダーのミサイル数では、お話にならない。

 そういうリアリズムが、「実験データ」とともに世界に呈示されてしまった。
 気化爆弾を使おうが、地雷原爆破薬を使おうが、3000発を3万発に増やそうが、何も変わりはしない。ガレキはそれ以上、燃えない。不燃都市は、ガレキ化してもなお、「ミサイル吸収材」なのである。

 これで(B)MD政策の見直しも進められるだろう。

 つまり初弾が非核であるなら、またターゲットが原発建屋のプールでなかったなら、ミサイル迎撃などする必要はなかった。

 それよりも、すべての都市行政にとり、地下道を通じて安全に住民を郊外まで退避させられる複数のルートの平時からの準備が、人々の生死を分ける政策であった。

 スイスやフィンランドは、これをとっくに実現しているのである。だからロシアも手を出さない。

 住民が随時随意に地下から郊外へ退避できるようになっていれば、そのあとから敵が「核弾頭」を使ったとしても、それが何になる?

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 Maritime-executive の2022-7-27記事「“Narco-Drones”Are Here, and Our Maritime Laws Aren’t Ready」。
  来るべきものが来た。従来、麻薬密輸船は有人の半没艇or潜航艇であった。
 それがロボットに進化している。ついに今月から、密輸グループが、無人UUVを製造するようになった物証がおさえられた。

 スペイン海岸で複数の「量産型」が捕獲されている。
 1隻には200kgを収容できる。

 国際法は、このようなUUVを取り締まるための法令を準備できていない。
 なぜかというと軍事先進国は「無害航行」の権利を利用して無人艇で情報収集しているからだ。その利便を捨てたくないのである。中共は鮫そっくりのUUVを放っている。

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 H.I.Sutton 記者による2022-7-5記事「Elusive Narco Drone Submarines Surface In Spain」。
  新型無人密輸潜航艇は、7-3にスペイン警察が3隻を押収した。2隻は完成品。1隻は建造途中。

 ジブラルタルは、ハシシュの密輸ルートだ。モロッコからやってくる。
 だがスペイン警察によると、これらの新サブは、フランスに向うものだったらしい。となると中味はハシシュではなくコカインだろう。

 押収した場所は、カステラ・デ・ラ・フロンテラ。ジブラルタル湾から12km内陸に入ったところだという。8人が逮捕された。

 この艇全体をヴァンの中に収納して海岸まで運搬できる寸法。
 長大なセイルが立っていることからしてセミサブだ。完全な潜航艇ではない。
 船殻はスチールらしい。
 セイルが海面に出ていないとリモコンにさしつかえるのだろう。

 動力については詳報がない。セイルを通風筒にできるかもしれないがシュノーケル弁がないのでそれらしくない。たぶん電動だ。
 キールの下にスクリューが突き出る。

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 雑報によると、DJIのクォッドコプター「Mavic 3」(2022年2月時点で2200ドルで売られていた)に、米国製のフルオートグレネードランチャー用の40ミリ擲弾「M430A1」の改造爆弾を2個、吊るしているガレージ特装兵器をウクライナ民兵がSNS投稿している。

 この弾薬は「40ミリ×53ミリ」寸法で、内部はHEAT弾構造になっていて、スチールなら76ミリを貫徹できる。炸薬は45グラムの「Comp A5」。弾薬の全重は339グラムだ。

 それに対して「Mavic 3」のペイロードは、約560グラムだと紹介しているサイトがある。

 弾薬のうち薬莢の部分は要らないから、それを除去して、3Dプリンター製の空力安定板に替えることで、1発の重さを280グラムにできれば、2発搭載は可能になるのかもしれない。

 残念ながら「M430A1」の薬莢部分だけの重さ、弾丸だけの重さは、調べがつかぬ。

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 『PolskieRadio』の2022-7-27記事。
 KAIの社長(韓国人)は水曜日に述べた。軽戦闘機「FA-50」の整備拠点(MROハブ)をポーランド国内に置くことができると。直前、ポーランド国防相は48機を購入する契約を結んだ。

 さいしょのバッチは2023年中に届く。これでF-16を補完する。

 このほか、K2戦車を180両発注した。2026年からはポーランド国内でこの戦車を量産する。800両以上。

 またK9自走砲をまず今年中に48両受領して、ポーランドからウクライナへくれてやった自走砲の穴埋めとする。そして2024年以降、600両以上をさらに輸入する。2026以降は、国産する。

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 Defense Express の2022-7-28記事「Drone Fishing Like russians: Troops Attached UAV So It is not Snatched Away by Ukrainian EW systems」。
   最前線のロシア兵は、偵察用の市販クォッドコプターを飛ばす際には、釣りのテグスを結びつけて放つようになった。
 というのは、発進させて高度が30mに達すると、ウクライナ軍による電波妨害が有効になり、高価なドローンが逸走して行方不明になってしまうのだ。そんなとき、釣り糸が結び付けられていれば、それをたぐりよせることによって、すくなくとも機体の回収は可能になるからである。

 ※兵頭が前々から著書中で提言してきた如く、ドローン後進国である日本の陸自は、身の程をわきまえ、最初から「有線テーザー型」のマルチコプターを近距離視察に使うんだと割り切ってしまうことで、先進的な敵からのEWを凌ぎながらシチュエーションアウェアネスの万全を期すことができるはずである。

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 Piotr Butowski 記者による2022-7-28記事「Is Russia Using Its New Advanced Anti-Armor Missile In Ukraine?」。
   7月前半から露軍がSNS投稿している動画。これはサーマルイメージセンサーで平屋の納屋にロックオンして命中する新型の対戦車ミサイル「LMUR」が電送してきたビデオである。
 LMURは2007年くらいから開発が続けられてきた。
 2018年の契約ではLMURのコストは1発1420万ルーブル=22万7000ドルであった。今はどうなのかは不明である。

 最大レンジは14.5km。重さ105kg。弾頭重量25kg。長さ1945ミリ。胴径200ミリ。

 ウクライナでこれを発射しているプラットフォームは、特殊部隊用の「ミル8 MNP-2」だろう。FSB部隊が使う改造ヘリだ。

 ※ウクライナ軍の中には露軍のミサイル残骸を回収し分析する専門チームがいて、たとえば、どのくらい西側製チップに依存しているのかを調べ上げようとしている。

 ※雑報によれば、ポーランドからウクライナへ供給されている偵察用固定翼機「フライアイ」は、機体はすこしもステルスではないが、敵のレーダーにかかりにくい飛び方ができるソフトウェアがあって、飛行コースを最善化することにより、露軍は撃墜できないのだという。