攻撃された火力発電所は石炭火発だった。ミサイルは11発発射され、うち9発は迎撃された。命中弾1発のために炎上、ブラックアウト。

 Sean Spoonts 記者による2022-9-11記事「SITREP: Ukraine Captured A Lt Colonel For Sure, Fight by Night and Pro-Russian Mil Bloggers」。
    ウクライナ軍の反撃前進により、バラクリヤ市の近くで露軍「上級大将」のアンドレイ・シチェヴォイが捕虜になったという動画付きの速報。

 しかしその映像では軍服に「中佐」の階級章がついている。そしてそのビデオの人物の人相は、露軍の西部軍区の司令官である、アレクサンデル・ズラヴリョフ上級大将その人ではないかと。

 捕虜になったときに着ていた制服は「ロスグヴァルディア」部隊の夏服である。この組織はプーチンの私設ボディガードで、陸軍やFSBがプーチンを排除/逮捕しようとしたら、それに抵抗するのが仕事だ。

 いぶかしいのは、なぜ中佐の軍服など着ていたのか? 歩哨線を難なく通過したいと思ったら、「ドンバスで下士官・兵として強制徴募された住民のオッサン」風を装った方が、成功率は高いだろうに……。

 シチェヴォイは、2022-6に更迭され、その後釜の司令官がズラヴリョフ中将だと言われている。とっくに司令官ではなくなっているにもかかわらず、彼は、もとの戦場で何をしていたのか?

 さらに不可思議なこと。ロシアの「上級大将」は、米陸軍の三ツ星中将と同格だ。彼が率いる司令部は、参謀長以下100名規模のスタッフがあるはず。そいつらはどこへ消えた?

 司令官が捕虜になったなら、同時にスタッフの一部も捕虜になっていておかしくない。ところが、ウクライナ側ではそもそも敵の方面軍司令部の所在を把握できないらしい。いったいどんな混乱なんだ?

 さらなる謎。シチェヴォイは禿頭ではない。もとの写真はフサフサなのである。しかるに、捕虜になったときは無帽でスキンヘッド。これはいったいどういうことなんだ?

 いずれにしても、「上級大将」の捕獲はWWIIいらい初。

 ところでT-72の車内スペースは狭く、「フィアット500クーペ」以下である。
 米軍は、この車内に乗員3名が閉じ込められた場合、何日間、耐えられるかという実験をしたことがある。メシもクソも睡眠も全部、その車内で完結させる。結果、3日が限界だとわかった。4日目からは、車外で横になって寝ないと、もうとても戦闘など続けられたものではない。

 比較して、M1エイブラムズの場合は、4人の乗員は、その車内だけで5日間、耐えることができた。

 独ソ戦のときにソ連軍が使った戦術。何マイルも退却して、ドイツ軍が勢いのままそれを追撃して後方連絡線が細くなったところで、横あいからその連絡線を挟撃し、先頭の独軍部隊を包囲してしまう。
 ウクライナのような大平原では、こんな手口が有効なので、注意が必要だ。

 SNSのテレグラムで「WarGonzo」の仮名でプロロシアの宣伝ビデオをUpし続けている民間人、セミョン・ペゴフ。ユーチューブでは35万人の登録視聴者がいる。マリウポリにNATOが建設した生物兵器研究所がある、という偽宣伝を5月に打ったのもこやつの業績だ。ロシア政府はこやつを幾度も表彰している。アルメニア機関を経由してカネも支払われている。

ところがこんどの東部反攻で自家用車を捨てて徒歩で逃げ出さねばならなくなったペゴフは、心境の変化があったようだ。

 なおウクライナ軍はこやつをジャーナリストとは認めておらず(銃を携行している)、戦地でもし逮捕したらスパイ工作員として銃殺する可能性がある。

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 Stefan Korshak 記者による記事「Russian Troops Desperately Seeking For Ways to Surrender ? Ukrainian Official」。
   ハルキウ戦区では、露兵がしきりに「投降」したがっている、とウクライナ軍の南部戦区コマンドのスポークスマン氏は語った。

 ウクライナ軍は「投降ホットライン」を開設している。露兵は個人でそこに電話をかければ、どこでどのように投降が受け付けられるか、知ることができる。

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 Elena Becatoros and HANNA ARHIROVA 記者による2022-9-12記事「Ukraine claims to have reached Russian border as counteroffensive maintains momentum」。
   東部戦線のいくつかの地点では、ウクライナ軍は、もともとのロシア国境に到達したと報告されている模様。

 日曜日の火力発電所に対する露軍のロケット弾攻撃でブラックアウトが生じていたが、電力および上水の供給は8割方、回復したという。

 ゼレンスキーは吠えた。ロシア人よ、まだわからないのか? 寒さ、食糧不足、暗闇、断水などをわれわれは恐れない。それは、おまえたちロシア人との「友好」に比べたなら、取るに足らぬ恐怖なのだから。
 さらにいわく。われわれウクライナ人は、やがて、ガスも電気も水も食糧も確保する。そして、おまえらロシア人抜きで、すべてやって行くであろう。

 どうやら現地の露軍部隊は命令を受けているらしい。オスキル川以西の土地からは、撤収しろ、と。つまりハルキウ地区からの総退却である。

 ハルキウ火力発電所は、西郊にある。対地ミサイル攻撃により、すくなくも1人が死亡した。

 ザポリッジア原発は、放射能災害を予防すべく、発電はすべて停止された。

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 2022-9-12記事「Why do Russians need as many as ten MiG-31 aircraft to launch one Kinzhal missile?」。
   ウクライナ空軍の人が語ってくれた。キンジャル空対地ミサイルの実態を。

 2-24の開戦いらい、キンジャルが何発発射されたかについては、分析者の間でばらつきがある。最小の数値は「3発」。最多だと「15発」である。

 ウクライナ空軍のスポークスマンであるユーリー・イグナト大佐いわく。数が少ないのには理由があると。

 キンジャルミサイルの落下速度は大きいため、途中での迎撃は考えられない。
 ただし爆発威力そのものは、地対地ミサイルのイスカンデルを越えるものではない。

 キンジャルは空中発射式。露軍は、それがどの飛行機からどのタイミングでリリースされるかを予察されたくないので、いちどに多数(12機以上)のミグ31を飛ばし、そのうち1機から不意にキンジャルを放つ、というテクニックを使っている。そうすることで、未然の迎撃をありえなくするのだ。

 1発の空対地ミサイルを使うたびに11機のデコイ戦闘機が在空し続ける必要があるのだから、コストパフォーマンスは、悪い。

 キンジャルは、リリースされると、いったん高度50kmまで上昇し、そこから超音速で落下する。

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 Alex Hollings 記者による2022-9-9記事「The M777 is deadly in Ukrainian hands, but even deadlier in America’s」。
    1979年に米軍は、M198という牽引十五榴を採用した。長さ36フィート、重さ1万6000ポンド。射程14マイル。砲側員は9名以上必要。

 湾岸戦争後、米軍は、もっと十五榴を軽くして地球の裏側まで空輸しやすくしないとダメだと感じ、新型を模索しはじめる。

 これに応えてくれそうだったのがBAEだった。BAEは、昔「ヴィッカーズ」社と呼ばれた英国の大砲屋だ。

 できたのがM777である。全長35フィート。砲身は16.7フィート。発射するタマはM198と同じ。しかし砲架にチタン合金、アルミ合金をふんだんに用いることでM198よりも4割も軽くした。全重は9300ポンドである。

 それまでは、C-130輸送機を2機飛ばさないと、1門のM198チームを空輸できなかった。しかしM777ならば、たった1機のC-130によって、1門の十五榴に必要なチームを全部一括して運ぶことができるのだ。

 砲側員は、射撃しおえたM777を、3分間で、牽引姿勢に人力で畳むことができる。これも部材が軽量であるおかげだ。
 陣地進入直後、牽引姿勢から射撃姿勢に直すにも、人力で、3分間でできる。

 軽量な大砲は、トラックで泥道を引っ張っているときにスタックしてしまうこともない。

 発射するタマ「M795」は、自重103ポンド。そしてその中には24ポンド〔=10.8kg〕のTNTが入っている。破片は半径70m内で致死的だ。

 M777の砲側員は5名。最大射距離は19マイル。
 「M982エクスカリバー」だと射程は25マイル。しかもGPS誘導。

 砲腔内にはぜんぶクロームメッキがされているので、砲身寿命は3倍に延びている。

 耐久性は実戦で証明されている。2017年に米海兵隊の1門のM777が、5ヵ月以上にわたって、シリアのISに対して3万5000発以上も発射しているのだ。もちろん途中で2度、砲身は新品と取り換えたが。

 2003年のイラク占領作戦のときに米軍が全体で発射したタマ数よりも、それは、多い。驚異的である。

 2016年には、精密誘導信管キットというものができあがり、これを砲弾にとりつけると、それまで照準点から200mくらい逸れていた弾着のばらつきが、30mに収斂するようになった。タマ1発の致死半径が70mだから、これは「直撃」に近い。

 とくべつにピンポイントで砲撃をしたい場合は、挺進観測員を派出する。この将校はJETS(統合効力照準システム)というターゲティングデバイスを抱えて、砲撃すべき目標から2.5kmまで肉薄潜入。そこで「前方観測&統合ターミナル攻撃統制」に任ずる。

 このJETSとコンビを組むと、M777は、「巨大な狙撃ライフル」のように機能するという。

 ※豆ちしき。WWII中の25ポンド砲は、今日の60ミリ迫撃砲ぐらいの物理的殺傷力しかなかった。

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 Boyko Nikolov 記者による2022-9-11記事「Russia ‘will spit out’ tanks continuously ? introduced overtime」。
   ウラルヴァゴンザヴォドの戦車製造ライン、総残業体制に。

 残業手当は率として本給の倍。また、本給部分も35%ベースアップすると工場長は明言。

 新戦車の製造ではなく、損傷AFVの修理が、国防大臣から命じられている。
 モスクワ郊外のラメンスキー工場、ロストフのカメンスクシャクティンスキー工場も同様。

 T-14は無論のこと、T-90も、ウラルヴァゴンザヴォドではもはや製造する余裕などない。

 T-80BVM、T-72B3Mや装甲車類の新造も止めてしまったのかについては情報は無い。

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 Defense Express の2022-9-12記事「S-300 Supply Obstacles, BMP-1 Negotiations Ongoing」。
    ギリシャは、所有するBMP-1をウクライナ軍に寄贈するかわりに、ドイツから「マルダー」を貰えるかもしれない。三者相談が進んでいる。
 ギリシャは「S-300」も持っているが、これをウクライナに提供することはなさそうだ。

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 Julian Spencer-Churchill & Liu Zongzo 記者による2022-9-12記事「Taiwan Anticipated Many of the Lessons of the War in Ukraine」。
   台湾国軍は2018年の「漢光34」演習で、初めて市販のドローンを使い、また、公共ショートメッセージによる住民への注意警報手順も導入した。

 2019演習では、中共軍が飛行場に地対地ミサイルを雨注してくることを想定。高速道路を飛行場の代用にする研究をいちだんと進めた。
 また民間住民の避難誘導も実験した。

 2020の「漢光36」演習では、重要インフラのミサイル防衛を三軍合同課題にした。じつは台湾のMDは、韓国や日本よりも高密度なのである。台湾よりも濃密なMDをもっているのはイスラエルだけだ。
 またこの演習では、海峡の向こうを打撃できる「雄風二型」、超音速対艦ミサイルである「雄風三型」も海空合同で用いた。

 「漢光38」演習は2022-7-25にスタートした。ポストパンデミックの最初の大演習だ。複数の海岸都市から「D-485 HE」砲弾の実弾を海に向かって発射した。敵上陸部隊を水上で破摧するため。

 もっとも新しい共通認識は、台湾軍の情報&指揮通信機能を、開戦劈頭の敵のミサイル奇襲によって破壊されてしまうのが最も痛いから、そうさせないように、司令部機能、電気通信設備、ならびにその関連インフラのことごとくを平時から「地下化」しておかないとダメだということ。この課題はすでに共有されており、これから作業が進む。

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 ストラテジーペイジの2022-9-12記事。
    CV-22Bは2017にも一時飛行停止になったことがあるが、これはHCEが問題だった。ハード・クラッチ・結合。すなわちローター軸を垂直にしたり水平にしたり変更するメカ。

 ことし、海兵隊のV-22が2機、おちている。1機は事情が分かっているが、砂漠で訓練中に墜落したもう1機については、まだ何の情報も公表されていない。