「やっぱ、グレーゾーンでやめておくしかねえな……」というのが北京の結論也。

 Jakub Palowski 記者による2022-10-11記事「Massive Russian Strikes: 4 Things to Know About the Ukrainian Air Defence [ANALYSIS]」。
   レンジが4000kmもある「Kh-101」空対地ミサイルや、同じく2500kmある「カリブル」艦対地巡航ミサイルは、露領内から発射しても、ウクライナ国内の任意の都市に到達させることができる。

 2022-2-24から3-6にかけて露軍は、600発の対地ミサイルを放っている。2-24から3-17までだと1000発である。

 しかし高額な巡航ミサイルは無尽蔵にあるわけではないので、ロシアはその後「Kh-22」というソ連時代の旧式空対艦ミサイルを持ち出すようになった。6月のクレメンチュク・ショッピングモールへの1発も、それだ。

 さらに、地対空ミサイルの「S-300」を、対地モードで発射するようにもなった。

 ロシアがイランから買い付けた「シャヘド136」無人特攻機は、ベラルーシ領内から発射している。
 公称最長レンジは2500kmであるが、現状、最前線のウクライナ砲兵陣地にむけて多用されている。
 弾頭重量は30kg未満なので、都市攻撃に向いているとはいえないが、都市攻撃にも投じられている。

 巡航ミサイルの飛翔速度は、毎秒300mである。高度は150m以上ということはない。この飛翔高度を100mと仮定して試算すれば、地上から10mにせりあげた対空レーダーによってそれを探知できるのは、距離47km以内にミサイルが近づいたあとである。

 巡航ミサイルの飛翔高度がもっと低ければ、探知距離はもっと短くなってしまう。

 というわけで、SAMシステムが巡航ミサイルに対応できるチャンスは1~2分しかない。

 ちなみに、レーダー誘導式SAMのなかでもいちばん簡便な対応システム〔軍用機か民間機かの識別すらやらない〕であることを誇る「Buk」であっても、リアクションのプロセスにどうしても24秒かかってしまう。

 ウクライナ軍のもっているSAMのうちいちばん遠くまで届くのは「S-300P」で、高空をやってくる物体に対しては90kmまで届く。射高は2万7000mまで。

 ウクライナ軍が少数だけ装備している、重量級の「S-300V」は、弾道弾に対処できる。

 以上が、最も外縁の防空手段。

 その内側は「Buk」が頼りだ。交戦レンジは30km。射高は1万1000mまで。

 「Buk」の内側で使われる各種のSAMは、レンジが10km未満しかない。それだと、秒速300mで通り過ぎて行く、高度100mの巡航ミサイルを撃墜できるチャンスは、ほとんどないことが分かるだろう。

 開戦から7ヶ月。すでにウクライナ軍のSAMシステムにも「疲弊」が蓄積している。ほんらいならばメンテナンスが必要なのだが、それができない。

 「S-300P」や「Buk」を代置する、西側製の「IRIS-T」や「NASAMS」が援助される必要があるわけだ。
 その援助がなされても、ジレンマは残る。SAMアセットは数が有限である。それを首都や主要都市に展開するべきなのか、原発や橋などのインフラ防衛に集中するべきなのか、それとも最前線部隊の頭上カバーのために展開するべきなのか?
 どこかを手厚く守れば、他は手薄にするしかない。

 ウクライナ側の大きな不利は、地平線の向こうまで見張るAWACSを持っていないことだ。

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 Sofiia Syngaivska の2022-10-11記事「Russia Delivers Shahed-136 Kamikaze Drones to belarus to Fire Ukraine」。
   ロシアは「シャヘド136」(露名「ゲラン2」)を10-10までに32機、ベラルーシ領内へ搬入した。10-14までにはさらに8機を搬入する予定。

 ベラルーシは、その軍需品を露軍に寄付しつつあり。貨車12両(492トン)分の弾薬が、ベラルーシ国内ゴメル州ドブルッシュ基地から、クリミア半島のキロヴスカ駅まで輸送された。

 他にも続々と送られている。卸下駅は、「カメンスカヤ駅」と、ロストフ州の「マリセヴォ駅」である。

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 2022-10-11記事「It Seems That 50% of russia’s Cruise Missiles Fall Before Entering Ukraine – Russian Propagandists Declassified Missiles Number in Monday’s Missile Salvo」。
   10月10日のミサイル大空襲。巡航ミサイルだけで、すくなくも150発以上を発射した。これはロシアの公表値である。

 どうやら、古いミサイルもかきあつめて発射しているらしい。その半数近くは、ウクライナ国境を越える前に勝手に墜落したようだ。

 というのは、ウクライナ領空まで入ってきたことが確認されているのは、各種ミサイル×84発なのである。
 そのほとんどは、巡航ミサイルであった。

 ウクライナ軍は、43発の巡航ミサイルを撃墜した。

 勝手に墜落したミサイルの多くは「X-101」「X-555」ではないかという。「X-22」が混じっている可能性もあるという。

 さかのぼると、9月に「キンジャル」空対地ミサイルが、スタヴロポリ地区に落ちてしまっている。
 そして10-10にも、露領内で複数の「爆発」があったことが報告されている。自軍のミサイルの墜落だとすれば辻褄は合うのだ。

 ロシア軍の倉庫に、大戦争が起きたときの予備用として長期間保管されている需品を「NZ」という。そのNZが引っ張り出されている可能性が高い。だからメンテナンスができていないのだ。

 ※「R-37M」という長距離空対空ミサイルを戦闘爆撃機の翼下パイロンに搭載する作業の写真が「テレグラム」に投稿されたそうだ。B-2への対抗のつもりだろうが、露軍はひょっとすると、一部の空対空ミサイルも空対地攻撃に転用する気かもしれない。

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 Peter Graff 記者による2022-10-12記事「Explainer: Why Russia’s missiles on Ukraine have limited impact」。
   モスクワは、今回70発以上を発射し、すべて目標に命中したと主張している。

 ところでカリブル・ミサイルは1発の値段が650万ドル以上するであろう。ということは、たった1日で5億ドルくらいを煙にしたことになる。

 ロシアは、艦対艦ミサイルを、対地攻撃に転用しはじめたことが、7月に注目されていた。

 キーウに対する月曜日のミサイル空襲では、政府指導部の建物に1発も着弾していないことが注目される。とうぜん、狙ったはずなのに。

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 Defense Express の2022-10-11記事「It Became Known How Many Drones Russia Ordered in Iran」。
    ゼレンスキーは、ロシアがイランから2400発の「シャヘド」無人特攻機を買い付けようとしていると、G-7サミットに向けたビデオの中で語った。

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 John Vandiver 記者による2022-10-11記事「What will the US do if Putin goes nuclear on Ukraine? Threats give question growing urgency」。
    ロシアは米空軍の参戦を最も恐れているので、米政府としては、それをオプションとしてキープする。


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 2022-10-10記事「Kaman Selected to Build Cargo UAS Prototype for U.S. Marines」。
   カマン・コーポレーションの一事業部、カマン・エア・ヴィークルズは本日発表。米海兵隊から選ばれた。補給用UASのプロトタイプをこれから試作する。

 能力としては、800ポンドの軍需品を空輸する。甘くない環境下で。



ウクライナの戦訓 台湾有事なら全滅するしかない中国人民解放軍