豪州政府も、退役パイロットが支那軍に奉職していないか、調査に乗り出した。

 Craig Whitlock and Nate Jones 記者による2022-10-18記事「Retired US generals, admirals take top jobs with Saudi crown prince, other foreign governments」。
   『ワシントンポスト』が調べ上げた。
 2015年いらい、退役米軍人が500人以上、他国の政府に雇われて働いている。階級は、元将軍や提督らを含む。再就職先には、サウジアラビアのような、人権憲法がおこなわれていない問題ある諸地域が含まれている。
 サウジの場合、元准将以上の者×15名を、同国国防省の顧問にしている。2016以来。
 ボスである国防大臣は、2018のカショギ記者暗殺事件の黒幕王子ビンサルマンだ。

 ビンサルマンの下で働いている大物としては、オバマ政権で国家安全保障補佐官だった海兵隊のジョーンズ大将、オバマ政権とその前のブッシュ政権でNSA(盗聴機関)を率いていたアレグザンダー陸軍大将。

 こうした再雇用の実態を知るために、WP紙では2年前から、陸軍、空軍、海軍、海兵隊ならびにDoDに対して訴訟を起こし、「情報自由法」にもとづく開示を迫ってきた。

 米軍の規定では、四ツ星将官の基本給は、年俸20万3698ドルである。再雇用された将官の中には、7桁の報酬を得ている者もいる。

 めずらしいところでは、アゼルバイジャンに日給5000ドルで誘われた元空軍将官がいる。

 将校でなくとも、稼ぎになる。シールズの元下士官は、サウジの特殊作戦のアドバイザーとして再雇用され、年額25万8000ドルを受け取っている。

 UAEは、元米軍のヘリコプターパイロットを年額20万ドル、地上整備員を12万ドルで雇っている。
 インドネシアの国有鉱山では、元米海兵隊の輸送係曹長を、日俸500ドル+生活費で雇用中。

 闇が深そうなのはSAMI(サウジアラビア軍工廠)である。そこに就職した米国人について、米海軍では情報をオープンに出せるといっているのに、米国務省はそれを拒む。
 SAMIは2017に、サウジ軍用の兵器の国産率を高める目的で創設された。その株式のすべては、ビンサルマンの支配する公共投資法人が保有している。その法人からは昨年、20億ドルが、ジャレド・クシュナーの投資会社へ投資されていることを『NYT』がつきとめている。クシュナーの岳父はトランプだ。

 元ノースロップグラマン社の大幹部だったティモシー・カーターは、2019-9以降、SAMIに固定年俸51万4000ドル+生活費+可変ボーナス最大33万ドルで雇われている(副社長)。
 『WP』の認識ではこの「転職」はカーター個人が勝手に決めて可いことではない。米政府による正式の公認が必要なはずだ。カーターはその手続きをすっとばしている。

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 ストラテジーペイジの2022-10-19記事。
   露軍は重爆撃機を何機もっているのか。
 275トンの「ツポレフ160」×15機。これが「B-1スキー」だ。
 126トンの「ツポレフ22M3」×66機。バックファイアーである。
 188トンのターボプロップ重爆「ツポレフ95MS」×42機 ……というところ。

 ※ロシアとイランのさいきんの関係を整理しよう。イランとロシアは22年9月3日に合意した。イランは65機以上の「スホイ35」戦闘機を受領する。その代価は物品(イラン製の各種無人機や地対地ミサイル)によって支払われる。バーターである。「スホイ35」は基本的に「スホイ27」の各部改善型。単価は2倍以上する。「スホイ35」の引渡し時期は、見当がつかない。露空軍ではこの型の戦闘機を100機前後しか有していない。新規製造しようとしても、西側製の電装品が手に入らないので、ロシア国内では完成品にできないはずである。「スホイ35」はエジプト国内でも組み立てられている(そのカネはサウジが出してやっている)が、エジプトとイランは敵対陣営に属するゆえ、エジプトからの融通など無理。イランは「スホイ35」をサウジ&UAEを脅迫する道具としたい。イスラエル空軍のF-35とでは勝負にもならないことはよくわかっている。イスラエルは自爆無人機の「シャヘド136」をレバノン国境にてことごとく撃墜できている。ウクライナとは防空能力が違う。イランは「スホイ35」の代わりに、すでに保有している旧式各種軍用機用の「正規スペアパーツの代用となるパーツ」をロシアから入手できるかもしれない。シャヘド136の弾頭炸薬は36kg=80ポンドらしい。北部イランに近いイラク内の基地にて10-1に米軍が、「モハジェル6」無人機を撃墜している。ペイロード100kgというが基本的に偵察機。イラク内のイラン系民兵には2021から手渡されている。シリア東部では、シリア政府軍に徴兵されたくないシリア兵が数十名、レバノンのヒズボラに加わっていたが、ヒズボラは9月10日にこれらをシリア側へ追い払った。そうしないとイランとシリアの関係が悪くなるからである。ヒズボラのスポンサーはイラン。イランはシーア派の多いイラクを政治的に完全属国化しようと努力中だが、同じシーア派ながらも若い世代の支持を得ている反腐敗派のサドル一味と、プロ・イラン政権との、武力衝突に発展しつつあり。つまりイランでもイラクでも、1979ホメイニ革命当時のじじい世代が、若い世代から反抗されてタジタジとなっているところである。

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 複数のニュースを編合して、アルメニア対アゼルバイジャンとイランの国境情勢を整理しておく。誰も気にしてなさそうなので。

 イランはコーカサス山地において、アゼルバイジャンならびにアルメニアと国境を接している。1991年から94年にかけての「第一次ナゴルノカラバフ戦争」の直後、「アルメニア軍占領区」とイランの国境線は138kmあった。しかし2020年の「第二次ナゴルノカラバフ戦争」でアゼルバイジャン軍が係争領土を奪い返した結果、イランとアルメニアの国境はわずか40kmにまで縮小した。

 陸封国であるアルメニアにとって、イランとの接壌国境がまったくゼロになることは、経済的な悪夢だ。というのは宿敵アゼルバイジャンはトルコの兄弟国のようなものなので。

 イランも、第二次カラバフ戦争より後は、アルメニア国境を気にかけざるをえない。石油を密輸出したいイランにとっては、アルメニア→ジョージアというルートで黒海の港までアクセスができるオプションは、捨てられない(トルコ領経由は問題外)。

 アルメニアは人口たったの300万。面積でもアゼルの三分の一でしかない。トルコとの国境には、アララト山がある。しかしアルメニア人はその山を通ってトルコに入ることは許されない。

 2020の停戦いらい、ロシア軍が平和維持軍として「ラチン回廊」に駐留してきた。
 アルメニア本国と、飛び地のナゴルノカラバフを連絡する道路である。
 2020の第二次ナゴルノカラバフ戦争では、ロシアはイラン領空を経由してアルメニアに武器弾薬を援助した。

 しかし第二次カラバフ戦争の結果、アゼルは「ザンゲズル回廊」を設定しようと欲するようになっている。すなわち40kmの国境帯を支配して、東西打通してしまおうというのだ。露軍が抽出されて手薄になったので、これが実現しそうだった。

 2020年のカラバフ停戦協定の第9条で、アゼルバイジャンにはナヒチュヴァン(アルメニア領内にある飛び地の自治区)への連絡通交が許容された。イランはそれに文句を言ってない。

 過去30年、バクーを首都とするアゼル本国と、ナヒチュヴァンのあいだの、人や商品の行き来は、国境南側のイラン領を経由するしか、なかった。

 アゼルは、トルコの支持を受けて、この回廊を直結させたい。しかしそれは、アルメニアからイラン接壌帯を奪うということになる。
 イランは、それを許容するつもりはない。ハメネイはエルドアンに7月に面談してそれを伝えてある。

 回廊がアゼルのものになると、トルコが直接にコーカサスにアクセスできることになる。トルコはNATOメンバーである。これはイランやロシアにとって、とんでもないことだ。

 ザンゲズール回廊はトルコとアゼルバイジャンを最短で結ぶ交通路。従来、トルコが中央アジアにアクセスするためには、トラックは、イラン領を通る必要があった。イランはそのトラックから通行税を徴収していた。

 2022-9に、またアゼルとアルメニアは戦闘再開した。双方で300人近く死んだらしい。イランはこのときアルメニア国境にイラン軍およびIRGC(イラン革命防衛隊)を5万人展開した。露軍の不在を、イラン軍が補った形だ。イランはロシアに恩を売った。

 さらにイラン軍の参謀総長は9月22日、「イラン対イラク戦争」記念日の軍事式典に臨んで演説し、もしアゼルが回廊打通に乗り出せばイランは参戦すると宣言して、交渉による解決を促した。

 イランは、アゼル経由ロシアというルートも持っている。どちらの交易路も保持するのがイランの国益だ。ただしアゼルは、イランの宿敵のイスラエルと結託している。

 もうひとつ。「アラス川水資源問題」がある。この川はアゼルとイランの国境線を成しているが、源頭がトルコにある。アゼルが回廊を支配すると、上流と中流でアゼルが水を消費してしまえるようになる。
 イランの農民は近年、水不足で苦しめられている。それが改善されずに悪化するなら、どんどん反政府的になってしまうだろう。

 10月6日に、プラハで会談がセットされた。フランス、トルコが立会い、アルメニアとアゼルバイジャンの再燃戦争を沈静化させることになった。マクロンとEUが主導している。
 ロシアが面倒みてくれなくなった小国のアルメニアが、ロシア抜きの多国間合意に入った。イランは会議には出ていないが、アゼルとトルコを軍事力で牽制した。ロシアの影響力だけが縮小している。

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 Defense Express 記者による2022-10-19記事「Ukraine Gets Another Package of Military Aid From Germany」。
   ドイツ政府のウェブサイトによると、ドイツは次の物品をあらたにウクライナへ供与する。
 装甲戦車回収車×5(既送の5両とは別)。小火器弾薬16万7000発。
 11万6000着の冬用戦闘上衣。8万着の冬用軍袴。3万6102足分のゴム製オーバーシューズ。24万人分の防寒帽。
 天幕100張、ディーゼル発動発電機×183機、野外ヒーター×130個、寝袋×4000個……などなど。さらに糧食は連日、補給してやるという。

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 Boyko Nikolov 記者による2022-10-19記事「Russian Leer-3 jams GSMs in Ukraine and sends SMS for provocation」。
   ロシア国防省がビデオを投稿した。「Leer-3」という電子戦機材を載せた「オルラン10」をゴム動力のカタパルトから打ち出す動画だ。
 アルミ製の傾斜竿の下に、ゴム紐多数を束ねた太いロープが2本あり、それを手動クランクで引っ張っておいて、無人機を斜め上方へ射ち出す手順が面白い。

 「Leer-3」は、ウクライナ軍がスマホをトランシーバー代わりに使っているので、その送受信を妨害するのが主機能。さらに、スマホの信号を最前線で中継している地上局(それは森林内にカモフラ隠蔽されている)の位置を割り出す。また、「Leer-3」を通じて、ウクライナ兵の所持するスマホに、テキストのショート・メッセージを表示させることができる。これは「心理戦」に活用できる。

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 Seth Robson 記者による2022-10-18記事「Japanese yen falls to 32-year low against US dollar, boosting US troops’ buying power」。
   「円対ドル」のレートが、ドル持ちにものすごく有利になっているので、今、在日米軍人たちは、買い物ラーッシュ!

 ドル高のメリットは、横田基地の外にあるレストランで家族で外食すると、日常的に実感できる。日用品の買い物も然り。
 家族で東京ディズニーランドに繰り出すという手もある。



ウクライナの戦訓 台湾有事なら全滅するしかない中国人民解放軍