どなたか『ウイッテ伯回想記』をめぐんで下さらぬか?

 それとは別件ですが、《ユグドア》や《note》で兵頭を直接支援するオンラインの方法がむずかしいとお思いの方々へ。
 そのような場合は、兵頭の過去の単行本(古書ではなく新品)を、アマゾンなどの通販でお買い求めになり、それを、どこか離島もしくは僻地の公共図書館(または学校図書館)の「収書課」宛てに、めいめい郵送してご寄贈ください。
 それによって日本国の軍事系言論の環境が国土の隅々から改善されます。また、小生も、次の新刊企画を出版社に提案し易くなるのであります(新品の売れ行きデータが取次店に記録され、ロングセラーと認識されるからです)。

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 ストラテジーペイジの2022-11-13記事。
   トルコの兵器メーカーが、新しいロイタリングミュニション「アルパグト」を完成。スペックが凄い!
 弾頭重量が11kgで全重が45kg。

 ※これはもう「うろつき型の155ミリ榴弾」だと言ってさしつかえない。さいしょからそのように意図しているだろう。

 ただし、陸上や艦上からは発射できない。
 「アルパグト」は、「TB2」のような中型無人機からリリースされる、空中発射型のロイタリングミュニションなのである。高空から発射することにより、レンジが60kmに達する。そして発射母機は、敵のSAMの脅威圏外にとどまれる。

 まずトルコ軍が使ってみて問題点を改善する。それから、陸上発射型などのバージョンを計画するであろう。
 メーカーは自慢する。中共の無人機とちがって、うちらの新兵器には他国から盗んだ技術は使用されていないのである、と。
 とは申せ、トルコは過去にイスラエルから「ハロプ」を輸入しているのだが……。

 ※今次ウクライナ戦争で得られた多数のビデオフッテージにより、現代であっても敵の主力戦車を撃破するには十五榴の至近爆発で十分であったことが確認できた。10kgの高性能炸薬を充填できるなら、直撃の必要はなく、したがってHEATにする必要もない。すなわち対戦車を狙うロイタリングミュニションでも、10~11kgの炸薬が充填してあればよく、それ以上の巨大弾頭を運搬させようとするのは無駄だ。発射時に強い加速度もかからないのだから、その弾殻は薄い軽合金でいい。それで浮かせた重量で航続距離を延ばす。この考え方を設計の出発点にして、いろいろなレンジのロイタリングミュニションを、極力安価に製造するのが悧巧というものである。イスラエルは「ハロプ」が高額すぎたという反省から、トラック荷台のカタパルトから打ち出せるその廉価版の「スカイストライカー」を2018にリリースしている。その弾頭炸薬は5kgと10kgを選べるようにしている。ただしイスラエルは、ロイタリングミュニションが破壊目標を発見できなかったときには、呼び戻してパラシュートで回収&再利用するという流儀にこだわっている。そんなのはコスト高でダメだ。イランの「シャヘド136」の割り切りが正しいのだ。GPS座標だけを入力し、動かない目標に対して低速で片道特攻させる。これならカメラも通信機も必要ない。最安値で大量生産できる。途中の数箇所のウェイポイントでのみGPSを参照するようにし、最後のコースはINSだけで自律飛行させることとすれば、もはやスプーフィングも受けない。多数機を次々と投入すればロシアの鉄道は止まる。敵の戦車部隊も夜中に停止して休憩することができなくなる。ウクライナに必要なのは、「シャヘド136」の軽量弾頭型(12kg未満に軽減する)であろう。

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 AFPの2022-11-12記事「X-37B orbital test vehicle concludes sixth mission」。
   米宇宙軍の「無人スペースシャトル」である「X-37B」が地上に帰還した。900日以上も地球を周回していた。

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 Minnie Chan 記者による2022-11-11記事「High hopes of China’s H-20 stealth bomber launch as PLA top brass vow weapon system upgrades」。
   米空軍は次期ステルス戦略爆撃機として「B-21 レイダー」をもうじき飛ばすところまで漕ぎ付けているが、これに対抗した《中共版B-2》といえるのが「轟20」だ。

 中共軍は、「轟20」はもうじき飛ぶ、と言っている。

 ※ほんらいならば、中共党大会、もしくはG20サミットでバイデンと熊プーが面談するタイミングに合わせて「轟20」を初飛行させ、世界に向けてパンパカパーンと宣伝を打ち、米国世論を威嚇して虚勢を張らなければいけなかったところである。中共軍はそれに失敗し、熊プーの希望に添えなかった。おそらく「X-37B」は、「轟20」が試験飛行する兆候があるかどうかを、ずっと監視していたのだろう。それはまずありえないと見極めたので、このタイミングでケネディ基地に回収した。

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 Guy Faulconbridge 記者による2022-11-14記事「Sledgehammer execution of Russian mercenary who defected to Ukraine shown in video」。
   ワグネルを脱走して反露に寝返った55歳の男。10-11にキエフでワグネルに拉致され、大ハンマーで頭を叩きつぶされて処刑されるありさまがSNSの「テレグラム」のチャンネルである「Grey Zone」に投稿されていた。

 この男についてワグネル総帥のプリゴジンは日曜日、「反逆者だ」と語った。

 プリゴジンはまた、私有ジェット機に乗って第三国へ逃亡した金持ち階級のロシア人たちについても「同じく反逆者だ」と警告している。

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 Defense Express の2022-11-13記事「Russians Are Afraid That the Crimean Bridge May Be Struck by a Brander ? the Ministry of Transport And Infrastructure of Turkey」。
   ケルチ橋の下をくぐって黒海からアゾフ海へ入ろうとする貨物船を、11-12からロシアが急に規制するようになった。二度目の爆破工作があると警戒しているらしい。

 10-8に爆破されたケルチ橋の損壊は思ったより酷く、修繕は2023-9までかかるだろうという。

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 The Maritime Executive の2022-11-10記事「EUNAVFOR Seizes Dozens of Armored Trucks Bound for Libya」。
   オランダ船籍の5000トン積みの貨物船が装甲トラックなどを満載してリビアへ向かっていたのだが、EUはその船を拿捕し、積荷を押収した。今年に入って二度目。

 上甲板に15台の装甲トラック(UAEがフォード・トラックを改造したもの)を載せ、まっぴるまにシートカバーもかけず、AISも切らずに航行していた。隠す気がなかったようだ。しかしリビアの交戦団体に武器を輸出することは国連が禁止しているのである。

 いちおうオランダ政府には、臨検していいかと事前に打診。そして公海上で拿捕。同船はマルセイユ港まで連行されつつある。

 UAEは、リビアのハリファ・ハフター軍閥側を後援している。

 この拿捕によって船長が逮捕されることはなく、また船会社が罰金を払うこともない。

 ことしの7月にはイタリア海軍のフリゲートが、1隻の自動車運搬船を拿捕した。これもリビアへ軍用車を届けようとする途中であった。

 ※福岡と釜山の間に就航させる最新鋭の三胴型の高速フェリーについての報道がやはり『Maritime Executive』に出ている。新コロのために完成が2年も遅れていたという。よくわからないのが、それが日本でも韓国でもなく、豪州の造船所製だということ。日本や韓国には三胴船を造るノウハウが無いってことかい?