プー之介が陣没兵士の母たちと面談したとかいうフッテージ。出演者全員、合成だった。

 首から下は役者たちのスタジオ実写。顔は、実在人物からの借り物写真を、ディープフェイク・ソフトで動かしているデータを貼り付けた。それらの顔素材を拾ってきたウェブサイトが特定されている。

 声も勿論、合成にきまっているが、その語りの原稿は、事前にプー之介がチェックを入れて了承している筈だ。すると興味深いのは、「人は皆死ぬ」と語るくだりだろう。やはりプー之介は死病に罹っているという自覚に衝き動かされていて、半ヤケなのか。

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 Defense Express の2022-11-26記事「The US Organized Repair Base for Artillery from Ukraine in Poland – NYT」。
   NYT報道によると、ウクライナ軍砲兵は連日、2000発から4000発を発射している。
 それにともない、砲熕兵器の損耗がはげしい。

 これまでウクライナは西側からおよそ350門の榴弾砲を寄贈されたが、そのうち三分の一が完全破壊もしくは要修理のコンディションとなっている。

 磨耗した砲身の交換はウクライナ国内ではできず、ポーランド国境に設けた工場でする必要がある。

 ※ドローンにみちびかれて、まっぴるまにウクライナ兵の塹壕陣地まで案内されて投降した露兵のフッテージとインタビューがSNSに出ている。

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 TOI staff 記者による2022-11-25記事「Report: Iran developing missiles that could eliminate obstacles to delivering nuke」。
   NYTの木曜日報道。イランが大型の巡航ミサイルを開発しており、これが仕上がれば核弾頭運搬に不自由はなくなるだろうと。

 イランの「フォルド」ウラン濃縮工場は、クォム市の外れ、山中の地下にあり、イスラエルの原爆でもこれを直撃して破壊することは不可能である。

 ※タイワンニュースによると、台湾は「ハーピィ」のコピー品を完成した。対岸のレーダーサイトに自爆特攻させる無人機である。これから量産する。自重6kg、レンジ1000kmだそうだ。

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 AFPの2022-11-25記事「NATO chief says up to Germany if it gives Ukraine Patriot missiles」。
   NATO事務総長のストルテンベルクは金曜日に語った。ドイツがペトリオットをウクライナに供与したいというなら、それは構わない、と。ポーランドがドイツにそうすることを強くすすめていた。

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 Attila Arslaner & Julian Spencer-Churchill 記者による2022-11-26記事「Ukraine Can Beat Russia in the Bombardment War of Attrition」。

  ※しかし「アッティラ」という名前の欧米人がいたとはしらなかった。

 2月からこれまで露軍が発射した戦術ミサイルは1305発。
 弾頭重量として、500kg、700kg、1200kgのものが含まれる。

 90年代のスカッド・ミサイルは985kg、WWII中の「V-2」号は975kgであった。

 「Kh-22」(キッチン)は、50発弱が射耗された。もともと米空母キラー用の空対艦ミサイルであった。

 空襲が持続可能かどうかはコストの読みが決める。
 軍艦から発射するカリブル巡航ミサイルは1発が100万ドルくらい。それを迎撃する「S-300」地対空ミサイルは、1発が100万ドル以上する。ドイツが供与した「アイリスT」SAMだと43万ドルで済むのだが。

 ウクライナは開戦前に250基の「S-300」を保有していた。国内生産はしていない。

 キエフに襲来した「Kh-55」(1発100万ドル)を、品名不明のSAMが撃墜している。もしそのSAMが『NASAMS』だったなら、飛翔体はAMRAAMと同じなので、120万ドルだ。

 おなじくキーウに襲来した「シャヘド136」自爆無人機は、1機がたったの2万ドルである。

 SAMシステムのラーンチャー機材も高額だ。安くても2300万ドル。高ければ1億ドルする。それが「ランセット」のような安価なロイタリングミュニションや、地対地ロケット弾によって、あえなく破壊されてしまうこともある。

 11月15日のミサイル大空襲(90発飛来し、73発を阻止)にさいして、米国供与のNASAMSは、10発を発射し、その全部が標的に命中したと誇っている。しかし、それは持続可能か?

 ※欧米メーカーとしては実戦テスト宣伝の意味があるので、損得勘定は合っていると思う。今のところは。これに反して露側では、「実戦テスト」を続ければ続けるほどにロシア製兵器全般の国際評判が下がるという事態を避けるために、今、全力で「ランセット」を傾斜生産させていると思う。唯一成功している部門に予備の全力を注入してやるというのがソ連流ドクトリンだから。

 都市空襲が空軍資源の無駄であることは1937年にルフトヴァッフェがスペインのゲルニカを空襲して痛感した。貴重軍事資源のこんな無駄遣いを二度としてはならず、空軍はすべて、味方地上部隊の直協に振り向けるべきだという教訓を得て、それが1939の対ポーランド電撃戦に結実しているのである。ドウエ理論が否定されたのだ。

 見積もりでは、ロシアはトータルで1844発しか戦術対地ミサイルは持っていなかったので、すでにその7割を射耗してしまった。残っている有力ミサイルとしては、121発のイスカンデル、248発のカリブル、170発のKh-55ぐらいだろうという。

 これからミサイルを増産しようとしても、西側製のマイクロチップが市場で正規に手に入らないのでは、脳無しミサイル(半製品)が工場ライン途中にどんどん溜まるだけである。

 純然、戦術面の合理主義に徹したいなら、有限のミサイルは、敵砲兵、航空基地、鉄道操車場、補給倉庫に集中するべきである。かたや、敵都市破壊は自国民を満足させるので、そこには政治的な合理性がある。しかし、都市をいかほど破壊してやっても敵国民の戦意は衰えず、戦争を終らせることもできない。

 ドイツは1940年7月にも作戦を誤った。
 ほんらい、まず徹底的にRAFを打撃して英本土上陸作戦に結び付けなくては、いけなかった。それ以外に世界戦争に勝つ望みはなかったのだ。
 ところがルフトヴァッフェは、英本土南部海岸の商船や工場の破壊に熱中してしまったのだ。そこに防空レーダーがあったので、ついでに周囲も爆撃しているうちに、面白くなってしまったのだ。

 英政府は、1940-7月~8月に、RAFの戦闘機を至急増産することを最優先した。そのため、RAFには本土南部の防空をさせなかった。これにドイツは誘導されてしまったのだ。

 8月中旬から9月初旬にかけ、遅れ馳せにルフトヴァッフェはRAFの飛行場と生産工場を狙って空襲したが、戦闘機の返り討ちに遭い、大損害を被ってしまった。

 英国は巧妙だった。8月25日にRAFにベルリンを長駆空襲させたのだ。これでヒトラーが理性を失ってしまった。

 報復が絶叫され、1940-9-7に、1000機の独機が集められて、ロンドンの民間目標を集中爆撃した。

 当時の英軍は米国からの水面下の補給支援もうけており、数週間の時間を稼げれば、戦闘機戦力を回復させることができた。RAFはロンドンの犠牲の上に戦闘機戦力を涵養し、9-15に独機1000機がまたロンドンを空襲してきたのを、手痛く迎撃した。

 これでルフトヴァッフェは深刻に損耗してしまった。ヒトラーは英本土上陸作戦を諦める気になった。かくして、ドイツが世界戦争に勝つチャンスは消えた。

 そのあと独軍は、夜間都市空襲に戦法をチェンジし、コベントリー、バーミンガム、ブリストル、リバプール、サザンプトン、グラスゴー、リーズ、マンチェスター、プリマス、シェフィールド市は炎上した。

 この段階ではヒトラーはもう英本土支配をあきらめていた。ただ感情的な満足を求めて、漫然と都市空襲を実行させたのだ。

 戦争の後半、ドイツはV-1巡航ミサイルとV-2弾道ミサイルを開発した。V-1は、双発爆撃機のたった2%の工場資源で製造できた。ただし迎撃されやすかった。V-2は、双発爆撃機の半額で製造できた。迎撃は不可能であった。
 ドイツはV-1を2万3172発、V-2を3172発、英国に向けて発射した。

 その二種類のミサイルによって、終戦までに、英国住民1万6000人が殺されている。

 先の大戦で、列強がもっともカネを使った技術開発の筆頭は、原爆である。次点が、米英共同のレーダー開発。そして三番目が、独の「V-1/2」であった。

 戦後のロシアが知ったこと。戦術核弾頭の製造コストは、戦術弾道ミサイルの製造コスト以下である。冷戦中、ソ連は、それを運搬するミサイルの数よりも5万5000発も多く、核弾頭を製造した。
 要するに、現代のミサイルは、どの国にとっても、高額すぎるのである。

 2023年の春には、ロシアの手持ちの戦術ミサイルはゼロになるであろう。そうなると、そろそろ核でも使うしかねえか(余ってるし)、という気にプー之介もなる可能性があるわけである。
 それで、あちこちからゼレンスキーに、プーチンとそろそろ交渉しろ、という圧力もかかるわけなのだ。

 ※冬以降のウクライナ戦争は、「米国南北戦争」の境界会戦に似てくるのではないか。鉄道時代の総力動員戦は、銃後の資源の最後の一滴まで絞り尽くせることである。南北戦争は70万人が死ぬまで終らなかった。だから、まだまだ終わらんよ。

 ※WWII中のように米国からトラックを援助される立場なら、カチューシャを傾斜生産すればいい話なのだが、現在は発射車台のトラックの調達ができない。となったら、あとは鉄道貨車を無誘導ロケット弾の発射台にするしかないかもしれない。工場引き込み線で、できたてのロケット弾を貨車に搭載。そのまま前線近くへ移動して発射しては、また工場に戻る。

 ※旧日本軍が本土防衛用に終戦直前に工夫していた「爆弾投射機」(V形樋に砲弾や爆弾を乗せ、それをロケット推薬で斜め上へ飛ばす。射程数百m)も、復活するかもしれない。ちょっと内径の大きい「簡易迫撃砲」を町工場で製造させ、余った榴弾をそこから発射すればいいという発想はダメだ。雑報によると、旧ソ連系の迫撃砲から、今の西側製の迫撃砲弾を発射させようとしたら、腔発したという。想像するに、これは120ミリではなくて、82ミリ迫撃砲で81ミリ迫撃砲弾を発射しようとしたのではないか? あるいはその逆かもしれない。詳報を待ちたい。