2019年の拙著で提言した「陸自のAH(攻撃ヘリ)の廃止」が今月、正式に決まるらしい。

 『日韓戦争を自衛隊はどう戦うか』(徳間書店、2019年4月pub.)は、タイトルとはうらはらに、主に尖閣防衛に役立つ部隊・装備・戦術と、役立たず「遊兵」化する部隊・装備・戦術について301ページを使って切論したものです。これを書いたときのエネルギーは今の私にはもう無いので、いま読み返すと、じぶんでじぶんに圧倒されてしまいます。

 まあ軍事評論をやっていて、大胆な提言が一部でも現実化することはそうあるもんじゃないですから、ここに記念書き込みをしておくことにしました。

 ライトアタック部隊の新編は無いでしょう。かわりにドローン部隊ができる。これは2021年の『尖閣諸島を自衛隊はどう防衛するか』で力説したコースです。

 ついでに言いたい。「カネをくれ!」(あくまで心の絶叫)。

 なんか、こう、あるだろう。適当な名目が。

 「推理が当たったで賞」とか「一般読者向きにわかりやすく解説してくれたで賞」とか「論点整理に役立ったっしょー(北海道弁)」とかなんとかテキセツな名目がついて副賞「10万円」でも貰えるとなったら、よろこんで市ヶ谷でもどこでも出張しますよ(旅費は別途清算ということで)。

 もうこのトシになりますとね。「オスプレイに乗せてやる」とか言われたって、往復の行動中にいろいろ使わざるを得ない小銭の積み重なりの方がずし~んと懐に痛いんで、わたしゃ、参りませんから。

 ※ついでに予測しておく。今後は、マルチコプター型ドローンから敵歩兵に対して投弾する「擲弾」に、近接信管をとりつけることが必須になる。着発信管や延時ヒューズではせっかくのキル・チャンスが無駄になってしまうというビデオ証拠がゴマンと蓄積されたから、この流れは確定だと思う。おそらく今、世界中の歩兵の方でも、着発式投下擲弾からサバイバルする術策をひととおり考えてしまっているはずだ。そうかといって、既製のVT信管は高額である。これを、いかに安価に、そして歩兵の身長未満の地表スレスレで確実に起爆させ得るものとして量産できるか。大課題だが、まさに日本の零細工場の得意技だろ? いくら安くしたところで近接信管は1万円以下では造れまい。しかし、それなしではどの国も戦争ができないようになるのだ、造れば造っただけ売れるのだ。小さくて軽くて、高額。雑に扱っても、安全。これこそ大儲けのチャンスではないか。なお、マルチコプターの進出距離は短いので、敵が歩兵ではなくAFVを繰り出してきたら、そのときは、改めてHEAT弾頭か自己鍛造弾頭を抱えて再出撃させるのみ。何の不都合もない。

 ※雑報によるとロシアは、対戦車ミサイルよりも安価に大量増産が利く「対戦車特攻ドローン」としてクォッドコプター型を選定し、それに重さ1kgの対戦車弾頭を吊るして、機体から分離はせずにそのまま真上から衝突自爆せしめる流儀を採用した模様。この方法で機体も使い捨てにするんだと思い切ってしまうのならば、動いている敵戦車にもぶつけられる。そしてもうひとつ、この流儀であるならば、弾薬用の面倒・高額なVT信管を考えないでいい。FP操縦で、特定の敵歩兵の顔面高度ピタリで起爆させてやることができるから。そもそもドローンには対地高度計が備わっているから、その数値をモニターすれば地表スレスレ起爆などいとも容易である。起爆信号は、IEDで使われているような、コマンド信号をデジタル暗号で送達する方法でいい。従来、VT信管を投下擲弾と組み合わせることがなぜ厄介だったかといえば、砲熕から発射するさいの極大Gをスイッチとして利用できないから、安全装置設計が複雑にならざるをえなかったのだ。安全にしすぎれば肝腎なときに爆発させ難くなる。ぎゃくに爆発を確実にしようとすると、飛ばす前のハンドリング中に不意に爆発させてしまう危険がどうしても生ずる。そんなジレンマを回避し、安価な「曳火炸裂」を実現できる解決策が、マルチコプターの機体もろとも自爆させてしまう技法だ。初期安全装置は「紐」とタイマーでいい。機体を飛ばすときに紐の下端を握っておき、上空10m以上でその紐が機体から抜けるようにする。するとそれによって機体内臓の物理タイマースイッチが回り出す。回りきった数秒後に、自爆コマンド信号が受信可能になる回路がつながる。これでいいだろう。1kgというのは、ソ連の古い107mm迫撃砲「M1938」の砲弾1発の充填炸薬と等しい。朝鮮戦争では米軍の107mm迫撃砲+VT信管の組み合わせが、中共兵の人海突撃を破砕した。露人はこれを覚えているはずである。あるいはひょっとすると、倉庫に死蔵されている107mm迫撃砲弾を転用したいのかもしれない。

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 Matthew Roscoe 記者による2022-12-11+記事「BREAKING: Ukrainian helicopter reportedly shot down in Kostiantynivka, Ukraine」。
    ウクライナ軍の「ミル8」輸送ヘリが撃墜された。ドンバスで。乗っていた全員、戦死。

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 Hlib Parfonov 記者による2022-12-5記事「Russia Struggles to Maintain Munition Stocks (Part One)」。   シベリア鉄道&バイカル~アムール鉄道には容量制約があり、北鮮から鉄道でコンスタントに大量の弾薬を西送するのは難しいと論者は空想する。

 カスピ海のイラン船は、露政府から「ヴォルガ~ドン運河」の通航を許可されており、それによってイランから弾薬をロシア西部に搬入するのは、北鮮からにくらべて楽である。

 ※ロシア鉄道とイラン鉄道、および、ロシア鉄道と北鮮鉄道のゲージが違うために、もし弾薬類を鉄道で一貫輸送しようとすれば、どこかで弾薬の「大量積み替え」作業が必要になる。それはロシア国内の人手が足りぬためにとうてい不可能なのだろう。しかし小口ならばどうにかなるのではないか。

 ロシアはベラルーシの砲弾工場を動員しようとしている。野戦重砲弾と多連装ロケット弾の増産準備がベラルーシ内で進んでいると想像される。

 そしてベラルーシとイランが、砲弾製造工程の整備に関して協力体制に入ろうとしている。範囲は、材料のスチール精錬から砲弾塗装、砲弾輸送ケースにまで及ぶ。

 ベラルーシ国内の「Byelorussian 鉄工所」などの重工メーカーは、ロシアからの兵器注文に応じなければならず、困惑している。注文はベラルーシの「工業省」を通じて下命されている。

 ロシアからご指名で製造を命じられているベラルーシの「モギレフ金属加工」社。「地雷に強い強化カルダン軸を納品せよ」と要求されているらしい。〔いっぱんにカルダン駆動軸は列車の懸架装置上の自在継ぎ手を意味するが、機関車と地雷とどう関係があるんじゃ?〕

 「BSW研究センター」は、防弾鋼鈑を造れと迫られている。そしてなんと、アーマー・ヴェストに挿入するセラミックの代用品としてのスチール鈑のサンプル製作を求められているところだという。

 また迫撃砲の砲身や、「グラド」多連装ロケット砲のチューブの生産分担も要求されているという。困ったことにBSW社は200ミリ径鋼管までしか自信がない。「グラド」は220ミリなのだ。

 「ミンスク・ベアリング工場」は、大荷重に耐えるベアリングの増産を求められている。
 ※これはあきらかに貨物列車用だな。余談だが帝政ロシアは線路のバラスト石が得られないところでは砂を代用としていたが、砂は水で流される、大雨時の排水が悪いという短所の他に、それが乾燥していたとしても、こんどは、通過風圧で巻き上げられて車軸ベアリングに侵入し、摩擦を増やし、機械各部を磨耗させるという著しい短所があるのである。1830年代の英国鉄道界の発明品として、機関車や貨車とおなじくらいに「バラスト石」に関する知見の蓄積が大貢献していた。ステフェンソンは、鉄道の良し悪しはバラストにいくらかけるかで決まると断言している。察するに、ロシアの鉄道は今もバラストで中抜きをしているのか。

 ※この記事には、ロシアの主要軍需メーカーの「収益」の一覧表がついている。すごい資料だ。たとえばツーラ工廠では多連装ロケット砲とロケット弾の製造で369億ルーブル=5億8970万ドルを、2016年に稼いだと分かる。

 ロシア国内で製造されている砲弾単価の試算。2022年において、152ミリ砲弾は、1発が1532ドルで製造されている。「グラド」ロケット弾は1万4153ドル。「ウラガン」ロケット弾は10万3083ドル。

 ただし今日じっさいに判明している市価とはズレがある。たとえばいま、152ミリ砲弾は、1発が2000ドルから3000ドルで取引されている。したがってこの表の数値は過小か。

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 Defense Express の2022-12-9記事「Ukraine Receives Spare Parts for T-72B Tanks from Morocco, That Has Almost a Hundred Such Tanks」。
    ベラルーシが1999年~2001年に調達した「T-72B/BK」を、今、モロッコ軍が約100両、保有しているのだという。40両は稼動可能。60両は部品取り用。それらを、ウクライナに寄贈するという。

 モロッコ軍は、他に「M60」戦車も使っている。

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 The Maritime Executive の2022-12-9記事「NZ Navy Idles One-Third of its Fleet Due to Manning Shortage」。
   ニュージーランド艦隊の3隻に1隻は、人手不足のために、動かせないのだという。

 パンデミックが終ったので、民間の賃金がどんどん上昇している。それと、軍隊の給与体系は、競争ができぬ。
 いまや、民間の仕事なら、平均して1年で4万米ドル、稼げるのだ。それは水兵・兵曹の年俸よりも7000米ドルから2000米ドル、高い。

 民間企業に就職した方が稼げるから、水兵が次々に、去ってしまった。

 水兵たちの多くは、2022-5まで艦隊勤務を解かれて臨時に「新コロ検疫センター」の運営手伝いに駆り出されていた。この施設はもう必要なくなったが、その間に水兵たちの心が海から離れてしまった。そのことも離職を加速させている。

 2022-11までの1年間の海軍将兵の退職率は17%に近かった。定員割れした人員で、古い艦艇を稼働させなければならない。

 漁場監視のため遊弋するはずだった警備艦『ウェリントン』は、母港に戻し、長期繋留することになった。
 他にも同様の事情で繋船されているパトロール艇が複数……。

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 Defense Express の2022-12-11記事「South Africa Suspected of Weapons Selling to russia」。
   ロシア船籍の真っ赤な塗装のコンテナ貨物船『レディ R』が12-6に南アフリカのケープタウンに近いサイモンズタウン港に接岸した。そこから武器を搬出するのではないかと疑われた。

 埠頭で、中味のわからない謎の貨物がどんどん積み込まれた。

 作業は専ら、夜間に行なわれた。連続3夜。その周辺を武装兵が警固していた。

 12-9、同船は出港し、そこで初めてAISのスイッチを入れた。
 AIS情報によると、まずカメルーンに寄航し、それから1-15にイスタンブール着の予定だ。

 南ア国会の野党議員氏いわく。あきらかに「アームズコー」(南ア国防省のための兵器調達代理店)が関わっている。アームズコーが埠頭での積載作業車ドライバーを手配しているのだ。

 ※アームズコーとはなつかしい名前が出てきたわ。

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 2022-12-10記事「VERTIQ awarded and AFWERX Phase 1 contract」。
    Vertiqというベンチャーが出願中の特許が野心的。シングル軸の可動軸にモーターと2翅プロペラを1セットだけ搭載し、ヴェクタースラストを発生させることにより、多軸ドローンと同じ姿勢制御を可能にしようという。

 ※現在主流のマルチ軸ローターのドローンがこれから先も主流になるとは決まっていない。単軸でしかも2翅ローターとするのは、そうするのが最も揚力発生効率が高いからである。それだけ低エネルギーで重いペイロードを長距離運搬できることになる。負けるなよ、ヤマハ発動機。

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 AFPの2022-12-9記事「Baltics to up defence spending to three percent of GDP」。
   バルト三国は金曜日、国防費をGDPの3%にすると表明した。

 オランダ政府は金曜日、新しい原子力発電所を2箇所、同国の南部に建設すると表明した。化石燃料への依存を減らすため。運開は2035年になるであろう。

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 2022-12-11記事「Germany to weigh stricter gun laws after suspected coup plot」。
   政府転覆陰謀集団が武装一揆をおこす前に摘発したドイツ内務省は、銃器規制法の強化を検討中。

 当局は、一味からすでに1000梃もの銃器を押収した。しかしまだ500梃は合法的に所持され続けている。

 内務省の把握では、ドイツ国内には2万3000人の反政府一揆共鳴者がいる。これは去年より9.5%増えている。



日韓戦争を自衛隊はどう戦うか


尖閣諸島を自衛隊はどう防衛するか 他国軍の教訓に学ぶ兵器と戦法