特殊なレイアウトの外見相似から当然に疑えること。ZALAランセットは、イスラエルの「HERO-120」の技術がロシアに流入したものではないのか?

 Brendan Cole 記者による2022-12-17記事「Russia Changes Drone Launch Site Over Crimea Vulnerability Concerns: U.K」。
   ロシアは「シャヘド」系特攻ドローンの発射基地を変更した。いままではクリミア半島内から放出していたのだが、それを止めた。今は、クラスノダール地区から放っている。

 後方の補給ルートと関係があるのだろう。イラン製の特攻ドローンは、カスピ海の北西海岸のアストラハンに荷揚げされる。クラスノダール地区は、アストラハン地区のすぐ東隣である。

 現地時間の土曜の午前、オデーサに飛来した超音速の「オニクス」巡航ミサイル×2を宇軍は撃墜した。

 ※「シャヘド136」の追加調達バッチは量が少なかった。荷が着いたらすぐに全弾使ってしまうのが、今の露軍流のようだ。弾頭炸薬は36kgである由。高度100mを時速185kmで巡航し、最後は100mダイブして着発。レンジは2500kmある。

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 Nicholas Fiorenza 記者による2022-12-15記事「Rheinmetall and UVision develop Hero-R rotary-wing loitering munition」。
   12月7日にベルリンの軍事ジャーナリストは知らされた。ラインメタル社とユーヴィジョン社が合同で「Hero-R」という、クォッドコプター・タイプのロイタリングミュニションを開発中であると。
 写真によればこのローターはそれぞれ3翅。

 ミッション・ポッドから打ち出され、10分間滞空する。
 たった10分ということは、うろついて敵の出現を待っていたりは、基本的にしない。既知の目標にまっすぐに向う。

 開発の完成は2023末を予定している。

 全重1.5kgのものと、2.5kgのものを用意する。
 どちらも最高時速70km。
 弾頭は500グラムから1kgまで各種とりかえ可能。
 敵の塹壕の中に入っていって自爆できる。
 真下向きの対戦車HEAT弾もあり。

 ※あきらかにこのアイディアを横取りした試作品をロシアが開発研究中だ。また、UVsion社が数年前から売り出している「X字翼」の固定翼型のロイタリングミュニションのレイアウトが露軍の「ランセット」に似ている。偶然なのだろうか?

 そこで以下、英文ウィキとメーカーHPによって、「X字翼」の固定翼型のロイタリングミュニション・シリーズについて調べてみた。

 イスラエルの「UVision Air」社は、2011年からある。
 ミサイルと、ロイタリングミュニションを開発・製造・販売。
 支社が米国内とインド国内にある。

 米国支社は2019-02-21オープン。もう当時から「カミカゼ・ドローンズ」という表現があった。

 インド支社は「AVision Systems Private Ltd.」と称している。遅くとも2021-8-30には存在していた。
 ユーヴィジョン社と、ハイデラバードにある Aditya Precitech Pvt Ltd =APPL の合弁企業だ。APPL社はインドのDRDOから特命を受けてミサイルなどを製造している。

 会社HPに添えられている量産品の写真は、ユービジョンの「ヒーロー120」だと思しい。

 固定翼のロイタリングミュニションである「HERO」シリーズは、外形がほぼ相似で、サイズが小さいものから大きいものまで数種類のラインナップである。

 いちばんコンパクトな「HERO-30」は、ユーロサトリ2018に初出展された。全重3kg、弾頭重量500グラム、レンジ10km、滞空30分。電動モーターで尾端のプロペラを回す。キャニスターから放出すると翼が展張。

 ランセット・シリーズは、X字翼なのだが、折り畳み展張式ではなく、最初から固定式(4枚の主翼は一枚の可動舵)であるように見える。これはHERO-30/120型との微妙な相違点。しかしHERO-400EC型(自重40kg、弾頭重量10kg、レンジ60km)とは相同だ。

 「HERO-120」は、全重12kg、弾頭重量4.5km、レンジ40km、滞空60分。
 米海兵隊は2021-6-22にこの「120」型をイスラエルから買うと決めている。この売り込みを成功させるためにメーカーは早々と米国支社を置いているのだ。

 ZALAのランセットは、スペックとしてはこの「ヒーロー120」型に良く似ている。

 ウィキによると以下の如し。
 カラシニコフの系列企業であるザラ・アエロ・グループが、露軍のために開発した。
 2019-6に初披露されている。モスクワの「陸軍2019エキスポ」にて。

 最大レンジ40km。
 最大離陸重量12kg。

 弾頭重量は非公表。しかし、2kgはあるだろうと空想されている。〔センサー機材の容積があきらかに嵩張っているように見え、その分、弾頭重量は「HERO-120」よりも軽くせねばならないと考えられる。〕

 最高時速300km。
 カタパルトから発射。
 電動モーターでプロペラ駆動。

 別名「ランセット3」。
 アップグレードされた最新のモデルは滞空1時間可能。

 シリアに2020-11には投入されている。

 ウクライナで使われている証拠のビデオがSNSに出たのは2022-7である。

 相似形でもっと小型のものが「ランセット1」。ペイロードは3kg、最大離陸重量は5kg。つまり「HERO-30」よりは、ちょびっと大きい。滞空30分可能だと。

 イスラエルがインドに技術を移転した時点で、インドからロシアへの設計データ流出は、もう止められなかったのでは……?

 ※雑報によると、2014にクリミアを切り取ったときに鹵獲したウクライナ軍保有の「S-300」のドンガラを、露軍は2022にヘルソンに「デコイ」として並べて、ウクライナ軍の特攻ドローンを吸収させようとした。ところがそこに露軍の「ランセット」が二度にわたって吸引され、その命中ビデオが、露軍の手柄としてSNSに投稿されていたことが判明している。露軍には基本的に敵味方の区別がつき難いようだ。ワグネルが夜戦を避けるのも、同士討ちを防ぐ方法が確立されていないからなのだろう。ということは、昼間に煙幕を使って視界を悪くしてしまえば、ワグネル部隊を麻痺させられるのではないか。

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 Matt Yu, Novia Huang and Joseph Yeh 記者による2022-12-14記事「Taiwan cruise missile could reach Beijing: Ex-military research chief」。
   台湾の軍事技術開発局NCSISTの長(2003-12~2007-12)だったが退官した、海軍少将の【聾の字の下が共】家政(Kun Chia-cheng)の回顧談が先月、『Academia Sinica』に載った。

 それによると、国産の巡航ミサイルは「雲峰プロジェクト」、暗号名「W99」として推進された。
 マッハ3で巡航し、最後は垂直に標的に突っ込んで地中貫徹を期すもの。

 推進させたのは総統の李登輝。

 しかし国民党の色の濃い台湾軍は、そんなものは国産できるわけがないと、李の降板にあわせてプロジェクトを葬ろうとした。

 しかし李登輝の次の総統の陳水扁は、みずからNCSISTを視察して説明に納得し、プロジェクトを継続させた。

 げんざい、公式には、このミサイルのレンジは1000kmしかないことになっている。※真相については拙著『台湾有事なら~』も見て欲しい。

 KungがNCSITに在籍していたころ、そこではHF-2やHF-3も開発していた。

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 Lawrence Chung 記者による2022-12-18記事「Taiwan has missiles able to hit Beijing, former head of island’s top weapons builder confirms」。
    「雲峰」ミサイルは超音速巡航ミサイルだが、それよりも射程の長い「HF-2E」という地対地巡航ミサイル〔おそらく亜音速〕ができていて、これは北京まで届く。

 Kung Chia-cheng によると、台湾が持っている巡航ミサイルで、北京に届くのは、この2タイプだという。

 Kung の回顧によると、アメリカ合衆国はかつて一度、台湾が弾道ミサイルを開発しようとしたのを阻止しようとし、軍艦からそれを発射するのに必要なコンポーネントの提供を拒否したという。

 ※多数のロシア人を裁く国際軍事法廷がハーグ市で開かれるだろうというので、テレビでさんざん戦争を煽ってきた連中がこんどは真顔で、オランダの堤防を破壊して国まるごと水没させると脅している。

 ※NYTは、露軍が開戦時に部隊に配った詳細な進行表を入手した。なんと開戦から18時間でキエフを占領してしまうつもりであったことが判明した。

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 AFPの2022-12-16記事「Croatia lawmakers say ‘no’ to Ukraine troops training」。
    EUは各国分担で、ウクライナ軍将兵1万5000人を訓練させてやろうとしているのだが、クロアチアでは議会が反対したため、この分担はできなくなった。クロアチアの大統領も、反対の立場である。ロシアとの戦争に巻き込まれるというので。大統領には軍隊の指揮権がある。

 首相と政府は訓練受け入れに賛成。しかし、議会を説得できなかった(三分の二の賛成が必要だった)。

 クロアチアの分担予定は、たかだか百数十名のウクライナ兵の訓練であった。それすら、怖くてできないというのが、反対した97人の国会議員の胸の内である。

 EUの計画では、最大の訓練拠点はポーランドにつくられ、その次がドイツ国内に設営される。資金はEUから供給される。

 ※雑報によると、人手の足りぬロシア軍を維持するためには、動員した徴兵たちの除隊年限を、2年間、先に延ばすしかないそうだ。どんどん「あの国」化して行くぅ~。

 ※ロシアから原油をタンカーで輸出するときの輸送コストが今、1バレル19ドルに跳ね上がっている。これはウクライナ戦争前には3ドルだったものだ。ロシアは今、原油1バレルを42ドルで売っているから、経費を差し引いた儲け分はかなり圧縮されてしまう。ちなみにブレントオイル(西側自由流通原油の指標)は82ドルで取引されている。ロシアはそれより安くしないとインドに買ってもらえない。この結果、どうなっているか。ロシアの油田城下町であるトムスクの大学では、なんと暖房用の燃料代をまかなえなくなってしまい、学生たちは教室内でコートを羽織ったままである。

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 2022-12-18記事「Say hello to the toughest material on Earth」。
   ローレンス・バークレイ国立研究所が、世界で最も硬い合金を創り出した。クロム+コバルト+ニッケル合金で、極低温下でも割れにくい。
 熱伝導が良く、しかも可鍛性。

 ふつう、硬い合金は、靭性が無かったりする。また冷脆性があったりする。しかしこの新合金は、温度が低いほど、靭強になるという。

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 Defense Express の2022-12-18記事「How Much 155mm Ammunition Costs Now: an Example of the Rheinmetall Contract For 10,000 Shells」。
    ラインメタル社は、欧州の、名前非公開の注文主から、1万発の155ミリ砲弾(L15)を受注した。
 契約総額3300万ユーロ。
 すなわち、1発の新品砲弾の値段は3万3000ユーロだということになる。

 これはとてつもない値上がりだ。
 2020~2021の相場は、1発が2000ユーロくらいだったのだから。

 全世界的な砲弾需給の逼迫が、この値上がりを正当化する。他に売り手はいないのである。

 ※第一次大戦でどのようにして「成金」が生まれたか、また朝鮮特需がどれほど戦後のカンフル剤となったか、理解できる気がするよ。

 ※室蘭の製造能力が余ってるんだから、あの辺に「砲兵工廠」を建てようぜ。財源は建設国債+社債でいいだろう。将来大儲けができる上に、米国に恩を売れる外交カードともなる。砲弾を提供する代わりに、なにをしてくれますか、という関係を築ける。製品の出荷輸送も、近くのアラスカから飛来するC-17がしてくれるから心配しなくていい。