2200年ものあいだトルコの丘の上に残ってきた「ガジンタプ」城が、こんどの地震で崩壊してしまった。

 Emma Helfrich, Joseph Trevithick, Tyler Rogoway 記者による2023-2-4記事「Why Shooting Down China’s Spy Balloon Over The U.S. Is More Complicated Than It Seems」。
    「バス2台か3台分の大きさ」と伝えられたのは、バルーンのことではなくて、その下に吊るされているのが見えたトラス構造+諸器材のこと。そんなガラクタが高度6万フィートから地表へ落下するのは望ましくなかった。だから陸地での撃墜を避けた。

 ※この種の気球のコースを制御する方法は、上昇&下降によって、狙った風向の風が吹いている層まで遷移すること。そのためには、どの高度でどの方角の風が吹いているのかを、把握できていなければならぬ。それは地上にある気象観測用の特別なレーダーを使うしかないはず。しかも北米大陸は広いから、そうしたレーダーが複数、グリッドを分担して観測している必要があるはず。どこかに、地上の協力者がいたと考えられるのだ。そのヒューマンスパイ網を炙り出すために、泳がせ捜査をしていたのではないかと、私は疑う。

 F-22は、他の戦闘機よりも高い高度で活動できる。6万5000フィートくらいはわけはない。だから遅くとも気球がモンタナ上空にあった時点で、飛ばしていた。

 巨大バルーンは、レーダーの反射信号としては鳥と同じくらいにしか映らない。止まっているも同然な対地移動速度なので、ドップラーレーダーは無視してしまう。

 それゆえ、科学実験用の高々度バルーンには、わざわざレーダー反射材をとりつけてあるのが普通である。

 高々度気球の内部の気圧は、1平方インチあたり1ポンドにもならない。だから小穴があいてもすぐにしぼまない。
 ※気球の頂点に穴が開けば、さすがにヘリウムの漏出は早くなるはずだ。ということは、対戦車ミサイルの「BILL」のような、下向きに爆発する特殊なAAM弾頭が必要になるかもしれない。それで標的の直上を航過させるのだ。近接信管はもちろんレーザーを使うよりあるまい。ミサイル本体にもパラシュートをつけて、地表へのダメージを局限する配慮は可能であろう。

 次。
 Boyko Nikolov 記者による2023-2-6記事「State of Ohio may produce a dozen Abrams tanks monthly for Ukraine」。
    ジェネラルダイナミクス社が公表。
 オハイオ州リマ市にある同社の工場で、ウクライナ向けのM1エイブラムズ戦車を生産する。

 次。
 2023-2-6記事「United States shows how artillery rounds for Ukraine are produced ? NYT」。
   NYT記者もペンタゴンの許可を得て、スクラントンの砲弾弾殻工場を取材したようだ。
 長さ6m、重さ900kgの鋼棒が工場敷地に到着する。

 これを自動ノコギリが切断する。切断された塊を「ブランク」と呼ぶ。
 ロボットアームがブランクを、天然ガス炉に送り込む。1000度になるまで1時間、熱する。

 ついで、3段階の圧延工程を進む。この時、棒状の塊が、細長いコップ状になる。

 そのあとコンベヤーで加熱炉に運び、4時間の熱処理工程。こうすることで、砲弾が炸裂したときに弾殻が適宜のスチール破片となって飛び散るようになる。

 砲弾の肩の絞り。直前に加熱してから絞る。

 銅帯を熔接する。これは人手による作業。

 塗装がおわった半製品は、ミドルタウン工場へ運ばれる。そこで炸薬が充填される。
 充填後、X線で検査される。「す」が入っていないかを確認するのである。

 完成品の一部は抜き取られてアリゾナ州のユマ試射場へ。そこで陸軍がじっさいに榴弾砲から発射して調子をたしかめる。
 OKとなったら、残りのバッチは「合格品」の太鼓判を押される。

 次。
 2023-1-26記事「British MP demands large armaments factory in Poland for Ukraine」。
   英国議会の国防委員会の委員長トビアス・エルウッドが『デイリー・テレグラフ』紙上で提案した。武器弾薬を今のようにウクライナへ贈与し続けられるもんじゃないから、このさいウクライナに隣接したポーランド国内に新工場を建設して、それによって長期的な供給体制を磐石化するのが合理的だろうと。

 英政府はすでにポーランド政府とそれについて協議し、法的な準備を始めている。

 可能性として、そこで「レオパルト2」のライセンス生産もするかもしれない。これは新聞記者の感想。

 ※ひどい動画を見た。ウクライナの歩兵が、対戦車擲弾をとっかえひっかえ、姿の見えない敵に向けて、無照準で無駄撃ちしているのだ。敵には文字どおり何の損害も与えることがないだろう。このような火器の使用法が合理化されるのは、これから部隊が総退却するという場合だけである。練度の低い軍隊にいたずらに高性能武器を与えても、ちっとも問題は解決しない。今のウクライナ陸軍のレベルに最もふさわしい援助兵器は、迫撃砲だ。それは戦車砲より少し遠い間合いから、敵と交戦できる。ドローン観測とコンビで使えば、敵AFVも破壊できる。自動車を使えば陣地転換も速くできる。西側諸国は、4.2インチ=107mmの中型迫撃砲を使わなくなったが、その在庫がどこかにあるのではないか? それを送ってはどうか?

 ※雑報によるとアゼルバイジャンで2022年に製造された120㎜迫撃砲弾や、同国製の82ミリ迫撃砲「20N5」が、ウクライナ軍部隊によって使用されている写真がSNSに出てきた。アゼル人は、よく分かっている。

 次。
 Margarita Assenova 記者による2023-2-2記事「Bulgaria: Russian Oil and Perpetual Elections」。
   ロシアの原油の欧州における最良のバイヤーは、ブルガリアである。全世界でも、支那、インドに次ぐ量を買っている。すなわちトルコよりも多い。

 黒海の港「ブルガス」には、ロシア原油を精製する石油プラント。これを所有するのはロシア企業の「ルコイル」である。原油タンカーはノボロシスクからやってくる。処理能力は19万6000バレル/日。

 ブルガリアには選択肢は他にもあるのに、ロシアの工作員にすっかりやられていて、政府が動けない。
 すなわち、カザフスタン原油をカスピ海パイプラインでノボロシスクで積み取ることは可能なのである。同じくジョージア原油をスプサ港で積み取ることも。

 ようやく1月、暫定ブルガリア政権は、ギリシャとの間で、げんざい機能していない「ブルガス~アレクサンドロポリス」原油パイプラインの再建について相談する覚書を交わした。このパイプラインを使えばブルガリアは、トルコ海峡を迂回してギリシャ経由で原油を輸入できるようになる。

 その場合でも、露企業保有の精油所は問題だ。ドイツ政府はすでに、ロシアのロスネフト社がドイツ領内で保有していた精油プラントをドイツ政府の管轄下に置いた。それと同様の措置をブルガリア政府も早く取ることが西欧諸国から期待されている。

 しかしブルガリア国会内にロシアが操縦するロビイスト議員が多数混じっているため、話は前に進まぬ。

 ブルガリアは2022年のなかば、いちど、ロシア産の天然ガスの代金をルーブルで支払うことを拒否。そしたらプーチンがガスを止め、結果、内閣が崩壊してしまった。ポーランドは、同じ目に遭っても乗り切れているのだが、ブルガリアの政権は4党連立なので、外から揺さぶられると、はなはだ脆い。

 アゼルバイジャンおよび米国からガスを調達しようとした内閣は、ガスプロムの手先の国内企業によって倒壊させられた。

 また、ウクライナに、迂回的に武器と弾薬を提供しようとした内閣も、親露派の議員たちによって、やはり倒された。
 このように、めまぐるしく短命内閣が入れ替わってしまう。ブルガリアでは。

 現在、ロシアからの妨害にもかかわらず、ロシア原油を精製したガソリン、軽油(diesel oil)、エンジン潤滑油(motor oil)が、ブルガリアからウクライナへ有償で輸出されている。その額はブルガリア経済の1%を占める大きさ。
 ということはロシアは、「プライスキャップ」に加わる国へは原油は売らぬ、とイキリながら、淡々と、プライスキャップに加わっているブルガリアへ原油を届け続けているわけだ。

 とはいえ、ウクライナ軍の車両が、元をたどるとロシア原油を精製したブルガリア軽油だとプー之介が知ったら、どうなるだろうか。それは誰も知らない。

 次。
 MUNIR AHMED 記者による2023-2-6記事「Pakistan blocks Wikipedia, says it hurts Muslim sentiments」。
   パキスタン政府のメディア規制部局は、2月6日から「ウィキペディア」をブロックした。すなわち同国内からは閲覧できなくした。禁止の理由は、イスラム感情を傷つけるからだと。

 パキスタンには宗教不敬法という国内法があり、イスラム教を冒涜すると最高刑は死刑になる。

 ※雑報によると、ロシア政府は2-28から「ユーチューブ」をブロックすると宣言している。

 ※雑報によると、かつてコロムビアの麻薬ボスが気まぐれに輸入した8頭の河馬が現地の自然の中でどんどん増えてしまい、いまや140頭の集団になり、コロムビア生態系の頂点に君臨し始めたと。

 ※雑報によると、AIが3Dのヌードモデルを本物レベルのクオリティで描画するようになり、「オンリーファン」で稼いでいたリアルモデルたちが失業の瀬戸際にある、と。

 ※ジェネレイティヴAIの心理戦への応用が低調なので、私は驚いている。軍隊内の私的なチャットを装った偽情報工作ができるはずなのだ。AI同士で会話させておけばいい。それがさりげなく提供し続ける情報は、ぜんぶ「工作」で、敵の本物の将兵の士気を沮喪させてしまうのだ。

 次。
 Defense Express の2023-2-6記事「russian Navy Decommissioned Cruiser Submarine Intended to Take Hundreds of “Kalibr” Missiles」。
    ロシア北海艦隊所属の核動力潜水艦の『ドミトリードンスコイ』(6隻建造された「アクラ級」の最後の生き残り)が、退役工程に入った。
 セヴェロドヴィンスク軍港で解体される。

 この艦は1981就役。2014年からは、SLBMの「ブラヴァ」の発射試験用にひたすら繋留されていた。2020年以降はその任務も解かれていた。

 ※雑報によると、ロシア国外からロシア国内に送金する者(すなわち徴兵忌避逃亡者)が最も増えた国はウズベキスタン。総額はアルメニアからの送金額の4倍を越えていて、ダントツである。アルメニアに次ぐのが、キルギスとジョージア。カザフスタンはジョージアの半分もない。カザフに逃げても安全ではない(いつ送還されるか知れない)と、ロシア青年たちが判断していることが窺える。