ヒューロン湖上2万フィートで気球を撃墜したのは、州兵空軍のF-16C/Dだった。使用したミサイルは「AIM-9X」。

 Chris Buckley 記者による2023-2-13記事「China’s Top Airship Scientist Promoted Program to Watch the World From Above」。
   2019年に北京航空航天大学の気球研究者 Wu Zhe 教授が高度6万フィート以上を浮揚する飛行船をつくってほぼ地球を一周させたという。そのコースにはアメリカ合衆国南部の国境近くも含まれていた。

 Wu教授はかれこれ20年近くも、操舵可能な気球の開発を続けてきたそうだ。

 このたびバイデン政権が制裁リストに加えた6企業のうち3社は、Wu教授がその立ち上げに深く関わっている。

 Wu教授は、今月、66歳になる。
 地上からの高さ12~62マイルを「近宇宙」という。そこに研究を集中させてきた。
 固定翼機にとっては高すぎ、衛星にとっては低すぎる領域だ。

 2019-7にwuが飛ばしたバルーンは、全長330フィート近く、重さは数トン。サウスカロライナ沖で撃墜したやつより大きかった。これは高度2万m=65000フィートの成層圏で地球を一周した最初の操舵可能型気球であった――と、彼は広東省の新聞『サザン・デイリー』の記事で自慢している。

 Wuが2004年に北京に創設したEMAST〔=鷹人航空科学技術集団?〕も、さまざまな気球を飛ばしているようだ。
 EMASTはWeChatに公式アカウントを開設している。

 気球を地球を一周させて、回収することに初めて成功したのは、2020年だったという。
 その後、2個の気球を同時に操ることもEMASTにはできるようになった。

 2022にはEMASTは3個の気球を同時に昇騰させて「空中ネットワーク」を構築しようとした。これはEMASTのウェブページに書かれていたのだが、このウェブページは現在、閉鎖中である。

 最終的な目標は、2028年までに高度8万フィート以上に多数の気球を浮かべて通信ネットワークを構築することだったという。

 2015年に『人民日報』はWuの業績を称賛している。このときは北支の上空65000フィートに気球を長期間、とどまらせたという。

 ※イーロン・マスクがスターリンク衛星群でしていることを、もっと安価な気球でやってやろうと思ったのか? 自分が関わった会社を上場させるなど、商売野心は満々の御仁と見える。通信網プロバイダーとして、富豪となるのが夢だったのか。

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 ストラテジーペイジの2023-2-13記事。
   イタリアの特殊作戦軍は、歩兵が担いで運搬できるロイタリングミュニションとして、イスラエル製の「Hero-30」を選んだ。米国製の「スイッチブレード」ではなく。

 スイッチブレードが5.5kgなのに対して、「Hero-30」は3kgである。ただしコントローラーは別。
 スイッチブレードが15分滞空するのに対して、「Hero-30」は30分滞空。

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 Sakshi Tiwari 記者による2023-2-13記事「Russia Is Launching ‘Military Balloons’ With Corner Reflectors Into Ukraine To Exhaust Its Air Defenses ―― Kyiv」。
    2月12日にウクライナ空軍が発表。露軍が、コーナーリフレクター(三角の金属板を複数枚接合して、レーダー波を強く反射させるもの)をとりつけたデコイバルーンを放流してきたが、撃墜したと。ついでに無人偵察機も落としたと。

 露軍は、囮バルーンに宇軍のSAMレーダーを反応させ、そのSAMレーダーに対して「Kh-31P」空対地ミサイル(対電波ホーミング)を、はるか上空の戦闘機から発射する。そういう手口だそうだ。

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 2023-2-13記事「Pentagon hires firm to deliver logistics solutions for donated equipment」。
    メリーランド州にある「アメンタム」という会社。ペンタゴンはここと契約して、ウクライナに流入する大量の武器弾薬需品を荷捌きして配給する、後方整理業務を委託する。

 この会社は、レーダーのような高度に複雑なハイテク機材の扱いにも慣れている。

 さっそく、欧州の複数の場所に活動拠点を構えるという。
 契約期間はまず1年。その後、1年単位で4回、延長してもらうことあり。

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 The Maritime Executive の2023-212記事「Sudan’s Leader Agrees to Host Russian Naval Base on Red Sea」。
    スーダン政府はロシア海軍のために紅海に面した港を提供してやることになった。

 軍艦4隻と、水兵300人が、「ポート・オブ・スーダン」に常駐するであろう。
 軍艦の中には核動力艦が含まれるという。

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 2023-2-13記事「Ukrainian intelligence helps prevent an overthrow in Moldova」。
    モルドバ政府を転覆させようとするロシアの工作を、ウクライナ政府がモルドバ政府に警告し、未然に防いだという。

 「暴徒」を自然発生にみせかけて組織し、それに「軍人」を混ぜて、政府庁舎を襲撃させ、傀儡新政府と取り替えてしまうつもりだった。

 ※つまりは私服スペツナズの「なりすまし」と「無徽章部隊」を連携させる、いつものハイブリッド作戦。

 工作のために、ロシア人だけでなく、ベラルーシ人、セルビア人、モンテネグロ人も密かに潜入動員されていた。

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 Christoph Strack 記者による2023-2-12記事「Germany sees shortage of graves for Muslim immigrants」。
   総人口8300万人のドイツには今、500万人以上ものムスリムが暮らしている。とうぜん、毎日、死者も出るわけだが、土葬ができる墓地を見つけ難いため、難渋するという。

 ドイツには墓苑は3万箇所以上ある。三分の一はキリスト教会の所有地。のこりは市営墓地だ。

 連邦を構成する16州すべてにそれぞれの「埋葬法令」がある。

 ユダヤ教とムスリムは、棺は使わず、屍衣にくるんで土葬する。火葬は宗教的に禁止されている。集合墓への改葬も認めない。ドイツ当局はそれに妥協してきた。

 数週間前、ベルリン市は、市営の墓地はもはや満杯になりつつあると警告した。

 テンペルホフのトルコ系モスクでは、ほぼ毎日、葬送の儀がある。ここでは信者の遺体を棺桶に入れてトルコまで空輸するのである。

 戦後の経済成長期に「ゲスト・ワーカー」として旧西ドイツに招き入れられた多くのトルコ系労働者1世は、死んだら生地に葬られたいと願っているのである。

 トルコイスラム宗教問題ユニオン(DITIB)というドイツ国内の団体が「葬式保険」を運営している。団体は、加入者が死んだらその遺骸をトルコへ空輸し、埋葬してやる。

 ベルリンのトルコ人墓地の歴史は古く、ドイツが1871年に統一されるより前の1866年から存在する。

 だからトルコ人の埋葬問題は大きな課題にはなっていないのだが、今、浮上している問題は、2015年~2016年に大量にやってきたシリア人難民たち。彼らがドイツ国内で死亡した場合は、遺体を出身地へ空輸することなど、事実上、不可能だ。

 ※トルコももっか、場所によっては作法にしたがった埋葬が不可能になっているであろう。ところでタイムリーな本が出た。鈴木貫太郎氏著『ルポ 日本の土葬』(23年1月pub.)。版元は、小川寛大さんの「合同会社宗教問題」だ。同書によれば、日本のイスラム教徒は23万人。うち日本人は6万人弱という。認識をあらたにさせられたのは、大分のトラピスト修道院などではカトリックの土葬が今でも実施されているという話。しかるに「ムスリム墓地」を新設しようとすれば、過疎村であっても必ず近隣市町村から反対されるそうだ。これは命名が下手じゃないかと思った。「一神教信者墓苑」等を標榜するなら、住民をいたずらに刺激することもないであろう。



ルポ 日本の土葬――99.97%の遺体が火葬されるこの国の0.03%の世界