Marc Selinger 記者による2023-3-9記事「AeroVironment faces warhead supply constraints」。
アエロヴァイロンメント社が泣き言を言い始めた。「スイッチブレード600」を大増産したいのだが、「弾頭」パーツが品薄で、そのため、完成品を思ったようにウクライナへ送れなくなっているという。
じつは、「スイッチブレード600」の弾頭は、「ジャヴェリン」と同じ物。製造しているのはジェネラル・ダイナミクス・オードナンス社である。それを、「ジャヴェリン」のメーカーであるロッキードマーティン社が、先に奪ってしまうのだ。
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Maciej Szopa 記者による2023-3-8記事「Su-57 Felon Scoring First Victories」。
スホイ57が、昨年10月、ウクライナ空軍のスホイ24とスホイ27を撃墜していたという噂。
このときウクライナ軍機はHARMによってベルゴロドの基地を攻撃していたのだが、スホイ57はそれを返り討ちにしたわけだ。話が本当ならば。
ロシア側の宣伝では、「R-37M」という新型の長射程AAMの戦果だという。それはマッハ5で飛び、飛行機のような空中機動する目標に対しても距離200kmで当てられるのだという。
「R-37M」は2023-2に不発弾がウクライナ側によって回収されているので、いつかは真相が公表されるだろう。
ほんとうはS-300/400の手柄だろうという疑いも、根強い。
スホイ57がウクライナ軍機を撃墜したと2023-2に報じたのは英国メディア。そのスホイ57は、キンジャルASMを吊下したミグ31の護衛機であったという。
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2023-3-8記事「Swiss weapons transfer to Ukraine linked to UN Security Council labeling Russia as aggressor」。
スイス連邦議会の下院は、武器も弾薬もNATOには売らぬ路線を続ける。
条件がある。国連総会でロシアが「侵略国である」と宣告されることだ。それには国連総会で三分の二の賛成が必要。ハードルは高い。
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Boyko Nikolov 記者による2023-3-3記事「Russia is returning to the concept of a multi-thousand tank fleet」。
今のロシアのように戦車を全力で大量生産しようとするときに問題になるのが、改修のつみかさねによって戦車のバージョンが違っていること。
たとえば同じ2022年に製造された「T-72B3M」と「T-72B」は、製造ライン的には、もう、大違いなのである。
もしこれをひとつの工場でもろともに製造させようとすれば、「最大増産せよ」という目的を、合理的に追求することはできなくなる。
すなわち、ロシア政府が最大量産を欲するのならば、戦車のバージョンが違うごとに、ひとつのそれ専門の工場を別に建てるべきなのだ。
ロシア最大の戦車ファクトリーたる「ウラル車両工場」も、なにか1車種の大量生産に特化するべきなのだが、新型戦車の試作や、既製戦車の改修/整備、あるいは破損戦車の修理までもやらされている。これは国家総力動員体制としてまったく合理的ではない。それをさせている「軍政」が無能と評するしかない。
昨年の9月、ロシアに2箇所の、まったく新規の戦車修理プラントが出現した。民間人の工員は合計して500人ちょっとらしい。その人数だと、ずいぶん小規模なスケールだ。
ところが敷地面積を見ると、新工場のひとつは25万平米(モスクワ地区)。もうひとつは18万平米(ロストフ地区)。合計すれば、ウラル車両工場の半分に匹敵する。ウラル車両工場は2万人の工員を働かせている。
これは何を意味するか。公表されていない公務員の職工が2つの新プラントに大量に配されるのか? さもなくば、集めるべき工員が集まっていないのか。
推定だが、モスクワ新工場は、戦車の近代化改修の専門とするのではないか。そしてロストフの新工場は、修理の専門工場なのではないか。
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Boyko Nikolov 記者による2023-2-28記事「That’s why the sanctions don’t affect the T-90M tank production」。
T-90Mの神経系統。弾道コンピュータ、昼/夜/サーマルイメージ視察カメラ、風センサー、砲身歪センサーを「R-168-25U-2」というデジタルステーションにまとめてある。
このデジタルステーションは、しかし制裁前と後では、中味が違っている。
西暦2000年の製品だと、ロシア製のパーツを40%しか使っていなかった。が、2017年時点では、ロシア製のパーツが80%に増えている。制裁のおかげで、西側製のセンサーやチップは使えなくなっているわけだ。
デジタルステーションとは独立した器材もある。そこにもかつては輸入のチップ(Xilinx とか Altera)が使われていたものだが、今日ではロシア国内製の「5578TC084」や「5578TC064」というチップで代用されている。
※なんの問題もなくT-90やT-14は量産できるのだというロシアの宣伝をそっくり受け売りする記事で、この記者の立ち位置はどこにあるのか、興味が深まる。この記事がスルーしている現実のネックはなにか? ある西側チップの同格品を、少数ロット製造することと、急速に大量に製造したり調達することのあいだには、大きな懸隔があるだろう。必要なチップがジャストインタイムにひとつでも揃わないと予期されれば、西側の自動車製造ラインは操業を抑制するしかない。完成品に、ならないんだから。とうぜん、ある戦車を一、二両製造することと、100両、200両製造することとのあいだにも、時間の壁、資源の壁がたちはだかる。2014以前に輸入できた水準の工作機械を輸入ができなくなっている今、どうやって工場の設備を増強するのか。低品質工作機械をかきあつめ、代用品質バージョンを納品するしかないというのが、合理的な答えではないのか? そこから人々の目を逸らして、この記者は何をしたい?
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2023-3-9記事「Missile attack on Ukraine: 81 missiles, including six Kh-47 Kinzhal」。
ウクライナ空軍の発表によれば、今回、露軍は次のものを発射した。
Kh-101/555 空対地巡航ミサイルを28発。
海上発射式巡航ミサイルカリブルを20発。
空対地巡航ミサイル Kh-22 を6発。
空対地巡航ミサイル キンジャル を6発。
S-300を13発(対地攻撃)。
シャヘド136/131を 8機。
また、8発のKh-31Pと、6発のKh-59(どちらもAAM)が、対地攻撃のつもりで発射されたが、これらはすべて、目標に到達しなかった。
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Defense Express の2023-3-9記事「Kh-101 Missiles Are Less Effective at Night, But russians Keep Shooting in the Dark」。
ロシア製の巡航ミサイル、たとえば「Kh-22」や「Kh-47」は、夜は地形照合がうまく機能しない。そのため、基本的にこれらは、昼間に飛ばす。
しかし今次戦争で例外的に、夜間に発射したケースがある。ひとつは開戦劈頭。もうひとつは2022-2-16。そして今回の2023-3-9だ。
巡航ミサイルの誘導装置は大別して4つある。
まず慣性航法システム。ジャイロだ。しかしこれは、西側最新のレーザージャイロ内臓チップを使っても、1分飛翔するごとに3mの誤差が蓄積されてしまう。旧式のジャイロスコープならば誤差はその3倍になる。
要するに巡航ミサイルをINS航法だけで発射すると、3時間飛翔させた後では標的から500mも逸れてしまう。大都市を無差別に空襲する用途にしか、これは役立たない。
次に巡航ミサイルは、衛星航法電波を利用することができる。だがとうぜんながら、衛星航法電波は、敵によって電波ジャミングやスプーフィングを受けてしまう。よって、これに頼るのも考え物なのだ。
頼りになる航法システムは、TERCOMだ。
巡航ミサイルから下向きにレーダー電波を発射して、地形を読む。それを、事前に記憶させられているMapデータと照合すれば、今、正しいコースを飛んでいるかどうか、自律的に確認できるのだ。
TERCOMにも弱みがある。海面はもちろんだが、海面に等しいようなまったいらな地面がどこまでも続いている陸上だと、自己位置をロストしがちなのである。できれば、高い山や深い谷などの特徴的な起伏変化を辿れる、そんな地形Mapを参照したい。
しかし現実世界には大砂漠もあれば大草原もあり、大森林や大氷原も多い。
そこでDSMACが発明された。
これも一種の地形Mapデータ利用システムなのだが、土地の標高変化をレーダーで辿るのではなく、道路の十字路のような、鳥瞰したときに特徴を識別しやすい参照点を、光学イメージセンサーによって、次々に見いだして行くのだ。
DSMACは複雑な印象処理をしなければならない。季節や日時によって鳥瞰風景は変わるものである。夕方と朝方では影も変わる。夜の照明の有無によってもガラリとイメージは変化するだろう。そして、真っ暗闇で照明も無いとなると、もうお手上げだ。
暗夜であっても地表が上空からありありと視認ができるような高性能な熱線イメージシステムは非常に重くなり、電力も喰う。しかも相当に高額なので、大量に発射して使い捨てする巡航ミサイルに搭載しようと考える者はいない。どこまで高性能化させたところで、霧や煙や偽装網やデコイなどによって、イメージセンサーは無力化されてしまう。そこへの投資はほどほどにしておかないと、資源と予算の無駄遣いだ。
露軍の「Kh-101」は、さいきん、DSMACとTERCOMの両方をアップデートした。
かたや露軍の「Kh-555」と「カリブル」は、TERCOMしか備えていない。
ならば露軍はどうして敢て夜間に巡航ミサイルを発射したのか?
おそらく、宇軍のMANPADSを回避するためだ。ウクライナ兵は昼間であれば目視で巡航ミサイルを発見し、MANPADSを発射して撃墜してしまう。
しかし夜間であれば、目視で遠くの巡航ミサイルを発見することはできなくなる。
だが、他の理由もあるかもしれない。
たとえば、彼らのDSMACが、じつは低性能すぎるのかもしれない。不具合が多くて役立たないから、けっきょくTERCOM頼りとなる。それだったら、さいしょから夜間に撃った方がいい。
あるいはまた、西側の経済制裁のせいで、DSMACの製造が間に合わないのかもしれない。
あるいはまた、飛翔途中のウクライナの道路がいまや弾痕だらけとなり、都市もガレキの山と化してしまっているので、DSMACの戦前版の古い参照Mapが、もはや役に立たないのかもしれない。最新のMapデータの整備が、できていない可能性があるだろう。
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Defense Express の2023-3-9記事「ICEYE Makes a Difference: Ukrainian Intelligence Spotted and Destroyed Over 7,000 Targets Thanks to the SAR Satellite」。
民間の衛星写真サービスICEYE。
この会社からウクライナ国境や露軍後方地域の写真を買って、軍に寄付しようという民間有志の活動が5ヵ月前にスタートしている。
いらい、この有志の発注によって1000枚近くの写真が撮影された。その結果、露軍の360箇所の幕舎、7321個の兵器の所在をつきとめることができたという。
SSMやSAMの発射車両ももちろん含まれている。
写真はSARイメージなので、夜間も雲も関係ない。
クラウドファンディングは当初、バイラクタルのTB2を買おうじゃないかという方向だったのだが、それよりもSAR写真のほうがずっと価値があることが認識されつつある。
※雑報によると、「UJ22」という、見た目「セスナ機」の無人特攻機を、ウクライナは量産開始した。航続距離が3100kmもあり、搭載爆弾量は300kgだという。
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ストラテジーペイジの2023-3-9記事。
第一次大戦と今次ウクライナ戦争とは、ちょっと塹壕戦の様相が違っている。どうしてか?
今、露軍と宇軍は、総延長2500kmの対峙線で向き合っている。
その2500kmの全部を陣地化工事することが、人手不足のために、両軍ともに、できていないのだ。
WWIのとき、ロシア戦線は、総延長1300kmだった。そこに貼り付けた兵員は、数百万人だった。
それに対して今、露軍が動員できている兵員は、数十万人というところ。とても2500kmの築城土工には足りない。
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Andrius Sytas 記者による2023-3-10記事「Russia can fight in Ukraine for two more years at current intensity, Lithuania says」。
リトアニアの軍情報部長氏いわく。露軍は今の調子で、あと2年間は、戦争を続けられる、と。
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Joseph Trevithick 記者による2023-3-9記事「USAF Testing ‘Mutant’ Missiles That Twist In Mid-Air To Hit Their Targets」。
米空軍が斬新なAAMを開発中である。これは敵の超高速ミサイルを空中で撃破するためのもので、なんと、ミサイルの「首」だけ、向きを変えられる。
そしてこの「首」からショットガンにように破片を前方に飛ばし、すれちがった敵のミサイルを捕捉するという寸法なのだ。
この最新「榴霰弾」技術を使えば、たとえば、我がAAMの後方から追い越すように飛んでくる敵の高速ミサイルの前路に、この「散弾」を発射してやり、その破片の雲の中に敵の高速ミサイルが飛び込むことで、自滅させるという運用も可能になる。