Isabelle Khurshudyan and Kamila Hrabchuk 記者による2023-4-8記事「Facing critical ammunition shortage, Ukrainian troops ration shells」。
最前線のウクライナ軍砲兵。砲弾が不足しているため、目標をよく選ばなくてはならない。敵歩兵の小グループは、優先目標とされる。しかし続けて2発は撃たせてもらえない。
もしも10人とか15人の以上の敵歩兵部隊がこちらの陣地に迫ろうとしているような場合は、最優先で砲撃して動きを止めねばならない。その情況ではタマは惜しめない。
宇軍の前線近くに地下の秘密工房がある。そこでは、露軍の不発弾を材料にして、3Dプリンターなどを駆使して、ドローンから投下する爆弾をこしらえている。
旧ソ連規格の122ミリ野砲と152㎜野砲の弾薬は、複数の諸国から援助されている。それらをまぜこぜに1門の大砲から発射しなければならない。砲弾の性能のばらつきは避けられない。砲側で精密に次射を修正しようとしても、それが意味をなさなくなるわけだ。
※だったらますます砲弾にVT信管をとりつける必要があるではないか。地表から10m前後のエアバーストにしておけば、弾着の不正確さをいくぶんなりとも補い、122ミリ口径であっても、塹壕内の敵兵に効力を及ぼせる。徒歩で前進中の敵歩兵集団ならまちがいなく足が止まる。砲弾そのものと違って、スマート信管の量産は、西側の遊休工場でロボット化された製造ラインを1年未満で用意できよう。そこに日本の町工場だって貢献できるはずだ。
最前線の砲兵には、敵の砲弾が乏しくなっている傾向が、よく分かる。
露軍砲兵も節約モードに入っている。
次。
2023-4-7記事「Ruble Tumbles to 12-Month Low as Kremlin Greenlights Shell Sale」。
ロシアのルーブルが、世界の主要通貨に対して、じりじりと価値を下げている。ロシアは今、必死に何かを輸入し続けているのか?
金曜日、1ドルに対してルーブルは83ルーブル以上の交換レートとなった。1ユーロに対しては91ルーブル強だ。いずれも、昨年の4月いらい、最安値。
ロシアの貿易企業は、納税申告年度内に、国庫に納めるための外貨を用意しておかなくてはならない。そのため3月~4月にはガックリとルーブルの交換レートが下がるのはふつうだ。
英国のシェル石油会社は「サハリン2」のガスパイプライン事業から撤退し、その持ち株をロシアの「Novatek」社が買い取ることになった。12億ドルである。これも響いている。
※ロシア市場から撤退する外国企業の資産取得の代価はルーブルで支払うということに一方的に決めてしまえば、すべて無問題になるんじゃないかと思うのだが、さすがにそこまではできぬのか。
※むしろ国外に逃亡する予定のロシアの金持ちたちが、ルーブルを持ち出してもしょうがないので事前に外貨に換えておこうとして、ルーブルのレートを下げているのでは? とんでもない金額だろうからね。
次。
Igor Ivanko 記者による2023-4-7記事「British Firm Ships $1.2Bln of Electronics to Russia Despite Sanctions」。
『フィナンシャルタイムズ』が暴いた。2022-2以降、英国の「Mykines」という商社が、総額12億ドル分もの電機製品をロシアへ不法輸出していると。
商品は主として、サーバー、ラップトップPC、コンピュータチップ等で、製造元としてはHuawei製、インテル製、アップル製、Samsun製が含まれている。
「Mykines」社の社長は登記によるとウクライナ人で、ウクライナ国営の鉱山会社のために道路建設をしている雇われ人だという。謎すぎる。
次。
2023-4-7記事「Ukraine already eliminated 18 T-90M “Proryv” tanks. What’s the secret tactics?」。
これまで宇軍は18両の露軍のT-90Mを撃破している。その細工は二段階からなる。
まずATGMその他でダメージを与えて、とにかく敵の乗員にその戦車を捨てさせる。地雷で足を止めても、敵乗員はそのAFVを捨てる。
そのあと、マルチコプターを飛ばし、小型擲弾もしくは火炎瓶によって、その遺棄戦車の内部を再使用できないレベルまで破壊&焼夷する。
※最近の証拠ビデオだと、まずATGMの「コルネット」を当てて乗員を離脱させ、その後から、おそらく「Mavic3」クラスのクォッドコプターによってモロトフ・カクテルらしい小瓶を投下してT-90の砲塔上面を炎上させている動画がある。この着火メカニズムが不明だ。塩素酸カリウム(酸素源)と砂糖(炭素源)の混合液に浸して乾燥させた木綿布(やはり炭素源)をガラス瓶に巻き、瓶の中にはガソリンと濃硫酸を入れておいたならば、瓶が割れると同時に炭素が酸化され発火するかもしれぬ。戦間期にポーランド人が発明した古いやり方だ。今はもっと工夫されていると思う。それにしても2023年になって火焔瓶が復活していたとは意外であった。こんなものは敵の塹壕に落としても無力だから、使い途がものすごく限定されてしまうじゃないか? あるいは、ハッチを閉じた状態で遺棄されている敵AFVのゲペックカステンを焼夷してやるためのスペシャル手段としてわざわざ準備したもの?
ところで宇軍はなぜ、無人で放棄されている敵戦車を鹵獲しようとしないで、ドローンで念を入れて車内を破壊してしまうのか?
それには戦場の距離感を理解する必要がある。敵戦車を動けなくしてやった地点は、彼我対峙の中間線よりずっと向こう側である場合が多いのだ。そんなところまでこっちから「戦車回収車」を出して、牽引作業をしている余裕は、宇軍にはまったく無いのである。そこへ露軍の砲弾でも降ってきた日には、目もあてられぬことになっちまう。また、ぐずぐずしていると、露軍がその戦車を回収し、鉄道で本国の工場へ後送して、再生してしまうだろう。だから、早くトドメを刺してしまい、露軍が回収してもとうてい再生などできないように処置するのが、宇軍にとっては、安全&安価&有利なのだ。
※雑報によると、2023-4-7時点で露軍が使える状態の戦車の数がおおよそ絞り込まれている。T-90×50両、T-80×942両、T-72×1841両、T-64×248両、T-62×560両、T-54/55×270両。
次。
ロイターの2023-4-7記事「Romanian farmers block borders in protest over Ukrainian grain imports」。
ウクライナ産の穀物が大量に国境から運び入れられると、ルーマニア産の穀物価格が下がってしまうというので、数千人のルーマニア農民たちが、国境を封鎖すべしと騒いでいる。
EUはウクライナ産の穀物に2024-6まで輸入関税をかけないことを決めている。これが大迷惑である。ルーマニアだけではない。近隣諸国の農家は、こぞって大反対だ。不公正な競争を甘受せよと一方的に命じられているようなものなので。
ポーランドの農業大臣が、やはりこの苦情をうけて辞任した。
次。
ディフェンスエクスプレスの2023-4-7記事「Romania Has Already Seen a Real T-55 vs T-72 Duel, the Outcome Surprised Everyone」。
1989年にルーマニア軍は貴重な戦訓を得ている。国民がチャウシェスク政権を打倒しようとしていた12月24日のこと。
1両のT-55が、100ミリ砲で、政府軍のT-72Aを射撃し、無力化したのだ。
とうじT-72Aは秘密度が高かった。ルーマニア国軍はその30両すべてを、エリート連隊内の秘密戦車大隊に所属させていた。
当時のルーマニア軍の主力戦車はT-55であり、一部はT-34/85であった。
だから出現したT-72はロシア軍のものだろうと判断され、ためらいなく、T-55は発砲を開始したのであった。
射った弾種だが、HE炸裂破片弾を3発。これはアンテナと外部燃料タンクを破壊した。砲塔後部にも当たったが内部に実害はなかったようである。さらにHEATの「BK-412」を2発。これはエンジンルームに命中した。
T-72の方からは、1発の射ち返しもなかったという。
T-72Aの乗員は3人とも戦車を放棄して逃げた。T-72Aは鹵獲され、後に修理されたという。
ちなみに現在、スロヴェニアからウクライナ軍が貰っているM-55Sは、T-55の100ミリ砲を西側の105mm砲「L7」に換装してある改造型。戦力は段違いである。
次。
Sam Skove 記者による2023-4-7記事「Some Ukrainian Troops are Still Using Soviet Methods, Despite US Training」。
ウクライナ軍は将校のアタマがソ連時代から進歩しておらず、米軍が教えたことを実行できていない。
上級司令部は、「目標」だけを示せ。その目標を達成する手段は、下級指揮官がじぶんで考えて工夫して実行せよ。これが米軍流の「イニシアチブ」。
ところが、いくら教えてもウクライナ軍には、これができない。上級司令部が、目標達成の方法を、末端部隊に手取り足取り指図しないと何も始まらぬという旧ソ連流から、脱却できないのだ。
2021年にオデッサにある士官学校を見学した、米空軍士官学校の教官氏いわく。上はどうしようもないが、若手将校には見込みがある。彼らはドンバスで2014から実戦を体験しているので。
宇軍は軍学校の教官がもう頭が古すぎてダメ。たとえば地雷処理を訓練させるのに、鍋の蓋を使い続けている。これもソ連式なのだ。なんでいまどき鍋蓋にこだわるのか、理解を超えている。
そこで、気鋭の若手将校たちは、もはや軍学校になど頼らずに、米軍やイスラエル軍が製作している各種の教育用ビデオを取り寄せて、じぶんたちでウクライナ語に翻訳して、それを部下の兵隊に見せながら、再教育に努めている。
次。
Lara Seligman, Erin Banco, Paul McLeary and Alexander Ward 記者による2023-4-7記事「Leaked military documents on Ukraine battlefield operations circulated as early as March」。
このほどロシアがSNSにリークした米軍文書(会議用のスライド)は、作成されたと思われる日付が2月末から3月末に及んでいる。その期間中にドイツ国内の米軍基地にウクライナ軍幹部がやってきて、春期攻勢について相談していた。
盗まれた文書は、3月前半に、暗号化メッセージアプリの「Discord」にまず掲載されたという。
3月にUpされた文書と、今月Upされた文書とのあいだには、内容に不一致点が認められる。
国防総省が見積もった、これまでのウクライナ兵の戦死者数が、今月の文書では、3月リーク文書と比べて、大幅に水増しされている。これは要するに露側のディスインフォメーション。
なお、最新リークは、テレグラム、ツイッターだけでなく「4chan」にも投稿されているという。
「4chan」に投稿されたリーク・スライドは、統合参謀本部作成の、バフムトの戦況地図である。
共通した不審点もある。日付部分とセキュリティマーク部分がすべて空白化されているのだ。
唯一の例外が「3月23日」の日付が残った文書で、それは3月に「ディスコード」にUpされてから20日ほど後日ということになる。
三月漏洩文書群の中には、ヨルダン、パレスチナ、IS、中共に関したものも含まれていた。
ウクライナ関係文書は2月から3月のあいだに作成されたもの。NATOによる訓練計画である。
一例を引こう。
ウクライナの第82旅団は、優先的に機甲化されるようだ。90両のストライカー装甲車、40両のマルダー歩兵戦闘車、24両のM113APC、14両のチャレンジャー戦車を、同旅団は装備するであろう。その訓練は現在進行中である。
また、第33旅団は、32両のレオパルト戦車(ドイツ、カナダ、ポーランド寄贈)、90両の米国製MRAPを、3月から4月にかけて受領する。搬入が終った段階で必要な訓練は完了している。
統合参謀本部作成の日々報告で、空母の『ジョージ・H・W・ブッシュ』や潜水艦が今どこにいるかという文書まで、リークされてしまっている。
また、「トップ・シークレット」のマークの残る、米軍による戦況分析もバラされた。それは3月1日時点での、バフムト、ハルキウ、ドネツク戦線等での両軍の動きを報告している。
2月にベラルーシの飛行場を攻撃したのはウクライナのエージェントだともバラされている。ウクライナ政府は否定していたのだが。
※想像するに、会議用にペーパーを配ると、そのプロセスすべてが秘密流出源となるおそれが増えるので、プロジェクターによる映示だけにとどめようとしているわけか? ところが誰かがそれをスマホで撮影していた、というオチが待っていた……ってことかい?