ついに《ドローンの九九艦爆》が登場しそう。爆弾は無誘導なのに、ほぼ百発百中。

 ディフェンスエクスプレスの2023-4-11記事「Simple and very cheap, camera drones become a more and more effective weapon thanks to Ukrainian volunteers」。
    ウクライナ軍のドローンのために専用の小型擲弾や爆弾投下器(ソレノイド利用)を製造してやっている草の根グループ「スチール・ホーネット」。

 小型擲弾は重さ800グラム、外径63ミリ。着発信管が作動すると、中から、径が数ミリの、対人専用のフレシェットを四方へ放散する。フレシェットは釘状に細長く、空気抵抗が小さいので、ふつうの破片よりも遠達し、しかも貫通力をうしなわない。

 これをできるだけピンポイントで敵兵の足元に落とすため、FPV操縦のマルチコプターは急降下し、その途中で擲弾をリリースする。目標に対してまっすぐに急降下することによって、機体そのものが照準線となるので、簡単確実に命中精度を上げることができる。

 もちろん母機はすぐ上昇して、ふたたび操縦者のもとへ戻る。そうやって何度でも繰り返し出撃する。まさに鋼鉄のスズメバチ。

 兵器としては単純で、運用効率もイマイチだったマルチコプタードローンが、FPVと「急降下爆撃」を結合させたことで、一段とまた進化の階梯を上がることになるだろう。

 チームは、次の改善課題として、フレシェット擲弾を着発ではなく曳火(空中爆発)にすることと、擲弾をリリースするコマンドを実行したら、ドローンは自動的に上昇を開始するような、省力的なソフトウェアのプログラム作りを急ぐ。

 曳火のフレシェットは、空中から散弾銃を敵歩兵につきつけて発砲するような効果を発揮してくれるだろう。
 ドローンに自動上昇プログラムが備われば、FPV操縦者は急降下動作(照準)だけに集中をすればよくなるので、ますます命中精度の向上が期待できる。

 チームは、この改良が成功すれば、現代の「シュトゥーカ」の無人版になると考えている。

 ※固定翼とクォッドコプターのハイブリッド型は、特攻自爆をさせるには高額すぎて勿体無かった。しかし、急降下爆撃をさせられるのなら、何度でも回収して反復出撃をさせられる。それこそ、まさに《現代のシュトゥーカ》になるだろう。

 ※いまのところ、このシステムを《対人用のダイブボマー》と自己限定しているのは、ガレージで製造ができる爆弾の構造に、限界があるからだろう。急降下爆撃方式を採用するのなら、陸上を疾走している敵車両に対してもほぼ必中を期すことができるのであるから、むしろ専用のHEAT弾の開発が急がれる。そのさいネックになるのは、HEAT弾頭の設計と製造は、素人集団にはハードルが高すぎることだ。ここはやはり、本チャンのメーカーの出番ではないか。

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 Defense Express の2023-4-12記事「FPV-Drones Are Used by russians, too, And They Have Some Ideas to Take Note of」。
   ロシア製のクレイモアを「MON-50」という。これを市販のクォッドコプターに前向き、もしくは真下向きに固縛して、FPV操縦によってウクライナ軍の歩兵を襲撃させる自爆戦法を、露軍が採用しはじめている。

 これはまちがいなくトルコの「Kargu」というカミカゼ製品の広告動画にヒントを得た改造だ。

 トルコ人には困ったことになった。高額な専用製品なんてわざわざ輸入をしなくとも、安価に自作・改造して、同じ機能の特攻兵器ができてしまうのだから……。、

 ともあれ、ドローン戦術の、進化が止まらねえ!

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 Jonathan Landay and Aleksandar Vasovic 記者による2023-4-13記事「Exclusive: Leaked U.S. intel document claims Serbia agreed to arm Ukraine」。
   セルビアがウクライナに武器弾薬を供給する。これもこのたびリークされたペンタゴン文書で分かった。 表向きは、セルビア政府はそれを否定するという黙契だ。

 ※かたやハンガリー政府は、ますますロシアに傾斜し、ロスアトムに建設したもらった原発をさらに拡張工事してもらう。それは隠さずに堂々とやっている。

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 Defense Express の2023-4-12記事「Unusual Way to Provide Half a Million Shells Without Sending Them Directly, For a Country Reluctant to Send Weapons to Warzone」。
    リーク文書であらたに判明したこと。3月に韓国は米陸軍に向けて155ミリ砲弾を50万発、非公開的に「貸す」、ローン契約を結んでいた。
 これは2022-11に10万発をこっそり売ると決めた話とは、別口である。

 3月時点で欧州が束になっても35万発の155ミリ砲弾しかウクライナ向けには用意できないと言っているときに、この50万発はでかいだろう。

 ※この50万発は、「利用権」だけが移管され、米本土への現物移送はしないのではないかと思う。つまり対支戦が始まったときに米陸軍は、韓国にある弾薬庫から砲弾を50万発、自由に持ち出して消費できることになったのだろう。これは米本土から大量の砲弾を極東へ送る手間を省くので、米国にとっても助かる。そして米本土にある在庫の砲弾は、キープせずにウクライナにくれてやっても、とりあえずよくなった。

 ※宇軍が使っている、旧ソ連製の牽引式十五榴の、拉縄を引いても発火が起きず、「あれ?」と振り向いた瞬間にドンと発射している、貴重な映像がSNSに上がっている。装薬に点火する火工品の不良だ。

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 Thomas Newdick 記者による2023-4-11記事「Ukraine Situation Report: Denmark To Decide By Summer On F-16s For Kyiv」。
   デンマーク政府は、夏までに、ウクライナにF-16をくれてやるかどうかを、決めるという。
 これはF-35Aの導入と連動する。

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 ストラテジーペイジの2023-4-12記事。
    スターリンク衛星のうち6個からの電波を受信できると、精度8mの「簡略衛星航法」が可能であることが分かった。GPSがぶっこわれても、スターリンクで代用できるのだ。

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 Jon Harper 記者による2023-4-11記事「NSA: ChatGPT and similar tech will make hackers more effective」。
   NSAの長官は警告した。チャットGPTを使うと、英語の文章がいかにも自然な調子になるので、メールで人を騙す仕事をしている悪人どもの仕事が今まで以上にはかどってしまうことになるだろう。善人にとっては、《不自然な文章》から詐欺メールであることを見抜くことが難しくなる。

 NSA長官としては、大統領に「データ」を示して何かを説明するときに、たいへんなジレンマに直面する。というのは、チャットGPTは、存在しないデータをいくらでも捏造できてしまうからだ。情報機関が、それらの偽データを拾い集めて、本物だと信じて分析していた――というオチが、これからは、待っているわけである。

 これだけは言える。将来も、分析して報告するのは人間の役目であり続けるだろう。AIは、「分析のツール」として有用である。しかし「分析」そのものの代行は、できない。

 ペンタゴンではAIを「決心」の補助に使えないか、研究中である。
 来る6月には、ヴァジニア州マクリーンで、AIについてのカンファレンスをDoDが開催する。

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 Benjamin Jensen and Dan Tadross 記者による2023-4-12記事「How Large-Language Models Can Revolutionize Military Planning」。
   AIが人間の司令官の「決心を補助する」とは、具体的にはいったいどんな感じなのか?
 一例を想像しよう。
 司令官は、当面している敵地上部隊を、カンネーのような両翼二重包囲を仕掛けることで、殲滅してやりたいと思っている。

 データは、偵察衛星や偵察航空機や電波傍受から得られる。それをデジタルマップ上に可視化すると、これまでの敵軍の動きが時系列的に細密に動画化される。
 だがそれは司令官と幕僚に対するいわば余計なサービスにすぎず、AIは黙って淡々と本業の仕事にかかっている。すなわち、この土地でこのパターンの動きを見せている敵軍を両翼二重包囲するには、我が軍は時々刻々、どのように動かなければならないかを、全範囲にわたって詳細に、計算してくれているのだ。

 我が軍のデータのうちで肝要なのは、「燃料補給」である。燃料補給の目処が立たないのに理想的なマヌーバを提案されても、前線のリアル部隊にはどうしようもない。AIは、今、間に合う燃料兵站の条件で、現実的に可能な包囲機動の作戦計画を立ててくれる。それがMapに示される。

 もし、こちらの準備できる燃料があまりに少なければ、こちらの一部の部隊を後退(偽退却)させることで敵軍を我が陣中に深く誘い入れ、それによって「カンネー」型の決戦を再現できる可能性があるから、AIはそれを映示して「提案」することになるだろう。

 偽退却機動は、人間の司令官にとっては、リスキーな決心になる。もしAIの予想が外れ、あるいは一部現地将兵の戦意が崩壊するなどすれば、予期に反して我が軍は大敗を喫するかもしれぬ。その場合、人間の司令官は戦史に末永く汚名をさらし、幕僚のキャリアはおしまいとなり、なにより国家には大打撃だ。しかしAIには恥の観念は無いし、切腹しろと迫ってくる世論の圧力もない。気楽なものである。

 人間の司令部は、それでも敢てカンネー型の勝利を追求するのかどうかまで含めた、高度判断を下さなければいけない。

 司令官は、おのれ個人の名声と国家の興廃をもろともに賭けた決断を、数分のうちにしなくてはならん。

 ……ざっと、こんな感じだろうか。

 AIの得意技は、人間の司令部がある判断で迷っているところに、最新の偵察データがとびこんできたときに、瞬時に、それを加味した「再計算」を、トータルでやりなおしてくれることである。人間の幕僚には、とてもそんなスピード仕事はできないので、古くなった当初案にこだわることになりがちだ。

 いまやAIは、医師国家試験にも合格できるし、弁護士資格試験もパスしてしまう(米国の話)。
 わずか数ヵ月のうちに、とてつもなく進化しているのである。

 ラダイティズム(そんなもの無い方がいいと叫ぶ運動)の入る余地はない。これは使いこなすしかないのだ。