行きま商会。

 2023-4-14記事「One Way Aerospace emerges from stealth and reveals its Ukrainian-made tactical loitering munition System, the Scalpel, to enhance Ukrainian defence capabilities」。
    「ワン・ウェイ・アエロスペース」という、これまで知られていなかった兵器メーカー。いきなり「スカルペル AQV 100」というロイタリングミュニションをひっさげて、表世界に出てきた。すでにウクライナ軍はそれをFPV特攻機として使用しているという。

 この会社の創設グループには、英空軍や豪州陸軍(戦闘工兵)を退役した男らがまじっている。
 機体はクォッドコプターで、バックパックに入れて歩兵が運搬できる、小さなものだ。

 最大速度108km/時で10km飛び、精度1mで命中。弾頭(機体の上に円筒を背負わせる)の重量は1kgと2.5kgの二種類。

 とにかくコストが安い。たとえば「スイッチブレード600」は、6万5000ドルもするが、「スカルペル」は、その二十分の一の単価で納入できるという。

 形状は、横向きの、円筒状のHEAT爆薬を無造作に背負わせた、クォッドコプター。各部がいかにも洗練されていない。だから安い。

 「One Way Aerospace」社はまた、ウクライナ政府が本来の領土を回復しようという政略目標を、ハードウェアによって手助けしようと、製品を設計している。
 そのために今、HIMARSを射程で数倍上回る750kmの長距離片道飛行ができる「AQ 400 Scythe」という自爆ドローンを、開発しているところなのだ。もうじき完成する。

 形状は、プッシャープロペラ付きの固定翼機。高翼配置の先尾翼と、低翼配置の主翼。これを正面から見るとまるで複葉機のように見える。先尾翼型にすると前翼でも浮力をかせげるので、電池を浪費しないであろう。

 発進には、短い滑走路か、カタパルトが必要である。
 総重量100kg。
 ウイングスパン2.3m。
 ペイロードは、最大飛距離を狙うときは32kg、もっと近いところを狙うなら70kgにできる。
 巡航速力は144km/時。

 この新兵器が、ロシア本土の戦略拠点も叩いてくれる。しかも、値段が安い。もちろん、製造はウクライナ国内である。

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 Tim Lister 記者による2023-4-16記事「Mauled Russian units, shrinking Ukrainian stocks: Leaks suggest both sides hold mixed hands for next phase of war」。
   リーク文書が教えてくれる驚きの数字。
 露軍には、ぜんぶで544個の作戦可能な大隊がある。そのうち527個大隊が、ウクライナ戦争のために動員され、うち474個大隊は、すでにウクライナ領内に投入されている。

 人数で見ると、ザポリッジアに2万3000人。ヘルソンに1万5000人を貼り付けている。これは露軍として、宇軍の反攻は南部に向けられると予期していることを示唆している。

 ドネツクでは、91個大隊の露軍部隊のうち19個大隊は、戦闘には堪えられない状態だと見られている。

 今年の初めの時点で、露軍は419両の戦車しか作戦させていない。これがありったけである。露軍はもう2048両の戦車を喪失している。そして今年初めの現時点で、APC/MICVの展開数量でウクライナ軍に劣後している。

 米軍には「コンバット・サスティナビリティ」という評価数値がある。戦闘をさらに続行できそうな期待値だ。米軍がみるところ、ロシア軍部隊がこれから普通の戦闘を続行できそうな見通しは63%に低下してしまっているが、宇軍は83%あり、露軍よりも長く普通の戦闘を継続できそうである。

 宇軍防空部隊が、ソ連時代からの対空陣地をそのまま引き継いで変更も考えていないのは愚劣だ。ロシア空軍にとってそれらの拠点はすべて既知なんだから、いとも容易にその拠点を避け、易々とすきなところに空襲をしかけることができるじゃないか――と米軍は呆れている。

 宇軍高射部隊は、ドイツから貰った高性能の中距離SAM「Iris-T」を、今年の2月に、全部射ち尽くしてしまったらしいことも、リーク文書はわれわれに教える。

 米軍の予測では、この調子で宇軍がSAMを無駄射ちしていると、5月23日以降、前線の味方部隊の頭上の中高度層を、もはやカバーできなくなるであろう。

 中層のレイヤーに穴が開けば、やむをえず高層レイヤー向けのSAMで中層をもカバーするしかなくなるが、そうなると高層のレイヤーに隙ができるのは必定である。

 結果、地上のウクライナ軍部隊が、露軍機から叩かれ放題になってしまうおそれがある。

 米軍の評価は、空軍力に関しては逆転する。露空軍のサステナビリティーは92%と見積もられている。宇空軍は68%である。宇空軍の消耗が進んでいる。

 ロシアが兵器弾薬の準備のためあらゆる努力をしていることは疑いもない。アフリカのマリに出張しているワグネルが、マリをなかだちにしてトルコ製の武器を入手しようと画策していることもバレている。

 中共の中央委員会が、対露の武器供給を漸増させる方針を正式に了承したことも、NSAは2月半ばに把握したようだ。

 ※大国には大きなプライドがあるべきなのに、ロシア人はいつしかチープなプライドしか抱かなくなった。チープなプライドは、自己欺瞞情報を歓迎する。

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 Parth Satam 記者による2023-4-16記事「Defense Magazine SLAMS Russian Army for ‘Rookie Mistakes’ In Ukraine War That Led To Annihilation Of Its Tanks」。
    今次戦争で注目されている新現実のひとつ。「少し射撃したら、すぐに位置を変える(Shoot-and-Scoot)」という現代砲兵の流儀が、ロイタリングミュニションの普及によって、再検討を強いられつつある。

 開戦前からあった宇軍の砲兵装備のうち、旧ソ連製の牽引砲や自走砲は、ほとんど、破壊されてしまった。

 いまや、開戦後に西側から供与された少数の牽引砲やSPに頼っているありさまだが、それらもしばしば、露軍の「ランセット」にやられている。

 ※この理由の大半は、宇軍砲兵が怠け者で、大射程にあぐらをかき、陣地転換をしないことにあると私は思う。移動中にランセットにヒットされるならそれは不運な事象だが、漫然と対空遮蔽もしないで停止しているところを直撃されている証拠動画が多くSNSにUpされている。露軍は観測専用のUAVの撮影下にランセットを突入させるので、このような動画が残るのである。では一体どうして砲兵が「怠け者」と化すかという疑問だが、これは、長期戦と予備役動員が組み合わされた場合の必然現象だと思う。若い志願兵の砲側員なら我慢してくれる労働を、中年の徴兵の砲側員は我慢してくれないのだ。だから彼らに命令する下級将校に「徳」が足りぬ場合には、部下に遠慮をし、陣地変換の頻度を下げるしかなくなるのであろう。ここからもうひとつの戦訓も得られる。長期戦を遂行中の与国に援助する砲兵装備は、“砲側墓場”をモットーとすべき砲熕砲兵ではなく、やはり「射ち逃げ」がしやすいロケット砲兵にするのが合理的だ。終末誘導をGPSでできるようにしてあれば、それで無駄射ちの問題も生じないのである。

 反復使用型のUAVの運用で心すべきこと。操縦するその場から離陸させるな。往路と復路はコースをかならず違えるようにしろ。着陸させる場所も、リモコンしている場所からじゅうぶんに離れた場所でなくてはならない。

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 ポーランドニュースの2023-4-14記事「Polish gov’t introduces military training programme for civilians」。
   ポーランドが本気モードに入ってきた。徴兵される予定のない一般市民が希望すれば、16日間の基礎軍事教練を施すプログラム。国防省が準備中である。

 これを受講することで「国軍はいったい何をしているのか」の理解が、銃後の間で深まる。

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 Boyko Nikolov 記者による2023-4-16記事「Kremlin burns all in the war zone with ML5 magnesium on Good Friday」。
    ウクライナとロシアの正教会の暦で、4月14日は「善き金曜日」という祭日であった。まさにこの日を狙って露軍は焼夷ロケット弾の雨を朝からバフムト市街全域に降らせた。

 この日の砲撃は、ワグネルがロシア正規軍から大々的に火力支援を受けていることのPRでもあったと言える。

 「9M22S テルミット」という焼夷ロケット弾は、180個の「ML5」というマグネシウム合金の子弾を散布し、そのそれぞれが、摂氏3000度で燃える。
 なんでこれを今、大々的に使うことにしたのか、理由は、謎である。

 なお、報告されている限り、「9M22S テルミット」には燐成分は含まれていない。

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 AFPの2023-4-16記事「Seeking Innovative Concepts for Next-Generation Antennas」。
   DARPAが「斬新なアンテナ」を公募している。

 応募方法は、4ページの提案レジュメを送るだけ。

 審査員がそのコンセプトを気に入ったら、米国防総省が開発スポンサーとなって、大金を出してくれる。

 商議はまず秘密裡に開始されるので安心されたし。

 提出の〆切は、2023-5-31(水)の、米東部時間の17時である。
 興味のあるベンチャーは、ウェブサイト「www.darpa.mil/BRIDGES」の中の「Next-Generation Antennas」項目を見るがよい。