今から4年すると日本陸軍は1920年代と同じピンチに立たされるだろう。

 列強が何万機もドローンを揃えているのに、自衛隊には数百機しかないというていたらくを、なんとかしなければと現場は思うが、組織が古くて気の利いた改革は思いつけず、芸の無い模倣的な試作ばかりに貴重な時間資源を空費してしまうという、いつか通った道の再演だ。

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 Vazha Tavberidze 記者による2023-4-16記事「The View From Finland: With Or Without NATO, You Need To Be Able To Defend Your Own Country」。
   今月就任したばかりのフィンランド国防相は、2014年から2019年までフィンランド軍の制服トップであった元大将のリンドベルグである。戦闘機パイロット出身。

 自由欧州ラジオが、彼にインタビューした。

 御国がNATOに入って、どう変わりましたか?

 情勢を安定させる効果が大きいですね。NATO条約の「アーティクル5」のおかげで、以後もしロシアがフィンランドを攻撃すれば、それは全NATOと自動的に戦争状態に入ることを意味しますからね。

 従来あった、ロシアとのビジネスのつながりは、劇的に、消えました。フィンランドは一連のEUの対露制裁に完全に同調して行動しています。その結果、わが国の商工業者たちも、いよいよロシアからは足を抜くことになったのです。

 2022-2-24以前には、わが国の内部にも、NATO加盟には反対する人がたくさんいましたよ。しかしプーチンの侵略が始まってから1週間にして、誰ひとり反対しなくなりました。皆、このうえは早くNATOに加盟しなければ危ういと判断できたのです。この現実的な判断力はフィンランド人の特徴だと自負しています。

 現在、国民の8割が、NATO加盟を肯定的に評価しています。政党も、こぞって賛成です。

 すでにフィンランドはウクライナに対して14回の支援を発表し、そのために予算11億ドルをつぎ込みました。この支援はさらに継続されて行くはずです。

 ウクライナに航空機の援助をしようという場合、やはり合理的なのは、すでにポーランドとスロヴァキアが実行している「ミグ29」の供与です。現有機種とは違うモノを譲与されても、その支援に必要な広範な兵站チェーンを一から新規に構築せねばならない。人も部品も、とうてい間に合う話ではないでしょう。

 もともと私もミグ戦闘機のパイロットでしたから、これは断言できますよ。「F-18」が導入されたときに、私はその最初のスコードロンの隊長でした。まったく新規の機種を空軍に導入するとき、作業を早く簡単にする方法はありません。全員が、一から、ひとつひとつ、積み重ねるしかない。時間が、とてもかかるものなのです。戦争中にできる話ではないのですよ。

 かりに今、ウクライナ空軍に、西側製の戦闘機を何か供与すると決定されたとしましょう。ぜったいにその戦力は今年じゅうには、戦争の役になんか立ちません。活動できるようになるのが、来年以降ですよ。

 フィンランドが間もなく退役させるホーネットをウクライナにくれてやれという話がありますが……?

 どう考えても難しいですね。ホーネットの設計寿命は30年なんです。そのライフサイクルの終末にすでに位置しているから更新しようということになっている。ということはですね、メーカーの方でももうスペアパーツを製造しなくなってしまうんですよ。

 それともうひとつ。わが国は2025年から2030年にかけて、すこしずつ、ホーネットをF-35に換えて行きます。その期間中、わが国の防空のためにF-18には飛び続けてもらわなくてはいけないのです。ウチの防空に穴をあけてまで他国に戦闘機を譲渡できると思いますか。ウチもロシアの隣国で、しかも最前線なんですから。

 フィンランドの予備役のプールは28万人おり、他の北欧諸国の予備役ぜんぶを合計したよりも大きい。
 国防費はとっくに、GDPの2%を超えています。そして徴兵制のおかげで、そのうち2割以上を装備費にあてられる。
 だから、フィンランドの砲兵戦力は、ポーランドと並び、欧州NATO中で最大規模なのです。

 それでいて6年連続で、国連が認定する世界でいちばんハッピーな国なのですから、すごいですね。侵略的な大国に隣り合わせた小国が、参考にできるアドバイスはありますか?

 冷戦中、われわれは、他国が廃棄しようとする古い兵器を買い付けては、自国の防衛用に充ててきました。徴兵制を維持し、予備役をいつでも大量に動員できるようにしてきました。こうした努力が、実っています。

 伝統的な兵器体系の上に、近年では、陸海空のすべてにおいて、特に射程が長いミサイル/ロケット兵器を、揃えるようにしてきました。これがあるから、ロシアもフィンランドを侮れないのです。

 フィンランドの有権者は、皆、確認しました。やはりわれわれが冷戦中から冷戦後にかけて石に齧り付いて継続してきた努力は、正しかったのだと。その努力をしないで国防費をどんどん削減したウクライナは、とうとうロシアの侵略を招き、これほどに酷い目に遭わねばならなかったのですからね。

 NATO諸国はフィンランドの加盟を「お荷物が増えた」とは思っていません。単独ででも自国を守り抜く意志と実行力がある国が、たのもしい同盟者になってくれたと歓迎されています。

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 王光磊 記者による2023-4-18記事「澳洲CH-47直升機?為M1戰車野戰加油」。
   クイーンズランド州でのオーストラリア陸軍演習。
 1機のチヌーク・ヘリが最前線近くに着陸して、3両のエイブラムズ戦車に給油してやる。同じJP-8灯油なので相互に燃料を融通できるのである。

 この演習は5年に1回、おこなわれている。
 豪州軍のM1は「A1」であるが、2024年からは「A2 SEPv3」の導入が始まる。

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 ディフェンスエクスプレスの2023-4-17記事「Heavy IFV on Tank Chassis: Forgotten Concept Revived by Ukrainian-russian War」。
   ウクライナ軍は、損傷して回収されたT-64の砲塔を外して「重APC」へ改造したものを複数、戦場で使い始めている。

 固有武装あり。リモコン銃塔でNSVT機関銃を操作できる。
 お客を何人運べるのかは、非公表。

 臨時改造品なので、エンジンとトランスミッションは後方置きのレイアウトのままだ。

 じつは、ハルキウ戦車工場では、エンジンをフロント配置に変える「BMPV-64」という重IFV(固有武装は機関砲)が可能ですぜ、と2016に提案したことがあるが、これは没になった。
 エンジンの冷却に難が生じ、重心バランスもフロント過重となってサスペンションが対応できず、かけた費用に見合うほどのパフォーマンスは期待できないと判定されたからだ。

 戦車を重APCに改造した先駆者はイスラエル軍で、1980年代のことだった。アラブ軍から鹵獲したT-54/55を改造し「Achzarit」と名づけた。その後、MBTのメルカーヴァーの車体をベースにした63.5トンの重APC「ナメル」も量産している。

 メルカーヴァーは最初からフロントエンジンだからいいのだが、「Achzarit」のリアエンジンをイスラエルはそのままにしなかった。より小型低パワーの、デトロイト・ディーゼル製エンジンに換装し、トランスミッションもアリソン製の別物に換え、それによってエンジン右側に「通路」を設け、歩兵が車体後方から安全に出入りできるようにしたのである。後部ドアは、油圧で上にはねあがる。

 こうした、機関銃しか付いていないAPCを見ると素人は、「なんで30ミリ機関砲で武装させないんだ」と思ってしまう。そんなものを載せたら車内容積はいちじるしく圧迫され、肝腎の歩兵分隊が満足に収容できなくなってしまう。車体も無意味に重くなり、得することがない。そもそも戦車改造の重APCは、さいしょから長距離走行は考えておらず、最前線での短距離ダッシュ輸送に撤するものなのである。