空襲警報が、攻撃起点の地元からSNS経由でリアルタイムに届く時代がやってきた。

 たったいま「ツポレフ95M」重爆撃機がロシア北西部のオレニャ空軍基地から一斉離陸して南下して行ったぞ――という目撃情報が、たちどころにSNSに掲載されて、ウクライナ住民に「巡航ミサイル注意報」(地下室への退避勧告)として伝達された模様である。

 でもこれ、AWACS情報がソースであることを韜晦するための、プロクシー投稿かもしれないね。

 次。
 AFPの2023-5-1記事「Russian Army Replaces Top Logistics Commander」。
    露軍は日曜日に、兵站系幕僚の最上位者だった、ミハイル・ミジンツェフ上級大将を左遷した。
 この将軍、2022のマリウポリ市攻囲中の非人道犯罪に責任があるとも指弾されている人物である。

 後任は、アレクセイ・クヅメンコフだと発表された。

 プー之介が昨年9月に追加動員を発令したと同時にミジンツェフが国防副大臣に起用されていた。ロシアでは、国防副大臣が、全露軍の兵站を統監するのである。

 更迭の噂は先週からあった。

 ※真の責任者は、プリゴジンが非難する如く、ショイグなのだが、ショイグは責任を転嫁できる部下には事欠きはしない。

 ※Lizzie Collingham 氏著『The Taste of War』(2012ペンギン版)にこんな記述がある。――独ソ戦初盤で動員された16歳のウクライナ兵。軍靴がなく、ボロ切れを巻いて代用する必要があった(p.320)。露軍内にはなぜかウォッカとタバコだけは常にあった。そして露軍の兵站将校は1942当時から、物資の横流しをしていた(p.321)。がんらい、鉄道と馬車しかない輸送力に、アメリカが莫大なトラックを援助してくれたので、ソ連の車両工業は、戦車の製造だけに集中できたのである(p.336)。アメリカからの食糧援助がなかったら、うたがいもなく、はるかに多数のソ連市民が餓死していた。米国から送った対ソの援助品のうち、食糧は、重量比で14%もあった。戦後、アメリカに亡命した露人旋盤工の証言。ソ連兵は末端までよく承知していましたよ。靴から軍服から罐詰から何から何まで、米国の物資が援助されたおかげで勝つことができたのだと。それなしでは勝利は無かったと。ソ連兵よりも悪い栄養で戦争したのは日本兵だけである――。この本は再読する価値が高い。今次ウクライナ戦争に関して、いちじるしく示唆的なのだ。ヒトラーには、公刊されなかった《第二の書》があった。ドイツ語スクールのプー之介はそれを読んだのかと疑われる。

 次。
 2023-5-1記事「A freight train derailed in Russia」。
   ブリヤンスクで鉄道のレールが爆破され、石油タンク列車が脱線し、火災が発生した。月曜朝の事件。

 この貨物列車は60両編成で、石油の他に、建設資材を輸送していた。
 「ラッシュカ~ウネチャ」線の、136kmマーク地点だという。

 モスクワ時刻で、10時17分だった。すなわち、0717GMT。

 次。
 2023-5-1記事「Power lines pole blown up in the Leningrad region of the Russian Federation」。
    サンクトペテルスブルグ市が属するレニングラード軍管区の森林地帯で、高圧送電鉄塔の基部が爆破され、1基が倒壊。
 もう1基にも仕掛けられていたが、そちらの爆発物は不発状態で発見され、工兵隊が雷管を除去した。

 送電路は自動的に迂回路に切り替わったと当局は発表。

 しかし、あるSNS投稿によれば、深夜の1時に、レニングラード発電所から給電されているすべての世帯で停電が起きたという。

 次。
 2023-5-1記事「How a Russian drone hit the Gepard, and why they hid the true result (Video)」。
    戦争のプロパガンダは、それに接した者に嘘を信じさせる必要はない。それに接した者が、真実と嘘の区別はどうもできそうもないと印象してくれれば、プロパガンダとして大成功なのだ。

 ウクライナ戦線で、捜索レーダーを回してない状態の「ゲパルト」がランセットから奇襲されれたとする画像。まず、スチル写真が公表された。

 ここが憶測を呼んでいる。露軍は無人機を攻撃任務に繰り出すときは同時に上空から別な偵察ドローンが動画撮影している。なぜそのムービーを最初からUpしないのか。じつはゲパルトのレーダーにほとんど損傷を与えていないという自認があるからじゃないか。

 「ウクライナ人なんかに高額な兵器を与えても、ぜんぶ無駄にされるだけですよ」と西側人をして印象させることが、ロシア側プロパガンダの大目的である。

 ※国連総会で初めて中共代表が、ロシアを「侵略国家」とする決議に賛成票を投じた。アルメニアとカザフスタンも。

 次。
 Boyko Nikolov 記者による2023-4-26記事「If Russia pollutes the runways, the US F-16 becomes unusable」。
    この戦争中にF-16をウクライナ軍に供与するなんてありえない。その理由。
 意外なことに、F-16はミグ29やスホイ27よりも長い離陸滑走距離を必要とする。ウクライナの既存の戦闘機用の航空基地の滑走路はF-16用には短すぎる。もしF-16を受け入れるなら、滑走路の延長工事が必要だ。それはロシアにはすぐにバレる。

 〔既存の輸送機用の長い滑走路がある飛行場に〕F-16を受け入れる場合でも、それ用の新しい格納庫、メンテナンス建物や倉庫が不可欠である。それらの増築工事も、ロシアが偵知できないわけがない。

 さらに肝腎な事実。胴体下の低い位置に、エアインテイクが大口を開けているF-16の運用には、とても「クリーン」な滑走路が、大前提として求められるのだ。旧ソ連系の軍用機が胴横に吸気口を配して、滑走路上のデブリを吸い込まないようにしている配意とは、想定環境がハナから違うのである。F-16の設計者は、戦闘機を最前線の荒れた航空基地で活動させる必要などまるで想像もしていなかったのである。
 この戦争が続く限り、ウクライナ領内に米軍式のクリーンな滑走路はあり得ない。そこではF-16のエンジンは長持ちしない。

 英国シンクタンクのジャスティン・ブロンクは説く。ウクライナにふさわしいのは「グリペン」であって、「F-16」ではないだろう、と。

 グリペンは、道路や農業飛行場からも離発着できるというのみならず、整備のための「固定建物」を必要としないという配意が、すぐれているのである。車両が整備工場であり、部品倉庫だ。その移動整備班がまるごと、戦闘機の分散先について行く。

 ※雑報によると、米空軍は宇軍の「スホイ25」用に「ズーニ」空対地ロケット弾を供給している模様。5インチ径で、弾頭は4.3kgのコムポジットB爆薬入りのHE仕様。ソ連製の「S-13」より射程が長くなるという。主翼下ポッドが黒塗りで検閲された写真がSNSに出ている。

 次。
 Zoe Sottile 記者による2023-4-30記事「What is a vampire straw? A closer look at the weapon confiscated from a Boston traveler’s luggage」。
    放血鍼という見た目の凶悪な暗器がボストンのローガン空港で押収された。
 それを手荷物に入れていた男は、逮捕された。

 この兇器は、チタニウム製の細い管。その一端は、注射針のようにするどく斜めにカットされているのである。
 男は「Szabo」という会社から85ドルで買ったそうだ。この兇器のメーカーは米国に数社ある由。

 もし誰かにこれをみとがめられたときには「スムージーを飲むためのマイ・ストローなんですよ」という言い訳が成り立つ長さになっている。しかし実際の用途は、護身用のダガーだ。自動車のタイヤに穴を開けてパンクさせるのにも使える。

 先を尖らせた金属ストローを携帯することが違法となるかどうかは、その地方の刀剣類取締法令に、かかっている。

 マサチューセッツ州法では、これは錐状の刺突武器の類とみなされ、もし前科や余罪があれば、懲役5年に直面する。

 連邦で銃砲刀剣を取り締まる部局であるTSAは、機内持ち込み手荷物の中に、鋭利な端面を有する道具を入れることを概括的に禁じている。

 次。
 『UST』の2023-4-28記事「Drone Landmine Detection & Mapping Technology Delivered to Ukraine」。
    マルチコプターを使って、どこに埋まっているか知れない地雷を効率的に探知し、《地雷マップ》まで作成してくれるハードとソフト。
 ウクライナの「ドラガンフライ」社が、同国政府から資金を得て、開発中である。

 こういうシステムを欲しているのは、ウクライナ内務省。

 ※森林用は無理でも、せめて、畑用には、地雷の気配を警報してくれるAIができることが待望されているだろう。しかし、その実現までの道のりは遼遠だろうと思う。炸裂した砲弾の破片や、吹き飛んだ装備品の破片が、そこらじゅうに無数に散らばっているからだ。となると現実的には、かつて南アフリカの白人農園主たちが、黒人ゲリラの仕掛けた地雷から身を守るために、農耕用トラクターをV形断面ハルの「耐地雷仕様」に改造していた、あの古い知恵を引っ張ってくる必要があるだろう。ところがおそろしいことに、インターネット空間には、アパルトヘイト時代の南阿の風物に関する画像資料は、ほぼ、ひとつも存在しないのである。これは、政治的理由で、掲載が排除されたからだとしか思えない。AIが人を騙すのではない。無知をよしとする集団が、他者をも仲間に巻き込もうと、昼夜尽力している。ロシアや中共と、どこが違うんだ、それは?

 次。
 Michael Schwirtz 記者による2023-5-1記事「Ukraine Wants to Push Forward. Not So Fast, Says Its Black Soupy Mud」。
    最前線を2週間取材したNYT特派員のリポート。
 黒土が泥濘化すると、西側のAFVでも立ち往生する。ドイツから貰った新品の155ミリSPである「Panzerhaubitze 2000」も、スタックして牽引脱出が必要だった。

 今年の春雨は例年より多雨だそうである。おかげで地面が乾くのが遅れている。

 次。
 Defense Express の2023-5-1記事「Nice Replacement for Handmade Launchers: Ukrainian Forces Receive Croatian Trailer-MLRS」。
   ウクライナの国境警備隊(郷土防衛軍)は、クロアチア製の128ミリ多連装ロケット砲「RAK-SA-12」を装備している。これは被牽引式で、12門のチューブが2輪のトレーラー上に載っている。
 チューブの長さは1.2mと短く、したがってとてもコンパクトである。

 ロケット弾のレンジは最新の弾薬を使えば最大8540mなので、まず申し分がない。

 12発の再装填は、人力によって、1分20秒で可能だという。
 装填済みのこのロケット砲を放列布置させるには、被牽引姿勢から、1分30秒しかかからない。
 また陣地の撤収には、1分しか要しない。

 牽引するトラックには、砲側員が5名。プラス、指揮官×1名。

 ※牽引式にすることで接地圧を分散できるので、砲車を多連装にもしやすい。宇軍がてんでバラバラに試みているように、ピックアップトラックにチューブを背負わせると、4連装くらいになってしまう。しかも、前射で生じた車体動揺が次射に悪影響を与えぬよう、荷台後端にアウトリガーまで追加をしなければならない。まるで改造効率が悪い。敵のロイタリングミュニションが不意に次々と突っ込んで来る、これからの戦場では、地上車両の「トレイン化」は、とても合理的である。牽引車と被牽引車のコンビにしておけば、ロイタリングミュニションはその双方を同時に爆砕することはできないので、リスク分散が図られる。しかも泥道にも強くなる。私はさらに提案する。トレーラーを引っ張る役目の車両も、高性能のトラックである必要はない。日本の軽トラックを、エンジンだけ1000cc.クラスに換え、車体のまんなかに「牽引レール」を縦貫させ、その前後端に牽引用リングをとりつける。こうすることで、2台の軽トラがトウイングワイヤで結ばれて重連となり、さらにその後方に、「砲車」を引っ張ることができるであろう。この3両を同時に爆砕できるロイタリングミュニションは、あり得ないのである。



The Taste of War: World War Two and the Battle for Food


戦争と飢餓