Howard Altman 記者による2023-6-9記事「Russia Has Destroyed Its First Ukrainian Bradley Fighting Vehicles」。
米国から宇軍に供与した「M2ブラドリー」歩兵戦闘車が前線で破壊されている動画が出てきた。
同じ場所にブラドリーが4両も遺棄されている。さらに「レオパルト2A6」×1両と、地雷処理ローラーをとりつけた「BMR-2」も、枕を並べて討ち死にという有様だ。
この動画を流したのは、ロシアのテレグラムのチャンネルのひとつの「ウォリアーDV」。
撮影された現場は「Malaya Tokmachka」町近郊で、そこはウクライナの南部戦線にあたる。
※事後写真をみると、レオ2は内部爆発を起したとは思えない状態。左後方の転輪がもげているので地雷が疑われる。先にM2がやられて、それを回収しようとレオ2が回りこんだのか? レオ2の砲塔ハッチは開放状態で遺棄されている。
分析屋のボブ・リーいわく。これらのうちの数両は、地雷にやられたように見える、と。
※重すぎるIFVの不都合な真実が可視化された。1両が擱坐すると、それを簡単に牽引して回収する方法がない。仲間のIFVや戦車がかけつけると、それも地雷を踏んでしまう。路外の畑地は地雷だらけなので、同じ道路を行くしかない。そうなると敵の野砲の好目標だ。ブラドリーを遺棄できないのは、高性能システムを詰め込みすぎているからだ。それを敵手に渡すと、デジタル「ネットワーキング」の軍事機密が暴かれてしまい、NATOが大迷惑する。
※即席の教訓は次の通り。巨大装輪の農耕用トラクターのような比較的に安価な回収手段を複数投入することで、重AFVを回収してしまう方法を研究する必要がある。農機トラクター×2~3両で、1両のAFVを引きずるのだ。できれば帰路は無人リモコンとすべし。操縦者はバイクで並走すればいい。さらに根本の解決法。重IFVは廃止し、「重連の軽装甲車」(BV410 や BvS10 系列のコンセプト)をこれからは主用する。前車が地雷を踏んだら、接合を解除して、後車だけで避退する。
※あるSNS上の指摘。「レオ2A4」の炎上動画とやらは、2ヵ月前の露軍戦車が燃えている俯瞰映像を土台にレタッチしたフェイクだと。地面や植生が一致しているという。この指摘投稿はすぐに消えた。あまり支持されていないことを示唆している。
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Jenny Beechener 記者による2023-4-24記事「Quadcopter Market anticipated to ‘exceed USD94 million by 2033’」。
2023年のクォッドコプターの世界市場は米ドルにして241億4700万ドルになりそうだという。
※この記者は「クォッドコプター」という言葉で「マルチコプター」を意味させたいらしい。
さらなる予測。2033年には、943億4280万ドルに拡大するのではないかと。
なお2023年に売れるクォッドコプターの68%は軍用である。
調査や監視目的のクォッドコプターは、米国内で39億2630万ドル、売れるだろう。2023年に。
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David Hambling 記者による2023-6-8記事「Russia Taps Power Of Tech Startups For New Kamikaze Drones, Aiming For ‘Cruise Missile For The Price Of A Washing Machine’」。
国営TASS通信によると、ロシア国内に、カミカゼ・ドローンの量産工場がひとつ完成した。
会社は豪語する。これから、洗濯機と同じ価格で、巡航ミサイルと同じ仕事をしてくれる無人特攻機を、この工場から大量生産する、と。
すでに出荷している最初の製品は「Privet-82」という、木製の自爆機だ。レイアウトは「TB2」に似ているが、はるかに小型。
開発したのは「OKo設計局」という名の純然民間ベンチャー企業。
(ちなみに「ランセット」のメーカーはカラシニコフ資本で半官半民のようなもの。しかも工場所在地がプー之介の地盤のサンクトペテルスブルグ。)
「Privet-82」は電動モーターでプッシャープロペラを回す。
航続距離は20マイル。
内臓弾頭重量は20ポンド。初期量産型ではとりあえず、2発の82ミリ迫撃砲弾をそのまま取り付けている。(それが商品名の「82」にされている次第。)
巡航速力55マイル/時。急降下時には100マイル/時となる。
ターミナル・フェイズでは機体内臓のコンピュータがカメラの眼で標的を識別するという。
OKOいわく、月産100機にする。「ランセット」よりはるかに大量に使用できるぞ。
※内燃機関で高く飛ぶ偵察用UAVと、電池モーターで低く飛ぶ片道特攻機を比べられてもね……。
じつは「OKO」のバックには、ドミトリー・ロゴジンが存在する。ロゴジンはかつてロシアの副首相で、国防産業の育成に携わっていた。今は彼は「ツァーリの狼群」という半官組織を采配していて、前線で必要とする「新兵器」を可及的速やかにリアル化して供給することをみずからの使命としている。殊にロシア国産ドローンについては、長年、支援してきた。
ロゴジンはテレグラムに語っている。国防省が民間企業に資金を供給して、民間スタートアップ企業の社内プロジェクトを支えてやることが、ロシアの勝利のために今最も重要だ。官営工場はまるでダメだから。
「OKo」社は、次の製品として「プリヴェット-120」を開発中だ。こいつは洗濯機と同じ単価で、巡航ミサイルと同じ仕事をしてくれるカミカゼ・ドローンになる。
航続距離は150マイルになるだろう。これを雲霞の如く飛ばしてウクライナの防空資産を蕩尽させる。弾頭重量35ポンド。これで敵国の変電設備、鉄道分岐点、ガソリンスタンドなどのインフラを破壊できる。
終末誘導は、敵の航法電波妨害を受けにくい、画像イメージ・ホーミングにする。そこにはマシン・ラーニングを導入する。すなわち、眼下にある、変電設備、鉄道設備、石油インフラにかかわる高価値目標を、UAVが自分で探して、識別して突入するのだ。リモコン通信の必要がないので、通信装置にカネをかけなくてよく、1機のコストがますます下がる。
ちなみにロシア国内では、家庭用洗濯機の相場は、500米ドルというところ。
カリブル巡航ミサイルは600万ドルなので、そのカリブル1発の値段で「プリヴェット-120」を1万2000機、製造できると言いたいわけだ。
なお、ロシアには「アルハンゲル」というベンチャーのUAVメーカーもある。こっちも3Dプリンターを駆使したガレージ工房から規模を拡大しつつある。ライバルだ。
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Yevgeny Kuklychev 記者による2023-6-8記事「Captured Russian Colonel Claims Wagner ‘Tortured and Raped’ His Soldiers」。
一時ワグネルに拉致されたロシア正規軍のロマン・ヴェネヴィティン中佐がSNSテレグラムの番組の中で証言。ワグネルは私の部下たちを拷問し、レイプした、と。
証言の中では、どうもワグネル部隊のバフムトからの退路に地雷を仕掛けたという話が肯定されていると。のみならず、酩酊した状態で、ワグネル陣地に向けて発砲せよという命令を下したらしい。
ワグネルは私の友人や側近を拉致し奴隷にした。一人は殴打された上で犯され、その後、自殺した。
ウクライナ兵がロシア兵を捕虜にしても、こんな酷い扱いはしない、と中佐は証言した。
プリゴジンはわれわれが彼らの後方に地雷を埋めたと非難するが、PMCに後方なんてないのだ。後方線があるのは、正規軍だけだ。――というのが中佐の申し開き。ということは、地雷、埋めてんじゃん。
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Jennifer H. Svan 記者による2023-6-9記事「Expert Air Force translators post diary of dissident Russian paratrooper’s Ukraine ordeal」。
露軍の空挺隊員だったパヴェル・フィラティエフ。彼は144ページの、批判的な従軍回想記を2022-8にSNS上に公開。すぐそれは消されたが、米空軍はコピーをとっており、2022-12に全編を英訳した。米空軍大学校内にはロシア語を教えるセクションがある。その教官がロシア語ネイフィヴなので、作業が早かった。
寒い夜、寝袋なしで部隊は放置された。錆びたボロ小銃、サイズの合わない戦闘服と軍靴。レーションはすぐなくなり、上級部隊に連絡しようにも居所が分からない。
露軍上層の戦略は単純だった。俺たち露兵の死体の山でウクライナを溺れさせればいいというものだった。
フィラティエフは、乗せられたトラックが2-24に国境を越えるまで、任務がウクライナ侵略だとは知らされなかった。
トラックに乗った仲間たちは皆、信じていた。すごい作戦計画に従っているのだと。
だが、そんなご立派な計画など、立てられてはいなかったと、すぐに分かった。
フィラティエフは眼の病気になったことから病院へ後送されて助かった。
今、多くの外国語はAI翻訳機で簡単に英語に変えられるが、言語は生き物なので、最新の言い回しの意味をAIはぜんぜん理解していない。依然として、人間の翻訳者が時間をかけて作業する価値があるのである。
たとえば「スターレイ」は大尉のこと。「コムバット」は大隊長のこと。いずれも最新のロシア軍営内のジャーゴンなので、辞書には出ていない。
ソ連時代の重機関銃のことは「ユチョス」と俗称する。機械に直訳させると「岩石」としかならず、意味が通じなくなる。
「罵りの表現」も1万種類以上あるので、ロシア語上級コースでは、それも教えなくてはいけない。
フィラティエフは今、フランス国内に政治亡命者として暮らしている。
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Paul Goble 記者による2023-6-8記事「Moscow Alarmed by Kyiv’s Interest in Russian Far East?and With Good Reason」。
どうもロシアの極東地方で、ウクライナ人の工作員が活躍しているような感じだ。
6月7日のタス通信は、ウラジオストックで一人の男が破壊活動の咎で起訴され、終身刑になりそうだと報じているのだが、姓名を記していない。これは、容疑者がウクライナ人であることを暗示している。
ソ連時代に、極東まで流されたウクライナ人の集団が存在し、彼らは今もロシアには同化をしていないという。
※そうか、やっと《デューク東郷》の前半生も掴めそうじゃないか。
この集団が反モスクワなのは当然として、密かに、極東の少数民族と共闘している可能性もある。
※ソ連のウラルより東の土地には、ポーランド人集団も散在していた。帝政時代からだ。彼らもロシアには決して同化せず、いつかモスクワを転覆させてやろうと念じている。
ウクライナ人がたくさん暮らしているのは、極東の南の地域だという。
1922年10月25日に赤軍がウラジオストックに入城したとき、まっさきに逮捕したのは、白衛軍の将校ではなく、200人ほどの、ウクライナ人運動家たちであったという。
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2023-6-9記事「203mm artillery rounds and munitions for Patriots: what U.S. provides in new aid package to Ukraine」。
DoDの公式ウェブサイトによると、米国から「203ミリ砲弾」がウクライナへ供給される。
※しかし203ミリ榴弾砲/SPを供給するとは書いてない。旧ソ連製の203ミリSPから、NATO規格の203ミリ砲弾を発射できるということか?