オーストラリア陸軍が、AS9自走砲(155㎜)の導入前試験を進めている。近日中に、実車体の下でじっさいに地雷を爆発させて、乗員が防護されるかどうかを見る。

 Gabriel Honrada 記者による2023-7-5記事「China simulates ‘Z-day’ total sea war with the US」。

   『サウスチャイナモーニングポスト』紙によれば、中共軍の中には「91404部隊』というのがあって、そこで対米全面戦争のシナリオをシミュレートした。その研究発表が『船舶研究』〔?〕とかいうタイトルの中国語雑誌に先月、公表されていると。

 それによると中共海軍は「アーレイバーク」級の駆逐艦からなる米艦隊から先に大規模な巡航ミサイル攻撃を受けることになっている。

 中共海軍は、50隻に近い駆逐艦をもっている。その1隻について、各11発の対艦ミサイルと、3本の魚雷が、あらゆる方角から一斉に襲来すると考えている。

 同時にECMによって中共の軍艦は通信ができなくされ、レーダーの働きは平時の4割に低下してしまう。このため中共軍の駆逐艦は防空戦闘能力が設計の三分の一に低下し、艦隊空ミサイルは、2発に1発しか、当たらなくなる。

 ※この雑誌記事が意味するところは明瞭だ。ちかごろ米国内のシンクタンクがスポンサー欲しさに調子に乗って、中共軍のハイパーソニック弾で米日両軍は全滅するみたいな煽り研究を相次いで発表していた。これを真に受けたシナ軍人が馬鹿なことをやり始めたら国家の破滅なので、真相を中国側からあきらかにして、中国内部の跳ね上がり分子に冷水を浴びせようとしているのだ。

 ※シナ軍艦1隻に対して巡航ミサイル11発という数字には迫真性がある。なんとこのごろでは米陸軍も、陸上から「トマホーク」を発射する気まんまんで、複数の巨大トレーラーから成る「陸上艦隊」みたいなのを構築する気になっている。

 ※防空レーダー機能がECMを受けて6割低下、というのはご愛嬌だ。じっさいには、9割、役に立たんと考えておくべきだろう。そのレーダー波をめがけて飛んでくる最新の対艦ミサイルの実力が判明すると、早晩、艦長みずから停波させるようにもなるだろう。

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 Charles R. Davis 記者による2023-7-5記事「Russia has ‘lost nearly half’ of its combat effectiveness since invading Ukraine, UK defense official says」。
   トニー・ラダキン提督は、前に全英軍の制服トップも務め、退役した人だが、今はスナク首相の首席軍事アドバイザー。このラダキン氏が英議会の公聴会で語った。露軍はすでにその全軍事能力の半分近くをなくしたと。
 たとえば、露軍は昨年、1000万発の砲弾を発射した。しかるに、ロシア工業は、努力しても年に100万発の砲弾しか生産はできない。また露軍はこれまで2500両の戦車を喪失した。それに対してロシア工業が1年に製造できる戦車は、最大でも200両である。

 ウクライナ戦争の「前線」の長さは1000km以上ある。この長大な戦線を、如何にして、ウクライナ側の不利な要素ではなくて、ロシア軍側にとってこその不利な要素と変えてやれるか、が大戦略。現在、宇軍が、あちこちで小規模な攻撃軸を臨時に形成して露軍をつついているのは、この大戦略として正しい。露軍の作戦資源を各地でストレッチさせて、全域で無益な消耗を誘い、セルフ兵糧攻めの状態に陥らせてやることができる。

 PBSによれば昨年の侵略発起時点でロシア軍には40万人の兵隊がいた。そしてリークされた米軍内の見積もりによれば、ことし初めまでに露軍はウクライナで4万3000人死亡し、18万人が負傷したそうだ。

 ※使える将兵の人数だけでも開戦から1年で「半減」となったわけ。メドヴェジェフはこの戦争はあと10年続くと威張っているから、10年後にはどこへ行っても「第××連隊、ただし本部中隊以外は欠」なんていう陣容になってるんじゃね?

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 The Maritime Executive の2023-7-47記事「Vietnam Bans “Barbie” Movie Over Depiction of Chinese Maritime Claims」。
   ワーナーブラザーズが配給した映画の『バービー』を、ベトナム政府が上映禁止した。
 作中の背景にわざとらしく「ナインダッシュ線」の地図が表示されているため。

 ハリウッドのアニメ製作現場に入り込んでいる中共の工作員が、「ナインダッシュ海図」を巧妙に作品の背景に置こうとした事件はこれが最初ではない。

 『Abominable』ではもっと露骨な挿入をしてあった。これに気付かないという映画製作スタッフは異常である。ベトナム政府は、それが配給以前のすべてのチェック段階でスルーされているというところを怒っているのだ。この作品はフィリピンとマレーシアの政府も禁止した。

 実写アクションの『Uncharted』もやらかしている。中共系工作員の浸潤は、アニメ製作現場だけではないことの証拠だ。こちらの配給は、ブルネイ、マレーシア、台湾、ベトナム、フィリピンで禁止となった。

 ※製作会社はすぐに当該箇所を削除するのだが、これら政府はそんな措置では許す気になれない。中共の宣伝に一方的に有利となったことは自明だし、そもそもそれを内部で見逃しているという闇が深すぎる。会社まるごと中国に乗っ取られていると疑われても仕方がない。

 中共は、『トップガン・マヴェリック』にも検閲圧力をかけ、トム・クルーズのフライト・ジャケットから、日本と台湾のフラッグパッチを消去させた。この行為は米国内から叩かれた。製作会社は、台湾国旗を復活させたが、その結果、中共本土では『トップガン・マヴェリック』は上映できなくなった。会社は、巨大市場と、中国人投資家からの資金調達の道を失った。

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 The Maritime Executive の2023-7-3記事「Mexican Navy Captures Large Semisub With 3.5 Tonnes of Cocaine」。
   メキシコ海軍が、中米の麻薬組織が建造し、密輸目的で北上させてきた「半没艇」を、太平洋の「バハカリフォルニア」沖で拿捕した。積荷は3.5トンのコカインだった。186個の袋に小分けされていた。

 まず哨戒機が、6月27日にこのセミサブを探知したという。

 艇内には5人がいた。全員逮捕された。

 密輸艇は全長が85フィート。空荷自重は10トン未満だと見られる。無補給で洋上を20日、行動できる。
 8ノットで巡航できる。
 3500浬の片道の旅ができる。だからコロムビアの河口からサンディエゴ沖にも直航できるポテンシャルがあるが、麻薬組織はそんなことはしない。はるか手前のどこかで、漁船や貨物船に瀬取りさせる。

 ※5人乗りで、北海道からベトナムまで行けるくらいの航続距離を誇る、10トンの有人艇。乾舷が無いので、水上レーダーではまず発見できない。その航続距離を短縮すれば、3.5トンの積荷を7トンにすることもできるだろう。こういうのを無人システム化して、南方有事に使えるようにするのに、いくらも予算は要らないはずだ。麻薬ギャングにできることが、国家にはできないとは、どういうことか?

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 Nicholas Cecil 記者による2023-7-4記事「Ukraine army has ‘fruitful’ few days destroying Russian fuel and command posts」。
    英国の国防省が解説。ロシアは戦術を変えた。従来のドクトリンの定量を大幅に超える高密度で大量の対戦車地雷をひたすら敷設することによってウクライナ軍の前進を止めようとしている。

 これに対するウクライナ軍の弱点はひきつづき「砲弾不足」である。また、前進する部隊への後方からの兵站補給が、輸送手段の不足のため、届いていない。

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 Nick Robertson 記者による2023-7-4記事「NATO extends Jens Stoltenberg’s term as secretary general」。
   NATO事務総長は、ストルテンベルグの続投が決まった。2024-10まで留まる。

 ※ポーランドの大反対でデンマーク首相の目は消えたのだろう。デンマークはCO2 削減の先頭ランナー。対するポーランドは欧州最大の石炭火力依存大国。馬が合わない。