そのバラストの下に対戦車地雷が埋まったままでも、特に不都合はない。敵はその堤道の上に対人地雷を撒布できるが、歩兵が歩かなければ特に問題はない。敵はその堤道に砲撃を加えることもできるが、おそらく砲弾が何億発あっても、軽便鉄道による埋め戻し作業は止められない。
軽便鉄道による反攻は、有効であろう。
しかも、終戦後は、そっくりそのまま、復興用の安全な輸送動脈として使用できるのである。
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Jan Tegler 記者による2023-7-17記事「Steered Light Could Replace Lasers for Military, Commercial Applications」。
レーザーは大電力を消費する。その「コヒレント」なレーザー光の変わりに、「コヒレントでない」ふつうの光線を利用するナノテクノロジーを、サンディア国立研究所が開発しつつあり。
たとえば、ありふれた裸電球やLEDが光源であっても、その光をもし自在に曲げ得るのなら、レーザーの代わりにできる。
非コヒレントな散乱光を自在に束ねたり曲げられるとしたら、リモートセンシングや、ホログラフィックなディスプレイ、高速通信にも、それを使えばいいことになる。
サンディアの二人組は、ナノスケールの発光半導体である「量子ドット」を、人工の「メタサーフェス」構造の中に仕込み、それを反射ミラーの上に置いた。
そして、サブミクロンの厚さしかない平面構造を、屈折/反射レンズとして機能させる。
その効率がとてつもなく良いのだ。
「1兆分の1」秒で、光が焦点を結ぶ方向を70度、変更できるという。
効率がよいということは、電源のエネルギーを節約できるということ。これは民生品でも軍用品でも革命になり得る。
応用としてまず念頭されているのが、ヘルメットのバイザーやサングラス兼用ゴーグルに地図などを映示する光学ガジェット。これが小さな電池だけで長時間、つけっぱなしにできるのならば、眼鏡のようなものがそのまま、ヘッドアップディスプレイとなるわけである。
さらに、低出力LEDを光源にして、ヒトの眼球の中にホログラフをつくりだしてやることもできるようになる。まさに現実と人工イメージの境界がなくされてしまう。
あと、LIDARのような、今はレーザーを光源につかっている周辺物体探知センサーを、もっと安価な電球の光源に代えられる。パッシヴの光源センサーも、安価なありふれたものとなる。そうなると、人間は暗夜でもコウモリ以上の周辺警戒ができることになる。軽いヘルメットをかぶっているだけで。
※たとえば羆駆除を依頼されたハンターが、このガジェットを仕込んだヘルメットをかぶって山の中に入り、羆から不意に逆襲を受けたとする。背後であってもハンターは何者かの接近をすぐに警報される。そしてハンターが両眼でその羆の顔面を見つめると、その照準点に向けて動物の視力を害する波長の光線が集中される……などといった商品も可能になるのだろう。光源のLEDは、あらかじめその有害波長のものを組み込んでおくわけだ。しかも電源は電池のみ。――まちがいなく、これまでに製作されてきたSF映画の未来風景は、どれも10年後には、的外れな、笑うべき古臭い予想として、観賞されることになるだろう。
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Andrew E. Kramer 記者による2023-7-16記事「Small, Hidden and Deadly: Mines Stymie Ukraine’s Counteroffensive」。
ウクライナ南部戦線を取材した。とにかく地雷で前進できない。
あるウクライナ兵は語った。「地雷は、一本の線状に、点々と埋められるものだと思っていた。しかしここでは、野原一面、ぜんぶ地雷だ」
友軍のために先行して地雷を除去してやる工兵は、深夜に仕事をする。真っ暗で、しかも敵の野砲弾がときどき降って来る中で、黙々と、前進通路を手探りで啓開する。肝が据わっていて、しかも頭が冷静でなくては、とうてい、務まる仕事ではない。
彼の道具は、金属探知器と、先端に探針をとりつけた細長い棒。これで慎重に斜めに地面を刺すことにより、信管を反応させずに地雷の有無を確認できる。
ポケットの中にはギリシャ正教のイコンをお守りに入れてある。
すこし後方の野戦繃帯所には、対人地雷で負傷した兵隊がひっきりなしに担ぎこまれてくる。
トリップ・ワイヤーを発見したら、それを外してやれ、と思って、うかつに近づいてはならぬ。そういう馬鹿者をひっかけるために、その少し手前に、別な対人地雷が埋められているのだ。
いまのところ、露軍のトリップ・ワイヤーは、黄色い糸だ。長いものは12mも張られている。
対人地雷の中には、ポップアップ式も混ざっている。信管が踏まれると、直後に地面から跳ね上がって、人の顔面の高さで爆発する。小部隊なら、この一発で全員、負傷させられてしまう。
歩兵用の前進路は、横幅が2フィート必要だ。ある程度すすんだら、工兵は戻りがてらに、さらに1フィート、啓開幅を拡張する。こうすることで、担架兵がすれちがえるようになる。
宇軍が地雷原を啓開すると、そこに露軍はロケットで「木の葉地雷」を巻く。緑色のプラスチック翼がついたアレだ。この地雷のプラスチック破片は、最新のレントゲンには写るから戦時国際法の違反とまでは言えないが、メディックの金属探知機ではわからないので、厄介である。
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Defense Expressの2023-7-17記事「FPV Drone vs. Switchblade: Is It the Same Thing and What’s the Difference」。
安価なFPV特攻ドローンがあるのに、なぜ高額な「スイッチブレード300」に価値があるか?
これは素人兵を訓練する手間と関係がある。自爆ドローンを、狙った的に命中させるのは、とんでもなく難しいのである。
その訓練コースは2~3週間なのだが、まともに卒業できるのは6~7割。
ちなみに、偵察用クォッドコプターを飛ばす訓練コースは、9割がちゃんと卒業できる。その9割のなかの3割は、しかし、FPV操縦員には、なれないのだ。適性がなくて。
スイッチブレード300は、高額なだけあって、よくできている。上昇や下降の操作はマシンが自分で考えてやってくれる。人が操作する必要がない。横風が吹いていたなら、その横風補正も、機械がじぶんでやってくれる。
操作員がすることといったら、モニターを覗いて、攻撃する標的を指定するだけ。あとは機械任せでいいのだ。
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Povilas M. 記者による2023-6-27記事「Hyundai Rotem Showed K3, The Main Battle Tank of The Future」。
ヒュンダイ・ロテム社は、新戦車「K3」のコンセプトを発表した。
まだペーパープランの段階。
主砲は130ミリ。ちなみにラインメタルが次に開発する「KF51 パンター」も130ミリ砲。
砲塔内は無人。乗員は3名。
総重量55トン。これはK2と変えない。
エンジンはディーゼル。航続距離は500km。
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Simon Mansfield 記者による2023-7-14記事「China’s methane-fueled rocket achieves global first with successful orbital insertion」。
水曜日、LandPpaceという北京のベンチャー企業が、液体メタンを燃料とする、人工衛星投入用の宇宙ロケットを、酒泉から発射して成功させた。「ZQ 2」という。これは打ち上げロケットのコストを下げるだけでなく、環境も、従来よりは汚染しない。
「ZQ 2」は、長さ49.5m、胴径3.35m。だいたい「長征」と同じだから、かなりデカい。後発の私企業がそれをやってのけた。
219トンの物体が上昇するのである。発射推力は268トン。
太陽同期軌道に、4トンの衛星を投入し得る。その高度は500km。
LEOならば6トンの衛星を投入し得る。その高度は200km。
メタン・エンジンの長所は、そのブースターを何度でも再使用できること。長期的には、これはたいへんな強みになる。
昨年12月に「ZQ2」を初めて打ち上げたときは、宇宙境界とされるカルマン線は超えたものの、二段目に不具合が起きて、衛星の軌道投入には失敗した。
この会社のロケット工場は、浙江省の湖州市にある。アジア最大の宇宙ロケット工場だそうだ。それを私企業がやっている。
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Alexey Lenkov 記者による2023-7-17記事「Lancet mutates to Izdelie 53, it’s made in a mall, production tripled」。
ロシアは「ランセット」の改良と増産に大童である。
次のモデルは、スウォーム運用できるようにする。1人のオペレーターで同時に多数機を繰り出すようにする。
国営テレビの「ロシヤ1」チャンネルは、とんでもない映像を放送した。地下のショッピングモールの一画が、この新型ランセットの組立工場となっているのだ。これではそのモールをミサイル空爆されても文句は言えないことになる。ロシアは自国の一般市民を「人間の盾」にして、兵器工場を守らせるつもりなのだ。